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シン・一級魔法少女✭ユーリィ2

挿絵(By みてみん)

「……変身」

 交差させていた両腕を納めると、窓ガラスにぼんやり顔が映ってる。青い髪と赤い目。いかにもアニメみたいなふざけた配色の私。

 地毛のプラチナブロンドも無意味に目立ってイヤだけど、いくらなんでも青はない。ふざけてる。

「……この、髪と目の色だけ変える変装って意味ないよね」

「来生さんちの瞳ちゃんは金髪にするだけで恋人にも正体がバレないんですの。得てして魔法というのはそういうものなのですわん☆」

「よくわかんないけど」

「そもそも変装ではありませんの。ジュリアんが精霊に近づいた分だけ、その精神的本質が外見に色として顕われるということであって……」

「……ま、何でもいいけど」

 本来の姿――20cmほどの女の人の姿に戻ったネネコの髪は、火の妖精と言う通りに赤い。燃えるように。蝶のような翅も煌びやか。

 私の黒一色のゴスロリとは正反対。服の色までもが私の本質だとしたら、つまり……そういうことなんだろう。

「じゃ、行こうか」

「はいの!」

 窓を開け、こっそり部屋を抜け出す。月が出ていた。異世界からの侵略者というのが現れるのは、決まってこういう夜だった。


 今の私は、ちょっとした超人ではある。だから電信柱を飛び石に見立て、その上をほとんど跳ねる形で走っていくようなマネができる。

 いっそ空を飛べればいいのにとは思うけど。そういう便利な能力は風の魔法少女にしか使えないらしいから仕方ない。

「ネネコが風の妖精でしたら、ジュリアんがもっと活躍できますのに……」

「またその話?」

「でも悔しいのですわん! 史上稀に見る三級デビューの栄光が霞んでしまったことが!」

「私は別に……」

「ネネコが悔しいんですの。ジュリアんを、もっと誉めてあげてほしいのですわん」

 二級魔法少女マサキ。普通は魔法少女見習いから始め六級、五級とステップアップしていく制度において、史上初の二級スタートを切った天才。

 普通の魔法少女が近所でしか戦えないところを、風の力であちこちに飛び回り、異常なペースで戦果を上げていく謎のルーキー……だって。

 あまりに現実離れした戦績に、妖精たちの間では魔法少女協会が私たちに発破をかけるために設定した架空の人物という噂も広がっているらしい。

「パートナーさんも妖精ネットに顔を出したことがありませんし……」

「パソコン持ってないんじゃない? 私だって兄さんのだし」

 変な話だけど、妖精たちが交流するサイト(運営:魔法少女協会)がインターネット上にある。ファンタジーの象徴みたいな生き物の分際で。

 ……まあ、その辺のシステムの数々には、もう慣れた。色んな意味で。何かが台無しになっているとは思うけど。


 戦闘の基本は先制攻撃。それが、この半年で学んだ最も重要なこと。

 離れたところで精神を集中し、必殺の一撃で一気に終わらせる。卑怯だろうと、これが私のスタイル。

「燃えいずる篝火は、炎となりて」

 魔法という形のない曖昧な概念に、言葉の力で意味を与える。虚から有へ。有から球へ。赤い火の玉が右手に宿り、真っ赤に燃えあがった。

 それと同時に、敵が炎に照らされた私を感知。闇の中から光る瞳が私を見据える。殺気。迫ってくる足音。軽い緊張と興奮が入り混じり、心臓が高鳴る。

「破邪顕聖の矢とならん」

 球から円へ。円から線へ。線から点へ。魔力を右手の一点に凝縮させ、炎の矢となし、猛進する右目と左目の間に照準を定めた。

 左手をまっすぐ伸ばし、その手に握るステッキを弓に見立て、燃える右手で見えない弦を引く。

「……射抜け!」

 魔力を解き放った。右手から炎の矢が一直線に伸び、爬虫類とも哺乳類ともつかない、その眉間を貫く。

 物質界からの消滅を意味する閃光。それが、もう一つの影を照らした。

「もう一匹ですの! 距離10!」

「近っ」

 ネネコの警告。狙撃が間に合わない近距離。ステッキを右手に持ち替え、飛び退る。

 ぬめっとしたイノシシ。そんな感じの姿をした獣の突進をやり過ごし、魔力を右手に集中させつつ、距離を詰めた。

「……我が炎は破邪顕聖の剣」

 ステッキを媒体に炎の刃を形成しつつ跳躍。空中で上段に振りかぶったステッキが、巨大な炎の剣となる。

 斬馬刀。兄さんのマンガで読んだ、獣を切り裂くための剣。これを、一気に振り下ろした。

「一刀両断……! 斬っ!」


「やっぱりネネコは悔しいのですわん」

「まだ言ってる」

「だって~」

「別に私、今以上に張り切る気もないし」

「ふに~……」

 月明かりの下、電柱の上。守るべき価値のない人々が生きるこの世界。それでも、ネネコが喜んでくれるなら。

 この世界でたった一人の友達が、笑ってくれるなら。

「それに、私のことはネネコが見てくれてる」

 他人の評価なんてどうだっていい。私は、私のやりたいようにやるだけ。

「私は、それで十分だから」

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