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「……ここ、どこ……?」

季節は6月の半ば。

梅雨入りしたばかりの空はどんよりとした曇り空で、細かな雨がぱらついている。


仕事を終えた私は、帰り道に料理研究用の食材たちを両手に抱えていた。

趣味で各国の民族料理を研究していて、休日ごとにあちこちの市場や専門店を巡っている。


今日は珍しいスパイスを仕入れた帰りだった。

ふとSNSをチェックしていると、一部の料理人たちの間で密かに話題になっている料理道具専門店が近くにあることを知った。


(せっかくだし寄り道してみようかな)


そう思い立ち、スマホのナビに従いながら歩き出す。

駅前の喧騒から外れ、少し細い路地へと誘われる。


だが、曲がり角をひとつ越えたところで、ふと視界の端にある“なんてことのない細道”が目に入った。

少し古びた石畳の道。雑草が生い茂り、周囲から少し隔絶されたような雰囲気がある。


「……妙に気になるな……」


ナビもあるし、少しくらい遠回りしても大丈夫だろう。

そんな軽い気持ちで、その細道へと足を踏み入れた。


しばらく歩いていると、道端に古びたコインがぽつんと落ちているのが目に留まった。

デザインは見慣れないもの。ふとした好奇心でそれを拾い上げた瞬間――



視界が一瞬で真っ白に染まった。


「……えっ――」


耳鳴りが響き、立っていられなくなる。

咄嗟に目を瞑り、膝をついたかと思えば――すぐに感覚が戻り、薄っすらと目を開けた。


そこは、見知らぬ場所だった。


石造りの門柱と木製の柵が並ぶ小さな村の入り口のような場所。

空は晴れ渡り、じめじめした日本の空気とは違う爽やかな風が頬をなでていく。


「……ここ、どこ……?」


手元には落とすことなくしっかり抱えていた、食材の詰まった袋だけが残っていた――。


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