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第5話 塔を目指す

 ヴィオラは旅の準備を進めるため、大量の荷物をカバンに詰め込み、重そうにそれを背負っていた。


「歩けば1週間はかかるわ。これも持って行かないと……」


 その様子をノアディルが見守っていると、リアが


「ヴィオラ、カバンごとデバシーに入れてあげるよ」


 と提案し、そのままカバンをデバシーに収納した。

 ヴィオラは目を丸くして、


「本当に無くなったりしない!? 大丈夫なの!」


 と心配そうに尋ねるが、リアは「大丈夫!」と自信満々に返事をした。

 それを見ていたノアディルが、


「リアはその工具セット、デバシーに入れないのか?」


 と質問すると、


「え、だって無くなったら困るし……」


 と答えた。

 それを聞いたヴィオラは再び心配そうな表情になっていたが、

 リアはすぐに


「冗談だよ! ボクは工具は持ち歩きたいんだ。触れていると落ち着くんだ」


 とスパナのような工具を頬擦りしていた。

 ノアディルとヴィオラはそれを見て苦笑いをしていた。


 そうして3人は身軽な状態で山を目指し始めた。


・・・


「魔物と普通の動物って、どう違うんだ?」

「違いは簡単よ。魔物は魔素から生まれた存在だから、すぐに分かるの。魔素を纏ってるしね」


 ノアディルの質問にヴィオラはそう答えた。


「俺にはその魔素って奴が全然見えないし感じられないな……」

「普通は皆、魔素を感じる力があるのよ。大小はあるけど、ノアディルみたいに何も感じないって人は見た事がないわ」


 ノアディルはその答えに頷くしか出来なかった。


「そういえば、ヴィオラは一人であの家に住んでたの?」


 リアがそう質問すると、ヴィオラは少し暗い表情になりつつも質問に答えた


「実はね、ここへ来る前の記憶がないの。最初の記憶は、小屋のベッドで目覚めたところからなのよ」

「え、記憶がないの?」


 リアは驚いた表情で問いかけると、ヴィオラは頷きながら話を続けた。


「ええ、魔法の本が大量にあったから、それを読んで魔法を学びながら生活してきたの。もう5年以上になるわね」

「記憶がないなんて想像もできないよ……そうだ、大賢者って人が記憶を取り戻してくれるかも!」


 リアがそう提案すると、


「ええそうね。私もそう思って大賢者様に会いたいと思っていたのよ!」


 と元気な声で言った。


 3人は山を目指して歩き続けていた。森は続くが、木と木の間は広く、険しい道ではない。

 しかし、変わらない景色に少し疲れが見え始める。しばらく歩いた後、リアが


「もう疲れたよ!」


 と座り込んでしまった。

 ノアディルはリアの疲れた様子を見て、


「半日歩きっぱなしなんて、普段はあまりないもんな」


 と笑いながら言った。

 ヴィオラはその場で地図を広げ、


「でも、想定よりも進んでないわ。もう少し歩かないと1週間じゃ山の頂上には着かないかも」


 と説明した。


「うー……」


 リアは不満げに唸ったが、突然「そうだ!」と何かを思いついたように顔を輝かせた。


「3人乗りのバイクを組もうよ!3時間あれば完成するから!」

「バイク?」


  ヴィオラはと問いかけるがノアディルがすぐに、


「それはいいな! なら今日はここで留まろう」


 と提案した。


「ところで、T-0用のバレットマガジンは持ってたりしないよな……?」


 続けてノアディルがそう言うと、


「ないよ! あるのは部品と修理キット1式と大型バッテリーだけ!」


 と即答した。

 

「充電モジュールもあるんだけど、ナノマシンの数が足りないんだ……」

「そうか。自己増殖も時間が掛かるし、射撃は当分お預けだな……」


 ノアディルの義眼や他の機械化した部分は内蔵しているナノマシンで十分に稼働する。

 通常のナノマシンもゆっくりと自己増殖する為、無くなってしまう事も無い。


 だが、バッテリーやT-0の弾をチャージするには大量のナノマシンが必要である。

 機械化した自分の補助と比べ、圧倒的に消費量が多いのだ。


 ナノマシンを気軽に補充できないこの世界では浪費は出来ない。


 リアはデバシーから引き出したタブレットを操作し、空中にいくつもの画面を表示させた。

 彼女はすでに設計図通りに組まれた大型の部品を次々と取り出し、それらを順番に組み上げていく。

 ヴィオラはその光景を物珍しそうにずっと見守っていた。


 ノアディルも久しぶりにリアが組み上げる様子を見て、


「相変わらずの腕前だな」


 と微笑みながら褒めた。


「えへへ……」


 リアは照れくさそうに笑っていた。

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