表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/42

【回想】檸檬くんとの出会い出会い

 ゲーム内での檸檬くんとの出会いは、ギルド加入だった。

 ミミミさんからギルドメンバーに紹介があり、それでも中々馴染めず一人で狩りをしていると、ログインした檸檬くんに、ギルドチャットで狩りに誘われた。

 そんなことが何度か続く内に、狩の間に、アイテム分配の合間に、無駄話もするようになった。


「普段何してる人?」


 あまりにログインが不定期のため聞けば、檸檬くんは研究室を中心に生活が回っている大学院生だった。


「インできるのも不定期だし、中々ギルド加入とか、ペアリングとか利用できなくて。一人で狩りしてたら、火力が欲しいから入らないかってミミミさんに勧誘されたんだ。参加できる時だけ、ボス狩りとか来てくれればいいって話でさ。

 ねこまんまは、前は違うギルド入ってたんだっけ? どうしてここきたの?」

 狩場でゾンビを殴りながら、チャットを打つ。


「前に所属していたギルドで、ギルドマスターのペアリング相手だったんだ。

 住んでいるところも凄く遠くて、連絡先はゲームの中で交換したけど現実で会ったことは無くて、良い息抜き相手だった。

 魔法使いのゴールドさんと、前衛であり回復もする私のキャラクターは狩りの相性がよくて、夜インする時はなるべく時間を合わせてたりもしたんだぁ。

 最初は良かった。

 狩りしてない時でも溜まり場にしている洞窟前でギルドメンバー達とチャットしたり、日常の愚痴を言ったり。

 でも段々、現実の方でのゴールドさんの連絡が激しくなってきて、顔写真を送りつけられたり、こっちも送るように要求されたり、会いに来るようにしつこく言われたり住所聞かれたりするようになって……

 それで、ペアリングを解除して、ギルドも抜けたんだ」


 気付けば、敵を大量に倒しドロップアイテムは散乱、チャットも打ちまくって長文になっていた。


「そっか……大変だったんだね」

「うん……その頃、現実でも恋人に振られてさ。あっちが浮気したのに、こっちまで浮気疑われるしで落ち込んでたから、息抜きのはずのゲームでもそんなことあって、なんか流石に疲れたって言うか……」

「うわ……その“ゴールド”さんのことは知らないけど、そんな女の相手しないで良かったんじゃない? 元カノもさ、下手に結婚とかする前に浮気するやつだってわかってまだ良かったよ。もちろん、ねこまんまは傷ついたと思うけど……」

「檸檬くん……」


 一瞬感動しかける。まだ良かった。本当にそうだ。結婚してから不倫されたら、カップルの別れる別れないよりも体力を使うって聞いたことがある。

 っていうか、檸檬くんの脳内で私が男に変換されてないか……?


「檸檬くん、いい感じのこと言ってるけど“ねこまんま”は女だって! ゴールドさんが男!」

「あぁ、そうだったな。ほんと設定徹底してるよな。ねこまんまってば」


 また勝手に、脳内で男変換されている。


「檸檬くんは、今付き合ってる人とかどうなの?私だけ話聞いてもらって、なんか恥ずかしいって言うかさ」


「んーー、今は付き合ってる人とかいないかな。研究が忙しくてさ。告白されてOKしても、連絡取らない内に振られてたり、相手のことよく知らないまま別れちゃうんだよね」


 告白はされるのか。中々すみにおけないねーっと、ゲーム画面を見ながら思う。

 ゲームの中ではキャラクターを好きにカスタマイズできるから、正直リアルでの姿は想像もつかない。


 その後も、時々チャットをするようになった。


「なんか、ゲームの中だからだろうけど、ねこまんまって話しやすいな。現実で会ったら、友達になれそう」

「私も、そう思ってた。その時は連絡先でも交換しようね!」


 前のギルドでのことがトラウマで、このギルドではギルドマスターの女の子としか連絡先を交換していなかった。良識のある人で、余計な連絡はしてこないし、勝手に人に教えたりもしない。

 4月、世の学生は春休みの時に一度、オフ会参加者を募っていた。

 私は仕事で忙しく、参加を見送った。

 そして7月……


「ねこまんまちゃん! またオフ会やるから、今度こそどうかな?? 」


 ミミミさんに声をかけられた。

 場所は都内の飲み屋。

 土曜夕方。

 男女とも来る。


「無理にとは言わないんだけど、ただ現実でも楽しく遊べたらなーって! 真白ちゃんと、棗も来るよ」

「げ。棗まで? 逆に行きたくなくなったんですけど」

「まま、そうわずにさーー。あ、檸檬くん、7月の土曜にオフ会やるんだけど、参加でいいかな」

「うん。いいよ」


 檸檬くんも来るんだ……。

 嘘かほんとか、ゲスな話ばっかりしてくる棗は苦手だったけど狩の相性だけは良い。

 そして檸檬くんや真白ちゃんは、仲良くなれそうだし正直会ってみたい気持ちもある。


「あれ、ねこまんまも来るの?」

「……うん。予定ないし、行こうかな……」


 こうして、オフ会への参加が決まった。

 時々遊びに行く場所だったから乗り換えはバッチリだが、その駅周辺にはに詳しくない。


「飲み屋まで迷いそう」


「じゃあさ改札出たところで待つよ俺。なんかお互い、目印つけてこう」


「あらあらー。じゃあ、ねこまんまちゃんのお迎えは檸檬くんに任せちゃうね」


 ミミミさんはニマニマした顔をキャラクターに表示しながら、他のメンバーにオフ会の誘いに行った。


「檸檬色ってことで黄色いリストバンドとかどうかな?」

「あ、いいね」

「今ホームページ見てたらさ、100円ショップで買えるみたい。ショッキングイエローなんだけど検索できる?」

「今見てる。あった」

「じゃあ、これにしよう。私わかりやすいように?猫のイヤリングとかしていくね!」

「うーん、俺他目印になるようなものあったかな……。あ。シルバーのロングネックレス。あと多分黒縁眼鏡かけていきます」

「わかった! 当日はよろしくね!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ