ジュリアの懺悔13
自ら零級魔法少女となり一連の騒動を解決したことで、人間の世界における風妖精コッコクェドゥースイナクシャータリアの任務は達成されました。
彼女――と言うよりは彼女の支援者ですが――の望みであるお家再興が約束され、リアは妖精の世界に帰ることになりました。再興されたコッコクェドゥースイナクシャータ家の当主となり、顔も知らない許婚に嫁ぐために。
寂しそうに別れを告げるリアに、荻野柾は躊躇いがちに言葉をかけました。
「えっと…色々あったけど…あなたがいてくれたから、あなたが隣にいてくれたから、その…会えて、良かったです。あなたに会えて、本当に良かった」
「うん」
「俺はもう、大丈夫です。一人でちゃんと生きていけます」
「うん。うん…約束じゃぞ」
「約束です」
泣き出しそうな顔でリアが差し出した小指に、柾の小指が絡みました。
「…約束じゃ」
「はい」
「わらわのことを、ずっと覚えていてほしい」
「はい」
「本当は寂しいと言ってほしい」
「…寂しい、です」
「一緒にいたいと言ってほしい」
「それは…」
口ごもる柾に「わかっておる」と呟き、リアが潤んだ瞳に決意の色を映しました。
「約束してくれとは言えぬ。3年じゃ。3年だけ、待っていておくれ。きっと…きっと帰ってくるから!」
その瞬間、リアの姿は人間の世界から消えてなくなりました。柾はしばらく小指を見詰めてから、私たちに別れを告げ、立ち去りました。
荻野真咲たちも平行世界に帰っていき、平行世界間の「道」は完全に閉ざされ、私たちには魔法少女としての日常が戻ってきました。
――それから3年。あの震災により、日本人の無意識にあった「ヒーローの存在を信じる心」が薄れ、妖精たちの力は弱まり、魔法少女というシステムは終焉を迎えます。妖精の少女たちは故郷に帰って行きました。
私の親友ネネコもその一人です。彼女との思い出は全て夢だったのではないか。そんなことを不意に考えてしまい、突き詰めると最初からなかったことのように記憶が薄れていると感じます。
忘れてしまいたくないから、書き残すのです。
忘れてしまったとしても、思い出せるように。
あの「物語」の「語り手」は、私と荻野柾の二人。私だけでは、その全てを書き残すことはできません。
――荻野柾と妖精リアの顛末は、彼の胸の内にだけ秘めておくべきエピローグなのでしょう。
不完全な形ですが、こういう話になる予定でしたという特級呪物。




