ジュリアの懺悔10
「馬鹿が、どこまで侵食されている」
「天使」を祓い、荻野真咲が吐き捨てるように呟きました。自分と瓜二つの姿の荻野柾を目の当たりにして。
「ふざけるなよ…私さえいなければ世界は平和だったんだろ…なんでわざわざ…私になろうとするんだ…!」
「姉さん…なのか、あんたが」
「姉さんじゃない。私は産まれてきちゃいけなかった、存在しちゃいけなかった人間なんだ。私が産まれたからたくさんの人が死んだよ? 私もいっぱい殺した…知りたくなかったよ、そんな真実…あんたは、あんたはそんな呪いとは無縁だろ! あんたは、あんた自身でいろよ! せいぜい幸せな人生を謳歌してろよ、馬鹿!」
「あんたも、そんなことを言う…!」
瞬間、柾は真咲に襲いかかり、泣き叫びました。
今更! 今更! 今更! 出てきて、みんなが、僕を、偽物だって! なんなんだよ、なんなんだよ! じゃあ、あんたが最初からいてくれよ! 最初っから! なんなんだよ! もう! あんたが本物なら僕はなんなんだよ! なんなんだ! なんで産まれてきてしまったの、教えてよ、姉さん、姉さん、助けてくれよ、どうしたらいい、どうしたら許される、どうしたら生きていていいって、誰が、許してくれるの、誰が僕を許してくれるの…?
動揺した真咲の隙をつき、柾は姿を消しました。妖精リアを、その場に残したままに。真咲たちとともに柾を追うこともできず呆然と立ち尽くす私に、リアがぽつりと呟きました。
「わらわが、マサキを追い詰めた」
私は何も言えませんでした。涙が止まらなくて、何も言えませんでした。
「あれは優しいから、いつも傷ついていたよ。わらわはそうと知りながら、あれの優しさに甘えてしまった」
妖精ネネコが無言でリアを抱きしめました。泣きじゃくりながら、リアが言葉を絞り出します。
「出会わなければ、良かったのか? わらわと過ごした日々は、お前を苦しめただけだったのか? マサキ…マサキ…マサキ…どうして産まれてきてしまったのかなんて…そんな悲しいことを言わせるために…わらわは出会っ――」
「そんなわけないでしょ!」
ネネコの怒鳴り声にびくりと身を震わせ、一拍してから、リアはネネコの胸の中で啜り泣きました。
私は、何も言えませんでした。




