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陰気なリア充おやじのチラ裏。  作者: おぎん
隙あらば自分語り。
20/607

昭和時代の破滅フラグしかない社長令嬢に誕生してしまった…

 母のきょうだいは、異父姉、同母弟、異母妹、異母弟のバリエーションに不必要に富みすぎた計4名である。


 この辺りの複雑な家庭事情は、確か私が18歳になる頃まで伏せられていた。それを打ち明けたのは、私がショックを受けない年頃になったからではなく、母が鬱病を発症して「死ぬ前に話しておかねば」という心境になっていたであろうこと、ちょうど大学受験に失敗した私が家にいる時間が増えたことが主だった理由だろう。


 母の実母はソウジの最初の妻で、結婚の際には前夫との間に儲けた娘を連れていた。ミスなんとかに選ばれたこともある歳上の美女という具合だったらしい。後にソウジとの間に一男一女が産まれ、はじめ母は異父姉と同母弟との3きょうだいでその幼少期を過ごした。離婚はかなり早い時期だったという。母と叔父は幼くして実母、異父姉と生き別れ、それから入れ替わりの激しい複数名の継母たちに育てられた。ついでに何度かヤクザ者に襲われたりもした。


 母の異父姉――私にとっての伯母は、子供の頃に一度会った記憶がある。密かに母を訪ねてきたらしく、父は仕事、弟は友達と遊んでいて、ぼっちの私だけが母と家にいた。ただ「親戚」としか紹介されなかったから、当時は本当に秘密だったのだ。二人の母――私の血の繋がった祖母には会わず仕舞いで、後年に大腸がんで亡くなったと聞いた。母が泣きながら口にした「お父さんのせいでお母さんの死に目に遭うこともできなかった」という恨み言が、この複雑な家庭の総括にあたるのかもしれない。


 ソウジの最後の妻――私と弟は彼女が母の実母と思って育った――は、母と一回りだけ歳上の女性で、母と一回り歳の離れた異母妹と異母弟を産んだ。歳が近過ぎる継母と、歳が離れ過ぎた異母きょうだいとの関係は、やはり色々と難しいらしい。血のつながりがないからこそ厳しく躾ける責任感だとか義務意識もあったろうし、社長令嬢という恵まれた境遇――と見えていたろう――に生まれ、前妻譲りの恵まれた容姿で異性からちやほやされる、歳の近い義娘への暗い感情もあったろう。義母から義娘への当たりはきつく、理不尽ないじめに近い行為もそれなりにあったようだ。実子と別け隔てなく愛情を注がれたとは、母は感じていない。


 こういう環境で育った母の夢は、アナウンサーになって――生き別れた実母と異父姉にブラウン管から声を届けたいと想ったのかもしれない――家から出ていくか、恋人と「普通の家庭」を築くかというものだったが、そのどちらも、実父ソウジの妨害により果たされなかった。


 ソウジは母をとある政治家の息子に嫁がせることにした。文字通りの政略結婚である。偶然なのか、そうではない非道を行なったのか今となっては知る由もないが、ちょうど母の当時の恋人の父親が事業に失敗しており、ソウジは金銭の支援と引き換えに、恋人に母との縁を切らせた。実家のためあっさりこれを受け容れた――と母は感じた――恋人に失望した母は、何もかもがどうでも良くなり、その夢を捨てた。


 いよいよ政略結婚が結実しようとした頃、突如、ソウジが変心した。嫁ぎ先を、共に会社を大きくしてきた右腕アキオの長男――私の父だ――に変更すると言う。母と父は旧知の仲ではあったが、互いに恋愛感情を抱く程の間柄でもなかったから、誰もが困惑したし、ソウジは真意を誰にも語らぬまま墓場まで持って行った。娘を手の届くところに置きたいと思ったのかもしれないし、政治家の妻として心労をかけることが不安になったのかもしれない、とは鬱病を経た母の言である。


 結果として、父と母は結婚した。まだまだ親同士が決めた結婚も一般的な時代である。父は、子供の頃から知るマドンナと添い遂げること自体は、割と満更でもなかったらしい。大学時代の友達以上恋人未満に終わった後輩への未練が全くなかったわけではないようだが。母はどうかな。この結婚自体の是非について、私に明言したことはない。その「息子には絶対に言ってはいけない」というのが全てを物語っているようなものではあるが。母に残された最後の夢は「普通の家庭」を築くことであったが、これも果たせなかったと彼女が感じているのならば、その理由は私にもある。


 せめて私は、私の子供たちに、自分が産まれてきたこと自体が親を苦しめたなどと思考させることが微塵にも起こらぬよう、努めなければならないと思う。切に思う。

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