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１１６．大好きだよ

「――ねぇ、ちぃ。ふたりでどこかに行っちゃおうか。誰も手の届かない、わたしたちだけの優しい場所へ。そこには、わたしたちを知る人なんて誰もいなくて、完全にふたりだけの世界なんだ」

「……るりるり？」

「……わたし、分かってるよ。ちぃに何かあったんだよね。ちぃと離れ離れになるくらいなら、わたし……何もかも全部なげうつ覚悟だよ」

　しんとした、緊張感漂う空気が流れる。

　わたしたちの間に長い沈黙が訪れ、やがてちぃが重々しく口を開く。

「るりるりは……」

「？」

「本当にそれでいいの……？」

「……いいよ。わたしにとって、ちぃが全てなんだ。ちぃさえいれば、わたしはもう――」

　一呼吸置いて、その思いをちぃに伝える。

「ちぃがいれば、わたしはもう〝他に何もいらない〟」

　わたしが絞り出すように言ったその言葉に、ちぃは目を丸くした。

「同じだ……」

「？」

「あたしも、あんたがいればもう、〝他に何もいらない〟」

　手を重ね合わせ、見つめ合うわたしたち。

　そして、どちらからともなく――。

　わたしの閉じた眼《まなこ》から、一筋の涙が頬を伝う。

　止まらない。あふれ出る感情が止まらない。

　わたしはそのまま、ちぃを強く抱き締めた。

「あなたのためなら、わたしは……たとえ地獄にだって落ちてもいい！」

「るりるり……」

「一緒に行こう。全てを捨てて、そして、全てを手に入れるために。大丈夫、きっと何とかなるよ。だって、わたしたちは完全無敵のソウルメイトなんだからっ！」

「……少し考えさせて」

「答えはなるべく急いで欲しい」

「分かってる」

　わたしたちは再び手を取り合い、じっと見つめ合いながら誓いの言葉をささやきあった。

　〝大好きだよ〟