表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

46/153

オッサン、しばし眠りにつく

 無論拘束されている状態とはいえ、ダメージはないのだから、動くことはできた。




 が……ここで俺が勢いよく、地べたをモゴモゴと蠢くことは、えらく彼らを刺激してしまいそうである。




 先ほどからの会話からして、それは明らかだ。




 しかし……彼らが俺が展開している防御魔法に一切言及していないのはいったい……。




 いや……いずれにせよ、せっかく事態は終息しかけているのだ。




 俺はここで微動だにせず、じっとしている方がよいのは間違いない。




 ……が、全く動かないでいるというのはどうにもこれはこれで……難しい。




「こ、こいつ……う、動いて!? ま、まるで効いていないってのか!?」




「ま、間宮三尉!!」




「お、落ち着け! わたしたちの任務は対象の確保だ! 排除ではない!」




「し、しかし……こ、こいつは!? じ、自分たちはいったい何を相手に!?」




「か、会長にはわたしから後で説明する。今は対象の確保、連行を優先しろ!」


 


 部隊のリーダーらしき人物……間宮三尉……の号令で、俺はすまきのような状態のまま、そのまま担がれて外へと連れ出される。


 


 ついで、しばらく移動した後で、乱暴に投げだされると、体全体が大きく動く。




 どうやら……俺は車に載せられたようである。


 


 周囲からは先ほどの男たちの気配がする。


 


 依然として警戒はしているようだが、殺意を向けられている訳ではない。


 


 やれやれ……とりあえず一件落着……という訳ではないが、戦闘は回避できたか……。




 それにしても、俺はこれからどこへ連れて行かれるのか……。




 いずれにせよこの男たちの会話からも、俺は即殺害されるという訳ではないのだろう。




 と……なれば仮眠を取っておいた方がよいかもな……。




 先は長くなりそうだから、頭をスッキリさせておきたい。




 寝ている最中にズドンと一発……というのもありえなくはないが……。




 いくら平和ボケしている今の俺でも……さすがに殺意を向けられて、眠りこけているほど間抜けではない。




 それに今なら守るべき仲間はいない。




 もしも、奴らが再び敵対してきたならば、今度こそ殲滅して……。




 そして、油断しているであろうこの連中の本拠地にまで行き、そこで首謀者のあの女を——。




 いや……違う……俺は何を……。


 


 クソ……思考が昔に戻ってきてやがる……。




 仮眠を取って、少しでも俺のこの頭の中の空気を変えたい……。


 


 いやなんとしても変えなければ……。




 兵士……いや軍人たちの殺気にあてられて、危うく俺はさきほど——。




 俺はもう二度と誰も殺さない。


 


 そう……誓ったのだから……『彼女』に……。


 


 脳裏にはますますその『彼女』の顔がちらつく。


 


 俺は半ばそれを強引に無視して、一時の眠りにつくことにした。


 


 起きた時には『彼女』の顔が脳裏から消えていることを祈りながら……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ