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第十二話 目力

「藤井。つまみ好きなものを頼めよ。ただし、お前のお勧めのつまみをチョイスしてくれ。オレもまだまだ食い足りないからな」


「今日の生馬さんはよく飲むし、よく食べますね。明日体壊さないで下さいよ」


藤井はつまみを三品程頼んだ。


「今日は生馬さんと営業同行させて頂いて本当に勉強になりました。新商品を二件も受注するなんてさすがですよね。なんだかお客さんも気さくに生馬さんとお話していたし、さすが人間関係ができ上がっているなあと思いました」


「藤井。今日の受注だが決め手はどこにあったか分かるか?」


「え?人間関係がきちんとできているからじゃないですか。生馬さんからなら買ってもいいなと思わせたんじゃないですか」


オレは日本酒を喉に流し込んでから答えた。


「それも正解には近いが実はもっと別の決め手があったんだ。人間関係の構築は決め手の半分にしかならないよ。いいか、人間はものを決めるとき答えを口にする七秒ほど前に脳内で答えを出しているんだ。だからオレは買ってくれといった直後に相手の目を見て、もう一度買ってくれと心の中で唱えるんだ。そうすれば脳内で買うと判断して、それがそのままお客の口から出てくる訳さ」


「本当ですか?というよりそういう技を使って生馬さんは営業しているんですか?」


「そうだよ。人間の体と脳の仕組みを知っていれば営業なんて楽なものさ。地道に相手のご機嫌をとるよりよっぽど効果的さ。今度お前もやってみな」


当然これは半分本当で半分嘘である。七秒前の人間の意識を悪魔はコントールできるが、人間にはそんなことはできやしない。ただ、相手の目を見て買ってくれと言えばお客の頭の中も買ってやろうという意識になるかもしれないという話しだ。


藤井の頼んだつまみが運ばれてきた。レバーと韮の炒め物というものを少し食したがこれは非常に美味い。藤井に気兼ねすることなくオレは箸を動かした。


「ちょっと生馬さん食べすぎですよ。僕のつまみなんですからね」


「気にするな。同じものをもうひとつ頼んでやる。だからこれはオレによこせ」


オレは店員に同じものをもう1品頼んだ。

冷ややっこを食いながら藤井はこう聞いてきた。


「生馬さんて人間関係中心の営業じゃないんですか?てっきり僕はそう思っていました。さっきの人間の脳の話ですけど本当に生馬さんいつも実践しているんですか。それが生馬さんが営業成績トップの理由だと言えるんですか?」


「人間関係は大事さ。特に相手に仕事以外のことを気持ちよく喋らせることは大事だ。そうすれば、オレが視線で買ってくれと訴えたときにたくさん話を聞いてもらったんだから買ってやるか、という気も大きくなる。そういう話をしてくれる人間にはいつも目で訴えかけているよ。人間関係と目で訴えること。これがオレの得意技で受注の成功の秘密だ」

藤井はにわかには信じられないという表情でオレを見つめていた。


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