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高校に入って突如冷たくなった幼馴染が痴漢されていたので助けた結果、次の日から幼馴染の様子がおかしくなった  作者: テル


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第二十一話 元の日常

 朝、駅のホームにて夏紀は一人電車を待つ。

 

 通勤、通学ラッシュで夏紀の乗る時間の電車は人が多い。

 友達と話している学生、一人座ってコーヒーを飲んでいる社会人、そしてスマホを見ながら一人電車を待つ自分。

 

 近頃、人が多くなっていると感じる気のせいだろうか。

 いつもよりも騒がしく思える。


 もしかしたら静音と一緒に登校していないからそう思ってしまうのかもしれない。

 今まで静音と話していたので寂しく感じてしまっているのだろうか。


 静音と距離を取ると決めた訳だが、自分から距離を取ることなく自然と距離が離れてしまった。

 自分が成長するためにこれ以上ない状況だがそれでも静音と話したい。


 静音のことを考えるだけで胸の鼓動が少し速くなってしまう。


 そんなことを考えていると夏紀の後ろを学生二人が通る。

 チラリと見ると制服を着た男女が話しながら手を繋いで歩いていた。


「カップル......か」


 別れた直後、元カノに浮気された、そればかり夏紀は考えていた。

 しかし今なら自分にも非があったのではないかと思える。

 

 結局のところ自分だけ満足していて、相手のことを考えられていなかったかもしれない。

 そう思うとやはり恋愛は苦手だ。

 けれど好きなものは好きだ。


 (やっぱり......俺は静音が好きなんだな)


「夏紀、おはよっ!」

「いてっ......」


 考え事の最中、突如夏紀の背中に衝撃が走る。

 そして夏紀の視界にニコニコとした顔の静音が映った。

 

 静音のことを考えていたこともあり、その笑顔にドキッとしてしまう。


「静音か、おはよう......ていうか朝からバッグを俺の背中にぶつけるんじゃない」

「あはは、ごめんごめん」

「今日は......早いんだな」

「うん、課題も終わって早く寝れたし。今日は一緒に行こ」


 一緒に登校しなくなったのは登校の時間が噛み合わなくなったからだ。

 静音が課題の影響で徹夜して寝坊して以降、別々で登校することになった。

 

 忙しいなら自分の時間で過ごした方が快適だ。


「......なんかこうして二人で喋るの久しぶりじゃない?」

「そうだな、そんな感じがする」

「だよね......えっと、ちなみに聞くけど私、夏紀に何かしちゃった?」

「ん? いや、何もしてないけど」

「なら、いいんだけど......その......何か避けられてるのかなあって思って」


 静音にそう言われて夏紀は少し言葉に詰まる。

 たしかに夏紀の行動は避けていると思われる行動だ。

 

 実際に静音のことを避けている訳だが、別に嫌いだから避けているのではない。

 

 (......当たり前の反応だよな)


「理由もないし避ける訳ない。でも誘い乗れてなかったからそれは申し訳ない」

「ううん、大丈夫......私が何かしちゃったのかなって思ってたけど、なら良かった」


 静音はそう言って表情を緩める。


 今の自分なら静音と遊ぶことくらいはしてもいいだろうか。

 夏紀は少しだけ迷ったが静音の顔を見て迷いが決心に変わった。


「来週あたり空いてる?」

「うん、空いてるよ」

「じゃあ二人で遊びに行かないか?」

「わかった、来週予定ないし、あっても空けとくね」


 静音はあっさりと了承する。

 誘うことに少し緊張していたがそんな必要もなかった。

 

 もし告白して振られてもこんな関係でいられるのだろうか。

 夏紀にはそんな不安がある。


「......夏紀? そ、そんなに見られると恥ずかしいんだけど」

「あ、悪い、断られるだろうなって思ってたから」

「断る訳ないじゃん。もう十数年の仲だし」

「それもそうだな」

 

 けれど静音の笑顔を見るとそんな不安も消えてしまった。

 

 気まずくなるかどうかは夏紀の対応次第でもある。

 なら、いつも通り接すればいい。

 告白して自分の気持ちが相手に伝わっただけ。


「どこで遊びたいとかあるの?」

「決まってない、ただ単に遊べたらなって思って誘っただけだ」

「うーん、じゃあ久しぶりに夏紀の家に行っていい?」

「俺の家? 別にいいけど......やることないぞ」

「ないことはないでしょ。というより私が久しぶりに夏紀の部屋見たい」

「なるほど、わかった」


 それから学校に着くまでの間、夏紀と静音は他愛もない会話をした。

 

 今日の授業、最近の話、悩み。

 たまに訪れる無言の空間も気まずいとは思わず、居心地の良いものだった。


「じゃあまたな」

「うん、ばいばい」


 長いようで短い時間が終わり、夏紀は自身の教室に入った。

 教室に入れば恵都含む友人が声をかけてくる。


 (何か俺、変わったな......)


 そう思えるほどに夏紀は無意識の笑顔が増えていた。

 

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