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4.声
鼻歌交じりで小説を書いていると、突如千恵ちゃんに肩を叩かれた。
「……あのさ、前から思っていたけど、鶴って可愛い声してるよね」
「ふえっ!? な、何さ、急に!?」
おだてても何も出ないよと予め言っておく。
「そんなんじゃないよ。ただ鶴の声を聞いてると、なんか興奮する」
千恵ちゃんの顔がわたしの顔に近づく。
「……ねぇ、もっと聞かせて?」
耳元にふっと息を吹きかけられる。
「ちょっ、ちょっと……!」
「――駄目」
そうして、わたしは今日も千恵ちゃんに弄ばれるのだった。
歳上とはいったい。
あとで千恵ちゃんに聞いた話に寄ると、わたしの声はアヒルみたいな声らしかった。