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英雄、目覚める-08-

俺がいささか呆れていると、デスナイトの体が大きく揺らぐ。


まさかこれで終わりか。

 

が……幸いなことに、デスナイトは再び体勢を立て直す。


俺は、その姿を見て安心する。


久しぶりに暗示がとけたのだ。


その元となったヤツがこんなにあっけなく倒れてしまっては俺が楽しめないではないか。


デスナイトは機械音とも生物の唸り声とも違う奇怪な音を発しながら、なにやら大剣に力をこめている。


デスナイトが何らかの技を出そうとしているようだ。


その発動の時間は十秒どころか軽く数十秒かかっており、あまりに遅い。


正直、避けるのも妨害するのも容易いが。


まあ……あえて食らってみた方が今後の参考になるか。


おおよそ装備品がなく、魔法の加護をうけない状態で、C級モンスターのスキルがどれほどの威力をもつものなのか……。


そのことを知っておくのは制約下にある今の俺にとって少しは今後の役に立ちそうだ。


俺は、あくびが出るほどに遅いその時間を利用して、自身にかけていた『クロニクルガード』を解除した。


「だめだ……あ、アレをうけてしまったら——」


と、数メートル先の瓦礫の影から声が聞こえる。


先ほどの部隊の人間か。


「間宮三尉! な、なにやってるんですか! あ、あいつは敵——」


「そんなこと言っている場合か! おいよく聞け! いくらお前でもアレは——」


こいつらまだ生きていたのか。


ち……となると、こいつらを守る必要があるのか。


いやまて……こいつらが言うように俺は敵であり、味方じゃない。


見捨てても問題ない——制約に反しない——だろう。


男たちを無視して、俺はデスナイトの方へと向き直る。


ちょうどデスナイトはエネルギーを溜めた大剣をふりかざしているところだった。


やれやれ……数十秒どころか一分はかかっているぞ。


こんな技を食らうやつがいるのか。


まあ……これだけの発動条件があるのだから、少しはその威力に期待できるか。


デスナイトの大剣が俺の眉間に触れ、爆音が響き、周囲に衝撃が走る。


周囲の瓦礫は吹っ飛び、粉塵が舞い散る。


俺は額を触りながら、周りを見る。


なるほど……低位……いや中位の爆裂魔法程度の威力はあるのか。


そして、俺へのダメージはやはり皆無……いや……。


額からわずかに血が出ていた。


ふむ……やはり加護がなく、無装備状態では中位程度の魔法でも完全相殺まではできないのか。


さて……知りたいことはわかった。


耳にはデスナイトの独特の咆哮がこだまする。


もう……こいつは用済みだ。


いい加減この耳障りな音を聞くのもうんざりだし、さっさと処分するか。


俺は再び拳に力を入れる。


が……そこで俺ははたと気付く。


まてよ……今なら魔法が使えるんじゃないのか。


先ほどのデスナイトの攻撃で邪魔な部隊の連中は全員あの世に行っただろう。


それなら、もう制約はない。


数百メートル後方には、人間たちがいるとはいえ、あの足手まといの女たちには『クロニクルガード』がかかっている。


思う存分……という訳にはいかないだろうが、よい効果測定にはなるな。


今の俺の魔法の威力がどれほどのものか。


威力を図るだけなら、単純な魔法——エクスプロージョン——がいいだろう。


俺は手に意識を集中させて、数メートル上方へ飛ぶ。


ついで、階下にいるデスナイトめがけて、両手に集約させたエネルギーを解き放つ。


瞬間、デスナイトは文字通り俺の視界から消滅した。


そして、デスナイトを中心として半径50メートル内の物質もまた消滅——。


……していない。


俺は、浮遊魔法を使って、そのまま宙に浮きながら、あたりをみまわす。


粉塵が舞い散り、その視界はほとんど失われている。


床はなくなり、十数メートルにわたって、地面は陥没している。


俺たちが先ほどいた地下の空間が下方に見えている。


俺はその状況を見て、失望してしまった。


俺がいた上方へのエネルギーは抑制していたから、破壊力が及ばないのは当然としても、下方に対してもこの程度とは。


どうやら、暗示は完全にとけたと思っていたが、やはりかなりの部分はまだ維持されているようだ。


これでは……まるで足りない。

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