3.歳の差
「そう言えば、あたしたちってさ」
どこか遠くを見ながら、千恵ちゃんは言った。
「十六歳差じゃん?」
「そうだね。わたしが二七歳で千恵ちゃんが十一歳だもんね」
小説を書きながら、上の空状態で、適当に応える。
「……間違いなく犯罪じゃん」
千恵ちゃんが身震いしながら、『怖っっ!!』と言った。
わたしはそれに反応し、ノートパソコンをそっと閉じる。
「……一応言っておくけど、わたしたちってそもそも付き合ってないからね。千恵ちゃんが勝手にわたしの家にいるだけで」
『えー、冷たいこと言わないでよー』と、千恵ちゃんはぺろっと舌を出した。
「わたし大人だから、千恵ちゃんとはあくまで節度を持って付き合いたいと思ってるよ」
「恋人として?」
「……友達として」
わたしは真面目な面持ちできっぱりと言った。
「そんなこと言って良いんだ?」
「な、何よ?」
「……もう小説見てあげないから」
「そ、それは困る! 客観的な意見が欲しいし!」
手を合わせながら、わたしはその場で土下座する。
「しょうがないなぁ。じゃあ、今日も読んでやるとするか」
そもそも千恵ちゃんってわたしに弟子入りしたんじゃなかったっけ?
「公衆便女先生。ほら、早くあんたの恥ずかしいところを見せてよ」
……今日も今日とて、わたしは千恵ちゃんに弄ばれている。