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束の間の遊戯-04-

 やがて、麻耶さんは、




「うう……なんで……わたしがこんな目に……こないだの一件で終わったのものだと思っていたのに……」


 


 と、ブツブツと文句を言った後、




「わかったわ……だ、だんな……いえ……ふ、二見。あなたを今だけは信用してあげるわ。わたしの体を直接見れば、この訳のわからない状態を解決する方法がわかるのでしょう?」




 と、しぶしぶと言った様子で言う。




 そして、綾音さんの方を見て、




「あ、綾音……二見が変なことをしないか、そこで見張ってなさい」


 


 と、言う。




「も、もちろんです。こ、今度こそはわたしが摩耶さんの貞節を守ります……ふ、二見……わかったな!」


 


 と、綾音さんはそう俺を威嚇するように言うが、どうもその態度はどこか腰が引けているように見えた。




「……う、後ろを向いていなさい、い、今準備をするから。綾音……ドレスを脱ぐのを手伝ってくれる」




「は、はい」


 


 麻耶さんと綾音さんが俺を睨むと同時に、俺は勢いよく背をくるりと向けていた。




 という訳で俺を壁をただじっと見ていただけなのだが、背中越しに麻耶さんが肌を露わにしているかと想像してしまうと、どうしてもよからぬ妄想を抱いてしまう。


 


 だからという訳ではないのだろうが、服が擦れる音や麻耶さんのため息……それらの自然音ですらどうにも艶めかしく聞こえてくる始末だ。


 


 妄想というものは大概にして真実よりもはるかに想像力が豊かになってしまうものだ。




 そういう訳で、たぶん時間にしてせいぜいが数分程度だったに違いないが、俺にはやけに長く感じられた。




 やがて、麻耶さんが、




「い、いいわ……」


 


 と、ためらいがちに言う。




「こ、この姿だとほとんど見えてしまいますが——」




「し、仕方がないでしょ。このドレスの構造……こんな風にしか脱げないんだから……」


 


 と、綾音さんと麻耶さんの会話が聞こえてくる。




 それはますます俺の妄想……いや想像力を加速させるものであった。




 俺はすぐにでも自身の妄想の答え合わせをしたいという強烈な欲望に駆られていた。




 とはいえ、あまりにも勢いよく向き直るのはどうにも不躾である。


 


 だから、俺はそんな欲望など微塵もないといった素振りでゆっくりと体を動かした。


 


 そんな俺の視界に飛び込んできたのは、まずは顔を紅潮させている麻耶さんだった。




 そして、その隣には何故か綾音さんまで麻耶さんと同じくらい顔を赤めている。




 彼女たちは二人とも案の定きつい視線で俺を睨んでいる。




 しかし、俺はそんな二人の視線もほとんど印象には残らなかった。




 変わりに別のもっと強烈なヴィジュアルが視界に入ってきて、半ば強制的に俺の頭を占めたからだ。




 麻耶さんは、先程まで身につけていた豪華な黒のドレスをほとんど脱ぎ捨てていて、客観的に言って半裸に近い状況だった。




 麻耶さんは胸の部分を自身の片手で、ショーツを残りの手でといった感じで、器用にも一応はなんとか大事な部分を隠してはいた。




 だが、結局のところ麻耶さんの豊満過ぎる胸は、その片手ではほとんど隠しきれていないし、それに妙に艶めかしいデザインをした黒のショーツもチラチラと見え隠れしている。




 正直なところ、そのギリギリで見えないというシチュエーションはかえって、俺の想像力……いや妄想を刺激してしまう。




 ようするに下手に全て見えているように、余計に妖艶に感じられてしまう。


 


 俺はこれでもあからさまに表情に出さないようにしていたのだが、相当その顔はほうけていて緩んでいたのだろう。




「ど、どこを見ているの……こ、これで原因がわかるんでしょ……し、しっかりと見なさい……」




 と、何故かとうの麻耶さんから檄を飛ばされる。




しかし、麻耶さんには悪いが、はっきり言って冷静に魔力の痕跡を見られる状況ではない。




 どうしても欲望……いや本能が邪魔をしてしまう。




 麻耶さんの今の姿から目を逸らすのは至難の業だったが、俺はなんとか目線を一瞬だけ横に向けた。




 と、綾音さんと目が合う。




 その彼女の表情は、仮借のない厳しいものだった。




 正直なところそこまで怖い顔をしなくてもよいのではないかと思うくらいだ。




 何かをしたら刺し違えても止めるというくらいの鬼気迫る謎の気迫を感じるくらいだ。




 だが、綾音さんのその表情は俺の理性を幾分か取り戻させるのに役立った。




 綾音さんというストッパーがいるおかげで、俺は本能になびき、麻耶さんの体を凝視し続けるのを止めることができた。

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