シン・二級魔法少女☆荻ノ花真咲1
24歳、無職。ついでに彼女いない歴24年のキモオタ。そんな僕でも胸を張って生きていていいんだって、自分で自分に言い聞かせたかったがために、僕は取り返しのつかない選択をしてしまった気がするんだ――。
僕が仕事を辞めたことには、それなりの理由がいくつかあって、それらがジェットストリームアタックばりに絡み合ってのっぴきならない事情になったのだと言い訳をしておく。
僕は建材屋の営業マンだったのだが、あの元建築士の不祥事をきっかけに急ピッチで改正された法律は決して実務家の考えたものではなく、建築業界そのものを大不況に陥らせる代物であり……つまるところ、大工が予定通りに家を建てられなくなった。 手形商売の業界だから、そうなれば得意先の工務店は次々と倒産するわけで、僕の会社も痛手を被った。というか僕の取引相手も夜逃げして、会社にはばさっと減給された。先輩達も自分の数字を上げることで精一杯で、無理を通して仕事を確保しようとする。その皺寄せは下っ端の僕にも振りかかってくるわけで、軽トラックに山ほど建材を積み込んでは先輩達の得意先に配達をしつつ、新規の得意先を開拓せねばならないという状態になる。
「この業界ではもう食っていけないんじゃないだろうか……」という不安は誰もが抱えていたし、僕だって例外じゃない。先行きの見えない日々、会社に酷使される日々、朝5時出勤して夜23時退勤の時間給に換算すると悲しくなる給料と貯まる一方の疲労。逃げ出したい。辞職を本気で考え出した頃、入社して何度目かの交通事故を起こした。ついに営業職から外され本社事務職への異動を言い渡されたとき、僕は腹を切ると称して仕事を辞めた。ここで辞めなかったら、もう逃げ出すタイミングはないと思った。かいつまんで説明すると、僕が仕事を辞めた理由はこういうことになる。
最後の交通事故では僕の運転していた軽トラが修復不可能なところまで大破した。交差点で右から突っ込んできた大学生のワゴンに吹き飛ばされ、スローモーションで迫ってくる民家のブロック塀を見詰めながら、「ああ、ヤバイかな」と静かに思ったあの感覚は今でも覚えている。走馬灯、なんてのは見なかった。そんなものを見る前に、胸を強打したエアバッグが僕を現実に引き戻したから。
死ぬ時はあんなものか、という感覚が死への恐怖を和らげる分だけ、何が何でも生きようという気持ちは薄れる。首・腰・右足首の捻挫が完治してなお、次の職を探す気にもなれず、貯金を削り削りぼんやりと時間を浪費する生活が何ヶ月続いたことだろう。せめて怠惰な生活で増えた体重くらいはどうにかしようとダイエットを始める程度には気力が回復した頃、とうとう僕はあいつに出会ってしまったのだ。竹取り翁に対するなよ竹、不動明に対する飛鳥了、源しずかに対するドラえもんばりに僕を非日常に巻き込んでいるあいつに。




