ジュリアの懺悔1
特級呪物を成仏させる儀式。
――私の結婚を機に、両親が古い写真を整理してくれました。少女だったあの頃の私が胸に抱く黒い猫。彼女と過ごしたかけがえのない思い出を忘れかけていたことに気づき、居ても立っても居られず、キーを打っています。
かつて、私は魔法少女と呼ばれていました。
小学6年生の私に、人語を話す猫が声をかけました。彼女は「妖精」という存在でした。昔からこの国にある八百万の神という概念に、文明開化によりヨーロッパからもたらされた霊性が結びつき産まれた、比較的新しい概念だといいます。そして、彼女たちと契約して不可思議な力を行使する巫女を「魔法少女」と呼ぶのです。
彼女――ネネコは私の初めての友達でした。私とネネコの契約は、あの震災により妖精たちの力が著しく減退し、ネネコが故郷に帰るまでの数年間、続きました。
妖精の少女と魔法少女の使命は、人に害を及ぼす「魔物」と呼ばれる存在を、人知れず妖精の世界に祓うことでした。
魔物は妖精と同じ経緯で産まれた存在であり、その違いは荒魂と和魂のどちらをルーツに持つかによります。彼らは人間たちの「不思議な存在への信心」によりその存在を保っており、魔物が広く人間に認知され、肉体を持つ生命として実在するものと「認識」されると、妖精ともどもその霊性を失ってしまうのです。
妖精の少女たちが私たちと契約を結び魔物を祓うのは、彼女たちの世界を存続させるためでした。彼女たちが人の世であげた功績は、その故郷にいる雇い主の権勢拡大に直結していたため、より多くの魔物を祓うことを、妖精同士で競争することになります。
政争の道具である妖精の少女たちと、その相棒となった魔法少女たちの競争意欲を煽るため、魔法少女には階級が付与されていました。私たちは妖精の貴族たち「魔法少女協会」が運営する特殊なSNS「妖精ネット」で交流することが可能だったので、階級が高ければ高いほど、日本中の同業者に自慢できたわけです。ただそれだけと言えばそれだけのことなのにね。
私は、その最高位にあたる一級魔法少女でした。
当時は史上初とされた初任三級デビューから順当に魔物を祓い、中学1年生になる頃には一級まで昇級しました。それが同じ魔法少女たちの嫉妬の対象になり、時に悪意を向けられるものと知らず。
だから私は、彼に助けを求めてしまったのです。
――私の身代わりになってほしいと。




