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第11話 ナノマシン研究所にて

――同時刻 サイバーシティ ナノマシン研究所


 この研究所には巨大なシリンダー型のポッドが整然と並び、空中には無数のレポートのような情報がホログラムとして浮かんでいた。

 だが、そのポッドのうち、稼働しているのはたった一つ。

 中には、培養液に浸った少女の姿があった。シリンダーの前で、二人の研究員が立ち話している。


「マスター、結局[NOA]に適合したのは2名だけでしたね……」


 研究員の一人が報告すると、マスターは微かに微笑みながら頷いた。


「上出来だよ。2%も生き残ったんだ。自己増殖機能が失われたのは残念だったがね」

「ですが、それも無理やりとは言え解決済みです。どちらにしても、実用的なのは2名まででしたね」

「そうだな……だが、"ノアディル"が見つかれば、その問題も解決できるだろう」


 マスターは目の前のシリンダーに手を伸ばし、少女の顔をじっと見つめた。


「アリス……早く目を覚ますんだ」


 その時、別の研究員が慌ててマスターの元へ駆け寄った。


「マスター! 大変です、ルミナの信号が消えました……!」

「何だと!?」

「ノアディルを捜索中に、一瞬で信号が消えました……」


 マスターは驚きの表情を浮かべ、一瞬言葉を失った。


「馬鹿な……そんなことが……! すぐに信号が消えた場所を探せ!」

「はい!」


 研究員はすぐさま走り去り、マスターは深い考え込むようにマップ上の消失地点を見つめた。

 ルミナが消えた場所――それはノアディルの痕跡がある場所の一つだった。


「……どうしますか、マスター」

「他の痕跡を調べている連中も全員ここに集めろ」


 マスターが指し示したのは、リアとノアディルが吸い込まれたブラックホールが出現した場所だった。

 その場所に、何か重要な手掛かりがあることは間違いなかった。


「くそ……ストレス数値が上がるとナノマシンが不安定になるから自由にさせとったが……!」


 マスターの顔には、決意と焦りが混じった複雑な表情が浮かんでいた。


・・・

・・


 場所は草原――広大な緑が風に揺れ、どこまでも続く静寂の中、ぽつんと一人の少女が立っていた。

 銀色の髪はミディアムショートで、風にそよぐたびに光を反射し、透き通るような青い瞳はどこか儚げで無邪気な印象を与える。

 しかし、彼女の右腕は他の肌色と少し異なっており、機械が埋め込まれていた。


「……あれ?」


 少女は首をかしげ、周囲を見渡しながら小さな声で呟いた。


「なんか変な場所に来ちゃった!」


 鼻をひくひくと動かし、草原の風を感じながら匂いを嗅ぐ。

 その動作はまるで獣のようだが、彼女の顔には無邪気な笑顔が浮かんでいた。


「でも匂う……今までで一番! お兄ちゃんが近くにいる!」


 少女は嬉しそうに目を輝かせると、右腕に軽く触れ、照れるように頬を紅潮させた。


「えへへ、お兄ちゃん、もっとくれるかな……?」


 そう言うと、彼女は一瞬の躊躇もなく草原の向こうへと駆け出した。

 軽やかに風を切るその姿には、何か不思議な力が宿っているかのように感じられた。


 そして、彼女の瞳はただひたすらに、遠くにいる「お兄ちゃん」を追い求めていた。

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