第24話 魔物退治
ノアディルとヴィオラはカモフラージュを展開し、静かにナイトメアスカルの方へと近づいていく。
橋の魔物たちは城側への攻撃に集中しており、背後の警戒は甘かった。
ノアディルは点在している魔物を次々とカモフラージュ内に引きずり込み、迅速に仕留めていく。
「死体を放置すれば、いずれ気づかれる……」
ノアディルが懸念を口にすると、ヴィオラはすぐさま「浄化の光」を使った。
魔物の死体は魔素の粒子となり、空気中へと消えていく。
この魔法のおかげで、二人は痕跡を一切残さずに行動を続けることができた。
徐々に魔物の数を減らし、二人はナイトメアスカルの前方50メートルまで接近した。
しかし、その瞬間――
「匂うゾ……匂うぞワレには!!」
突如、ナイトメアスカルがこちらを向き、不気味な笑みを浮かべた。
「……バレるはずがない。そんな馬鹿な!」
アディルは驚愕しつつも、ある仮説に思い当たった。
(ヴィオラはカモフラージュ中、俺たちを探知できなかった。だが、魔力を有した存在が中に入ると外から感知される可能性がある……? その実験をしていなかったのは痛いな)
ナイトメアスカルは杖を振りかざし、冷笑を浮かべた。
「そこから感じるゾ……」
すると、半径50メートルのドーム状の黒い空間が展開され、ノアディルたちは閉じ込められた。
「ゆくゾ……“シェイドカオス”!」
空間内の乱気流が地面や大気を歪ませ、抉るように襲いかかる。
「ヴィオラ! 俺にくっつけ! 二人のシールドギアで耐える!」
ノアディルはヴィオラを抱き寄せ、二重のシールドを展開して暴風に耐えた。
しかし、圧倒的な魔法の前にナノマシンの消費は加速し、ヴィオラのシールドは先に底をつき、ノアディルのシールドも急速に減少していく。
「ぐっ……! 頼む、もってくれ……!」
T-0が警告を告げる。
「シールドエネルギー残量2%。チャージしますか?」
「いや、今はいい。シールドのナノマシンを回している場合じゃない!」
やがてカモフラージュ機能がエネルギー不足により解除され、ナイトメアスカルの目の前に二人の姿が露わになった。
「おどろいた……今の魔法で無傷トハ……」
ナイトメアスカルの驚きの声をよそに、T-0が新たな指示を出す。
「前方の敵は非常に危険。3段階解放を推奨します」
「……分かっている」
ノアディルは低く答えると、力を込めた。
そして3段階目まで解放し、背中から現れた灼熱の剣を腕に装着した。
その姿を目にしたナイトメアスカルの目が一瞬揺れた。
(魔力を感じない……だが、この圧……! かつて見た勇者に匹敵する……!)
その考えが浮かぶ間もなく、ノアディルはすでに飛び出していた。
一閃――
灼熱の刃が平行に振り抜かれると、前方一帯が炎の海に変わり、ナイトメアスカルの姿はその中に飲み込まれた。
ノアディルはすぐに解放段階を1に戻し、デバシーでリアたちに通信を送る。
「ボスは倒した。後はスカルサーペントだけだ! 一気に叩こう!」
「了解!」
リアとルミナの返事が即座に返ってきた。
リアたちが走り寄る中、ヴィオラは炎の海を見つめながら、息をのんだ。
「……すごい力……最上級魔法より遥かに強い……」
その後、残されたスカルサーペントたちは烏合の衆と化し、一行に瞬く間に討ち取られた。
この場にいた魔物の群れは、すべて壊滅したのだった。
・・・
ナイトメアスカルを倒し、周辺の魔物の脅威を取り除いたノアディル一行は、駆け寄ってきた兵士長に呼び止められた。
「冒険者様! 本当に助かりました。あなた方は国を救ったのです。どうぞ中へお入りください」
そう言われ、一行は城門をくぐり魔法士の国へと入った。
しかし、その先に広がる光景は、凄惨なものだった。
崩壊した建物、避難する市民、負傷者で溢れる街並み――。
一行は息を呑んでその惨状を見渡した。
兵士長が苦々しい表情で語る。
「スカルサーペントの一部が上空から侵入してしまい、このような被害をもたらしました。すべてを撃ち落とすことはできませんでした。そして、二度も魔王の姿をした魔物が現れるとは……!」
「二度?」
ノアディルが疑問を口にすると、兵士長は頷いた。
「はい。同規模の進攻が一度ありました。その際には、勇者様が偶然この地におられ、全てを退けてくださいました」
「勇者がここに……! 今は何処に?」
「おられたのは数日前のことです。既にご自身の国へと帰還されたと思います」
ヴィオラが感嘆の息を漏らす。
「同規模の魔物の軍勢をたった一人で……やはり勇者様は規格外ね」
リアは少し得意げにノアディルを見て言う。
「でも、ノアディルだってほとんど一人で倒したよ! 勇者といい勝負だよ!」
ノアディルは苦笑いしながら答えた。
「いや……張り合うようなことじゃないだろう」
兵士長は改めて頭を下げる。
「ぜひこのまま、王にお会いいただけないでしょうか?」
一行はその提案を快諾し、王の待つ城へと向かうことになった。




