密室カラオケはご用心
「最初一人1曲は歌ってねー♡じゃ私から」
先人を切ってあゆみさんが、日本のポップシンガーの曲を歌う。
盛り上がる曲ではないけど、声量があって兎に角上手くて驚いた。
「採点無しにしよーよー」
ミラクルさんが曲を予約しながら不満げに呟きながら、その隣に座るコッペパンさんは一瞬で曲を入れた。
「檸檬くんは何入れるの?」
「んー…。ねこまんま、これわかるんだっけ」
「懐かしー!大体把握してるよ」
そう言うと檸檬くんは、昔のロックバンドのアニメ主題歌になった曲をセットした。
ちなみに今は暁さんの、ボヘーな声が聞こえている。有名な幼児アニメの主題歌を歌っているものの、絶妙に全て音が外れているからすごい。
「だから〜♪ 歌うの嫌なんだ〜♪ 音痴だからぁあぁ〜酒持ってこーーい♪」
最後は変な替え歌にして終わった。
「絶対もう歌わない、俺あと飲んでるだけでいいや」
「えー暁の歌面白いのにぃ♡あー、笑った笑った」
あゆみさんは暁さんの腕を胸の間に挟むように、ペットリくっついている。
おやー? ここもリアルカップル?
棗さんが私の隣にやってきた。
「ねこまんま、檸檬、俺らだけあぶれてるよ。この雰囲気はやばいって」
ミラクルさん、コッペパンさんのレゲエ系の曲が続く中、何か雰囲気ぶち壊しの曲を入れろと言われ棗さんに譲ると、アゲアゲ夜はこれからみたいな歌詞の選曲が成された。
「これ雰囲気壊れます?盛り上がっちゃうんじゃない?」
「いけ、ねこまんま!これ歌え!」
「うーわー絶っ対イヤ!」
聞いたこともないマッチョソングを棗さんに……いや、こんなやつは棗で充分。
棗に入れられそうになり回避し、無難に猫の歌を入れた。
「桜ちゃんかわいいの歌うねぇ。あ、私桜の曲にしよーっと」
「俺は最初これ一択」
わちゃわちゃしている間に歌う檸檬さんは、聴き込んでると言っていただけはあり上手かった。
密室に確定カップル2組、カップルかわからないイチャイチャ組1組、怪しげな雰囲気を回避してカラオケは盛り上がりをみせた。
棗は意外にも盛り上げ役に徹して、しっとり怪しい雰囲気を徹底的に回避している。
「棗さん、盛り上がる曲のレパートリー多いですね」
「まぁね〜〜でもこのせいか、いつも道化師役で誰も俺にオチてくんないのよ」
ハンカチを目に当てわざとらしく泣いたふりをするが、白ける。
「いやいや、セフレ3人もいて幼馴染に迫られてる人が言う台詞じゃないですよ」
「え、棗さんのソレ嘘じゃなかったんですか」
ドリンクを運んできた店員さんが気まづそうに私と檸檬くんの間に飲み物をおいて部屋を出た。
「え?ヤってる写真あるけど見ちゃう?」
「げ。なんであるんですか捕まりますよ。見ません」
棗はスマホをスライドしはじめ、ドン引きした様子の檸檬くんは左へ、私は右へみんなのドリンクを回し終えると、変な緊張をした身体にカフェオレをごくごく流し込んだ。
「あれー?これカフェオレだ。誰かあたしのカルアミルク飲んだでしょー」
喉が、胃袋が熱いーー。そして異様に甘い。
「ハイ……ごめん間違って飲んじゃった」
「ねこまんまちゃーん♡いい飲みっぷり! これはカラオケ朝までやっちゃう?終電で帰っても、車運転できないね♡」
「いやこの年でオールはきついって」
と棗。
「明日仕事なんだよね。休日出勤」
とコッペパンさん。
「あたし大地のとこ泊まるから、大地と一緒に上がらなきゃ」
とミラクルさん。
「私もぉ、明日出なきゃだから今日は朝寝なきゃぁハヤトもねっ」
とりなちゃん。
「いいよいいよ。代行とかで帰るし、最悪車おいてる近くにビジネスホテルあるから!」
「棗と暁来るけど、家泊まってくー?ねこまんまちゃん♡」
あゆみさんが妖艶に微笑みながら顎にそっと手を添える。
「いやいやいや、あゆみさんや暁さんはいいとして、棗と同じ建物とかもう絶対無理です!ってかあゆみさん棗なんて泊めちゃ危ないですよ」
「うわ、ひどいっねこまんま! しかも仮にも年上をーーついに呼び捨てたな!」
散々棗にゲストークを聞かされてきた。無理もない。
「俺方向一緒なんで途中まで一緒に電車で帰りますよ」
「あー、檸檬くんが一緒なら安心だね♡何しろダンナだし♡」




