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128.月の光が射すように(8) ―あれから―

 ――あれから、わたしたちは遠距離恋愛となった。


 時間の合間を縫っては、その日あったいろいろなことをLIME(ライム)で報告し合っている。


 傍から見たら、どうでもいいような取るに足りないくだらないことまで報告し合うわたしたちの関係は、〝あの頃〟とまるで変わらない。


 それこそ、わたしにはまだちぃがハイツ千寿にいるかのような錯覚を抱いてしまう。


 しかし、それはわたしのただの思い込みで、やっぱりちぃは傍にいなくて……。


 正直に言うと、ちぃがそばにいないことはとても辛くて、寂しくて悲しい……。


 でも、わたしは独りじゃない。


 ちぃがお守りとしてくれた『アヒルマ』がそばにいるから、本当の意味での孤独は感じていない。


 わたしのことは常に『アヒルマ』が見守ってくれている。


 〝誓約〟を交わしたあの日、わたしはこう言った。


『……ちぃには、いつだってどんなときだって逢いたいと思ってる。でも、これからちぃが引っ越したら、それを折り目にして、大人になるまではもう逢わないでおこうと思うんだ』


 わたしはさらに続ける。


『ちぃ、わたしね……、今のままの自分じゃダメだって気付いたの……。あなたと出逢ってから、あなたは常に努力して変わり続けてきたのに、それに引き換え、わたしはただあなたに甘えてばかりで、何もしてこなかった……。だから――』


 一拍置いてから、わたしはその言葉を口にする。


『わ、わたしもっ! 自分を少しでも変えたいっ! あなたに心から甘えてもらえるように、あなたに心から頼ってもらえるように、そしてあなたに心から愛してもらえるように……わたしは、あなたにとっての〝本当の恋人〟になりたいんだっ!』


 そして、最後にわたしはこう言った。


『こ、これからわたしはっ! あなたが心から誇れるような〝素敵な女性〟になるっ! だから、そのときはっ! いっ、今よりもっと、もっともっとっ! わたしのことを……! ス、ススススキになって欲しいのです……!』


 あの日の決意が、わたしの脳裏にはっきりと蘇る。


(ふふふっ。あの時のちぃの驚いた顔、本当に面白かったなぁ。でも、わたしは心の底から――)


 〝特別なあなたの、特別なわたしになりたいんだ〟

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