ゆりかごブランコ
2007年5月30日16時00分、学校の近くの公園で3年生たちが遊んでいた。
「おい!お前危ないからやめろ!」
「わかった!分かった!アハハ!辞めるから止めて!」
カイトはゆりかごの下に潜り込んで寝そべっていたのだ。他の者はカイトの願いを聞き、ゆりかごをゆっくり止めていった。
「もっかい揺らして!俺めちゃめちゃ高くジャンプできるから!」
「OK!」
ダイチの身体能力の高さを皆知っていた。
「よっしゃいくで!」
そしてダイチは跳んだ。非常に長い滞空時間だった。その長さ体感3秒。ダイチは鳥になった気分だった。
「うっわ!すげえ!」他の者がダイチに感嘆の声を届ける。
「俺今めっちゃ飛んだよなぁ!」
「うん!」
「次エスポワール行こうぜ!」
「OK!」
エスポワールとは、近くのマンションである。10階まである高いマンションだ。そこで彼らは鬼ごっこをすることになった。鬼になったユウスケはいきなり10階まで上がった。ここに誰か隠れているという算段だ。
「助けて!」
カイトの声だ。ユウスケが声の聞こえる方に向かうと、カイトが廊下の手すりに手をかけた状態で外に身を放り出している。
「おいカイト!お前何してんねん!危ないから早よ上がってこい!」
「分かったよ。でも上がったら10秒待ってよ。」
「分かった。」
そして約束通り、ユウスケは10秒数えた。そのすきにカイトはエレベーターを使い下に逃げた。次のエレベーターを使いユウスケは一階まで下りた。
「俺はここやぞユウスケ!」
声のする方に顔を向けると、ダイチがガス管の建物の屋根に上っていた。
「お前そこどうやってのぼったんや!」
裏に回ると、足をかけるところがあった。ユウスケが屋根に上ると、ダイチはニヤニヤしながらユウスケを挑発した。ユウスケの手がダイチの背中に当たる寸前、ダイチはいきなりジャンプした。ユウスケは咄嗟のことに驚いた。この建物の高さは4m以上ある。しかもジャンプして飛び降りたら骨折してしまうほどの高さだ。しかしダイチが骨折することはなかった。ダイチは隣の集会所の屋根に飛び移ったのだ。
「お前運動神経良すぎるわ。無理やわそんなん。」
「降りられんくなった!」
別の方から声が聴こえた。ケンが広場に付属しているトイレの屋根に登っていた。登ったはいいものの、下りられなくなっていたのだ。運動神経の良い者なら、ただ腰を下ろした状態で飛び降りれば怪我一つしない程度の高さなのだが、ケンはあまり運動神経の良い方ではなかった。
「手だけぶら下がった状態にして、そっから飛び降りたらいけるぞ!」
「いや、それやったら後ろ向くことになっていつ足が地面に着くか分からんから、足へのダメージが大きくなる。」
ケンの顔が徐々に暗くなっていった。そこへ、上級生たちが遊びに来た。
「お前らどうしたん?」
「この子降りられへんようになってしまった。」
「OK。手袋持ってくるわ。」
上級生の一人はこのマンションに住んでいた。そして彼は、部屋から軍手を持ってきた。
「これはめな。そんで、足だけぶら下げた状態で座ったまま飛び降りて、前かがみに着地しなあ。それで着地した瞬間に手も着いたら足への振動を減らせるわ。」
ケンは言われた通りにやった。すると、不思議なくらいうまく降りることができた。そして、みんなで降りられたケンを祝った。