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シン・二級魔法少女☆荻ノ花真咲12

挿絵(By みてみん)

「ネネコはジュリアが同族の中で孤立するのを危惧しておるでな、“この姿”でいることを極端に避ける」

 火妖精ネーネコニャ曰く。妖精は互いの魔力を感知し合う生き物にて候。然れども霊性が限りなく無に近似する形態即ち人間においてはその限りでなし。隠密行動においては人間の姿であるべしとの由にて候。

「なまじネネコが人の姿をしているばかりに、それ以外の友人を作らぬようではジュリアに毒じゃからのう」

「ああ、わかるわかる。俺もあんな美人と同棲してたらいつまで紳士でいられるかわからないスもん」

「……待てい。何ぞや引っ掛かる物言いをせなんだか」

 博多駅、午後六時――。(COKKO.9 博多風トン骨ラーメンにチャレンジしましょう!)ネーネコニャの助言を受け人間の姿でいることにしたこけしを連れ、フクオカよ、私は帰って来た。

 明日、六月一日。花火大会の舞台だったり、まことがさなえちゃんに迫って嫌われたり、僕の母校の持久走大会の会場になってたりする大濠公園に、最強の魔法少女・神谷ヒカルがOooh、きっと来る、きっと来る~。

「しかし、大濠公園か……」

 バス停も地下鉄の駅もあるし、余所者が“待ち合わせ”するには悪くないチョイスではある。少なくとも天神や博多のド真ん中よりは百倍マシだろう。何だよ、ひょっとして地元の子なのかい?

 なーんて事を考えていると、声が、したのです。それは混沌たるニャラルトホテプの愛すこの闇夜に響き渡る鈴の音「ナイチン、ゲール……」というソルダーノの最期の言ノ葉(中略)Zガンダムにね。女の……声!?

「そこな御仁。今、オーホリコーエンと申されましたな」

「へ?」

 ……一つだけ言っておきます。セーラー服着た美少女が侍言葉で喋るのを許されるのはフィクションの世界だけ! 落ち着け、落ち着け俺。なあ、マルコーさんよ。なんでこれは実話なのにこういうのがいるんだ?

 年の頃は十代の半ばといったところか。さらさらな長いストレートの黒髪の下で濃い睫毛と二重瞼に彩られたパッチリお目めさんが上目遣いに僕を見上げていたのだった。

「待たれよ、拙者は決して怪しい者ではござらぬ」

「そのござる口調だけで十二分に怪しいわ、たわけが!」

「全くナのデス。おカシな喋り方デ萌えあぴーるトは実にヤらしい女でアリマス」

「……君達はどうしてそこまで自分の事を棚に上げられるの?」

 貴様はまた小便臭い小娘にうつつを抜かしおってなどとキーキー喚くこけしをあやしていると、サムライガールが長い棒でかつんと地面のアスファルトを叩いた。僕達が一様に口をつぐむと、少女が軽く咳払いをする。

「拙者、八神ひなのと申します。恥ずかしながら道に迷い、難儀しておりまする」

 2番バスに乗ればどのみち原に向かう途中で大濠公園にも止まるわけだし、まあ、ついでに「このバスに乗ればいいよ」「ここで降りてね」と声を掛けるくらいしてやってもいいかな、なんて。

「殿! 親切な御仁が、現地まで同行して下さるとのことにござるぞ!」

 って、ちょっと待ーてぇよ! 殿って! たけし軍団はおろか、下手したら前田軍団も知らない世代じゃないのかい君は。呆気に取られる僕達を背に、ひなのが同じくらいの年頃の少女に呼びかける。

 服装が同じなら髪型も同じ、ついでに美人なところも何故か竹刀ケースを持ち歩いているところも同じですよ。いや、仮にどっかの中学校の剣道部にしても「殿」と「ござる」はない。あり得ないから!

「やったねヒナちゃん、偉い! 都会は怖い所だと思ってたけど、捨てる神あれば拾う神ありだね!」

「ささ、殿。こちらが我らを案内して下さる御仁にござる」

「ありがとうございます! あ、ボク、八神あかりって言います。どうぞよろしくお願いしまーす!」

 リアルさを売りにした小説なりマンガなりアニメなりゲームなりで、やってはいけないと思う事。

●登場人物が厨二病みたいな名前で髪が普通に青とか緑とか紫とかピンクとか色とりどりな日本人はおろか人間にはあり得ないCentury Color Million Colorで平均年齢が異常に低かったり美男美女ばかりだったりすること

●語尾に特徴があったり「うきゅう」とか「はわわっ」とか人間として間違っている口癖があったりするなどして口調が明らかに真っ当な教育を受けた人物のそれではないこと

●アホ毛・ロリ巨乳・メイド・僕っ娘に代表される露骨な萌え要素

 ……事実は小説より奇なりとはよく言ったもんですね。「忠勝がやられただと!? あり得ねえ、あり得ねえー!」と雨の日は無能な大佐の真似して絶叫したくもなるさ。何だこの超展開、えらいことになってきたぞ。

 武力‥‥。胆勇ッ、高潔ッ、忠誠ッ、慈悲ッ、信義ッ、礼節ッ、崇高ッ。ろ‥‥‥騎士道ろうまんすか‥‥。ろう‥‥まんす‥‥? なんだそりゃ。南蛮武士の生き方らしい。ほぉ。

「特に女子おなごへの献身を最上の誉れとする精神だ」

「ほ~う? それで貴様はおなごと見れば誰にでもいい顔をするわけか」

「ひなのちゃんのことっスよ」

 喉が渇いたと言うこけしと二人、バス停でシオンと歓談する八神ーズをジュースの自販機の前からそっと見やる。あかりに対するひなのの甲斐甲斐しさは、まさに姫君に対する騎士のそれを思わせたのでありました。

「ふむ。どうにも貴様は変わったおなごに縁があるようじゃな」

「……本当っスね」

 カロリーZeroのコーラを口にして「けふっ」とゲップをするこけしを見下ろし「自覚はあるんですね」と続けようかと思った丁度その時に、バスが到着した。やっと布団で眠れるな、やれやれ。


秋田からやってきた現役女子高生 今後の展開はどうなる?


 ―――二人はどういう関係なのじゃ?

ひなの:拙者、異国の生まれにして天涯孤独の身にござった。して殿に拾われ、忠誠を誓ったのでござる。

あかり:……えっと。いや、うん、そういう感じです。ヒナちゃん、日本語を時代劇で覚えちゃって。

 ―――どうして福岡に?(家出したのかなと思いつつ)ふらっと訪ねる距離じゃないよね。

あかり:ネットで知り合った子がこの辺に住んでるんですよ。一度会ってみたいなって思って。

 ―――おいおい、出会い系サイトとやらではあるまいな? かっぺハいいカモなのデス。

あかり:違う違う。オンゲのスコアランキングに載ってる女の子だよ。数字的にはライバルになるのかなあ。

ひなの:ハハハ、されど実力から言えば殿の敵ではござらぬ。

 ―――そうなの? ほう、大した自信じゃな。

ひなの:フ、我が殿こそは最強の呼び声も高い不動の頂点に立つ武士もののふにございまする故。

あかり:ランキング上では、ですよ。プレイヤー同士で対戦するゲームじゃないですし。

 ―――へええ。何にせよ一番っていうのはすごいじゃない。

あかり:えへへ……。いや、わかんないですよ。下の二強がボクのいないエリアで潰し合ってるみたいだし。

ひなの:なればこそ一度立ち合うべしと、男鹿半島より 泳 い で 参 っ た !!!

 ―――マジで!? 自由すぎるわ! ねたデすよネ?

あかり:アハハハハハハ!(スベった気まずさからか乾いた笑い)えっと、ボクたち、電車に乗ってきました。

ひなの:……コホン。殿の申された通りにござる。

あかり:ヒナちゃんなりのジョークですよ、ジョーク!

 ―――ハハハ、だよねえ。(自分が福岡―大阪―東京間を飛び回っていただけに、素で信じかけた)

あかり:アハハハハハハ!(乾いた笑い続行中)

 ―――(インタビュアーの一人を指さして)ま、実物がこやつみたいなキモい男でなければよいがな。

あかり:アハハ、ひどいなあ。

ひなの:その時は拙者が殿をお守りいたしまする。

あかり:女の子じゃないってことはないと思うんだけどね。

 ―――(……誰も否定しなかった)ああ、次の駅だよ。大濠公園。

あかり:あ、どうも。お世話になりました!

ひなの:ありがとうございまする。この御恩は忘れませぬぞ。

 ―――いえいえ、もう真っ暗だし気をつけてね。


(2008年5月31日 バス内にて)


 London Bridge is falling down,Falling down,Falling down.London Bridge is falling down,My fair lady.Take a key and lock her up,Lock her up,Lock her up.Take a key and lock her up,My fair lady.

「また落ちた……」

「またかにょ……」

「何度もスみまセン……」

 姉さん、地球と我が家のエネルギー問題は深刻です。我が家に帰り着いてシオンの充電を試みてから数時間。ブレーカーが落ちたのはこれで三度目です。仏の顔も三度までとは言いますが。

「カラクリ娘ー! お前はウチにテレビも見せない気なにょかー!」

「仕方ないじゃないスか。うちは契約アンペア低めなんスから」

 黒い闇の中、物の怪がダンス。暗闇の奥で、物の怪のダンス。闇の中でヒステリックに暴れるこけし人形の説得を断念し、両腕を胸の前で交差させた。亡者はCRAZY、底なしの感じ。丑三つに変身。

「ヒーロークロスライン。宿命の世紀末マジカル少女真咲 修羅の戦い! ザンゲの時間だよ!!」

「……掛け声を毎回変えるのは結構なことじゃがな、最近ネタがひねり過ぎじゃぞ」

 荻野さん家のここだけの話。魔法少女に変身すれば、聞き分けのない脳味噌ゼロのオリエンタルドールも風妖精という本来の姿に戻り多少の理性を取り戻します。大事なことなので何度でも言いますよ。

「お。このガキんちょモードだとブレーカーに手が届かないんだ、新発見」

「御主人サマ、明カリを点けまショうカ? シオンの両眼にハ探照灯機能が搭載サれてイルのデス!」

「この状況を無限ループさせる気か? そちは余計な電力を消費せずに充電とやらを早々に済ませい」

 シオンとこけしの声を背に、風で身体をいくらか浮かせる。我ながら超凄い能力を超下らないことに使っているなあとか思ったり思わなかったりしてる間に落ちたブレーカーに手が届いた。ぺちっと上に上げ直す。

 和室の蛍光灯が数拍のタイムラグの後に光を取り戻し、風妖精様の大好物である蜂蜜さんなど我々の命綱が鎮座かします冷蔵庫が再起動して頼もしくも省エネを微塵にも実行する気のない排熱音を響かせた。

「……で、いつもの読書で時間を潰すパターンか。ふん、電化製品がことごとく使用不能じゃからのう」

「県庁の星は去年録画してDVDに焼いてますからそれで勘弁して下さいよ」

「別にそこまですることもないがな」

 正座したまま眠っている――再び充電モードに切り替わっているシオンをちらりと見やってから、こけしが軽く肩をすくめる。その透明な翅がぱたぱたと揺れた。


「ふむ」

 その小さな両手で精一杯広げていたマンガを読み終え、こけしが真顔で切り出す。

「このラストはないな。日本でLと競っていた頃の月ならかようなイージーミスはあり得ぬぞ」

「……世の中には仕方のないことが満ち溢れているんス」

 終盤はやたらとネームが増えて読み手も描き手も苦しくなってるとか、第一部で終わるはずが読者人気のせいで強引に続けた挙句に人気下落で「108話で終わらせましょう」って話題作りに走っちゃったりとか。

 (なーんてインターネッツでファンがあれこれ勝手なことを言ってるんじゃないですかという憶測であり、この文章に当該作品を批判する意思は介在しませんので名前を書き込まなqあwせdrftgyふじこ)

「夕方のあかりちゃんが学校でヤガミライトって呼ばれたりするのも仕方のないことっス」

「あやつの名付け親もこんなオチがつくとは想像もできなんだろうな」

「この御時世、神谷ヒカルも神谷ライトになっちゃいますね」

「そこはAKIRAじゃろう、神谷だけに」

「うわ、いそうだ」

 某キャプテンにちなみ翼って名前がつけられ始めたのが僕らの世代だったりするわけだけど、それより一つ上の世代にとって叫びの神谷はヒーローそのものですよねー。

「……あかりもヒカルもライトになるかのう」

「その冗談みたいな予想だけは避けたかったなあ」

 八神あかり。僕と同じく浮世離れした少女を連れていた彼女。下の二強の活動地域が重なり足を引っ張り合っているが故のトップスコアランカー。大濠公園でボクと握手!

 やばい。辻褄がいくらでも合う。今時マンガでもこんなに露骨で伏線と呼ぶのもおこがましいフラグは立てないだろうに。これで「お師匠、ドンピシャだ!」って展開だったらどんな御都合主義なんだい。

「……もう寝ましょうか」

「じゃな。ここであれこれ考えたところで詮無きことじゃ」

 明かりを消した。子供の身体には大きすぎる布団に潜りこむと、いつものようにこけしがその上に寝そべる。ふとジュリアとネーネコニャを思い出し、何となく昨日一日を振り返った。

 そう言えばシオンとの出会いやジュリアの暴走と天使野郎の件ですっかり忘れていたが、昼間のトンデモ女教師についてもジュリアに「あれ本当に先生なの?」くらいは聞いておくべきだったろうか。

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