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飲み屋で修羅場はお静かに

「え、私行きませんよ」

 ケロッと答える。こういう人にははっきり言った方がいい。

「そんなこと言わずにさーー。それに俺、ねこまんまちゃんみたいなピュアそうな子本気でタイプなんだけどー。連絡先交換しようよ」

「ハヤトさん、ギルド内でそういうのやめませんか? りなちゃんが嫌がることしたくないんでーー」

「えーー、じゃギルド抜けるから一回遊ぼうよ。りなとは別に付き合ってないし。いーじゃん」

 テーブルに身を乗り出してグイグイくるハヤトさんにどう対処していいかとっても困ってしまった。

「ーーっにしてんのっ」

「ーーりなっ」


「桜ちゃんにまで、手出そうとするなんて信っじらんないっ」

「いやーー、今のはーー」

「言っとくけど外まで聞こえてたからね!桜ちゃん、ハッキリ言ったし迷惑そうにしてんじゃん? それにりなと付き合ってないって……何? それならりなの部屋から荷物まとめて今すぐ出てってよ!!!!!!」


 個室の扉を開けて立ちはだかるりなさんは、そう一気に言うとわっと泣き出し、その場にしゃがみ込んだ。

「りなちゃーー」

「りなもハヤトも飲みすぎー! ほらりな、こっちおいで。棗、りなお願い」


 あゆみさんはりなを自分が座っていた場所に座らせると、個室の外に出て店員さんに謝りながら、何か話して戻ってきた。

「ハヤト、りな、ちょっとあっちの席で話しておいで。二人でよく話した方がいいよ。ヒートアップして煩くしたり、お店の人に迷惑かけちゃ、ダメだよ」


 二人は無言で立ち上がると、靴を履いて、近くのテーブル席へ移動した。察するに……ホストなハヤトさんは紐?


「いきなりの修羅場、ねこまんまちゃんびっくりしたでしょー。ここの店長と知り合いで、ちょっと席用意してもらったんだー」

「りなちゃん、大丈夫かなぁ……」

「あの二人の問題だからねー。ねこまんまちゃんがハヤトにハッキリ言ってくれて良かったよ。この前は結ちゃんが、ハヤトを上手くあしらえなくて。りなが結ちゃんに対してすっごい怒っちゃってほっぺた張り飛ばしちゃったんだよね」

「ひえ……そうだったんですか……」

「ってやばい、ミラクルが戻ってきてない。私ちょっとトイレ見てくるね!」

「え?やばい感じですか?私も行きます」

「あーー、ねこまんまちゃんはここにいて!多分吐いてるんだけど、流石にまだ見られたくないと思うから!気つかってくれたのにごめんねぇ!大地、来いっ」


 そう言ってあゆみさんとコッペパンーーもとい、大地さん?はトイレの方へ歩いていった。

 一気に人が減って、静まり返る。


「なんだ、あれだ、今回のオフ会は、いつにも増して激しいやなー」

 ハハっと乾いた笑いを上げる棗さん。

「今回が特別すごいんですね。いつもこんな感じだったのかと思っちゃいました」

 そんなわけない、と棗さんも暁さんも身振り手振り表現する。


「棗さんは、結ちゃんには会ったことあるんですかーー?」

「うん、前回初めましてしたよー。黒髪ストレートの、おとなしそうな子だった」

 流石にJKに手は出さん、と一人で頷いている。


「ねこまんまちゃん、結ちゃんと仲良かったんだっけ」

 こんな騒動を傍観していた副ギルドマスターの暁は、だるそうに話しかけてくる。

「はい……時々電話とかしますよ」

「そっかぁ、この前の件以来、話しづらいのか俺ら話しかけても結ちゃん反応なくてさ。学校でのことも聞いてたから、ちょっと心配なんだよねぇ。ちょっと気にしてあげてね」




 しばらくするとあゆみさんとミラクルさんが戻ってきて2次会のカラオケに行くことになった。

りなちゃんとハヤトさんも一先ず落ち着いたようで、腕を組んで空いている。


 檸檬くんと自然と、並んで歩く。

「西口にもカラオケあったんだ」

「うん……ねこまんまはさ、会ってみたら直結厨みたいなやつばっかで疲れなかった? 今日」

「んーーハハ。りなちゃんは元々、ほとんど狩り行かずにリアルでの話メインでしたからね。ハヤトさんは意外だったかなー。ゲームでは狩の効率とか、ボス沸きの時間とかしか話したことなかったんで」

「それ絶対、ねこまんまを男だと思ってたからでしょ」

「えーー、筋肉ムキムキ女子キャラ面白可愛いのにー。みんなわかってないなぁ」

 背の高い檸檬くんは、千鳥足で歩く前方組に合わせているのか私に合わせているのか、そのリーチよりもゆっくり歩いた。

「まぁでも、ギルドのオフ会ってもっと、ボス戦のこととか、レアドロップの攻略とか、狩りの立ち回りとか話したりするのとか思ってたかも」

「ーーそう思うよね」

「直結厨とかよくわかんないけど、顔の見えなかったみんなの顔が見えて、ワイワイ騒いで、これはこれで楽しいんじゃないかな」


 檸檬くんの口元がフッと笑った。

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