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23.心配だから

ガンさんに相談しようにも逃げられてしまって困った光は、黒田さんに相談した。光の知らないガンさんのプライベートを考えつつ、黒田さんは、ガンさんを説得します。

 23.心配だから

 居酒屋でガンさんと並んで座っても黒田は、ガンさんに何と言おうか考えていた。今日は、2人共、夕方に勤務が終わったので、「久しぶりに飲みに行きましょう」と黒田の方から誘ってみたのだが、いざとなったら言葉が出てこない。

 ・・・ガンさんも辛いだろうな。と、ガンさんのことを知る黒田は思う。

 ガンさんには娘が1人あったと聞いている。生きていれば光と同い年くらいになるのではないだろうか?不幸なことにその娘はガンさんの奥さんと一緒に交通事故で亡くなってしまい、ガンさんが警備員になったのもそのことがキッカケだったと、こうして、何度か一緒に飲んでいるうちに教えてもらったことを思い出していた。

「クロさんは、あの娘から何か聞いてるのか?」

 静かに飲んでいたガンさんが、ボソッと言う。

「何かって?」

「あいつ、最近やたらと相談があるってうるさいんだよ。」

「何の相談ですか?」

「知らんよ。聞いたって俺なんかが、できることなんか何もないし。ただ・・・」

「ただ?」「・・・。」ガンさんは、言いにくそうにモゴモゴと口を動かすが、結局言わない。こういうガンさんが、可愛くて、からかいたくなるのだが、我慢した。ここは、新村さんの相談に乗ってもらうチャンスだ。

「最近、新村さんの知人が来て騒ぎになっているそうですね。最初は、ガンさんが新村さんを助けてくれたんだとか?」

 黒田が促すと

「助けたなんて大袈裟なんだよ。」

 と、言いつつもポツリポツリとその時の様子を話してくれた。黒田も真木君から聞いたことや光の話もした。

「新村さんが言うには、相手の男性が望む話し合いをするから、もう職場に迷惑をかけないということなんですよね。」

「ふーん。そうなのかい。よかったじゃないか。」「それがよくないんですよ。」「何で?」

 よし、乗ってきたぞ。黒田は、ここでハイボールを注文して一旦、話を止めた。

「何でダメなんだよ、クロさん。」

 気になって仕方ないガンさんが、せっついてくる。黒田は、手ごたえを感じつつ

「気になりますか?」

 と、敢えて聞いてみる。

「えっつ⁉いや、別に、まあ、そりゃあ、アレだよ。アレ。行きがかり、そうだ、行きがかり上ってヤツだよ。まあ、俺も最初に関わっちまったからなあ、どうなったか知らねえとなあ。」

 急に聞かれて焦ったガンさんは、しどろもどろになりながら、上手い理由を思い付いた!といった様子で言った。黒田は、最もだというように頷いて

「そうですね。ガンさんは、最初に関わった関係上、知っていてもらった方が」「そうそう、そうだよクロさん。」「新村さんもそう思って、話し合いの席にガンさんに同席してほしいんでしょうね。」

「ん。そうだ、あいつも俺に同席してほしい?え⁉何だって!」

 うんうん、と頷いていたガンさんが、大声で驚いた。そんなガンさんの目を黒田は、力を入れて見つめ返して、ガンさんを説得すべく、話し始めた。

「ガンさん、新村さんの相談したかったことは、それなんです。」


 今、光は、病院内のカフェで、翔と向き合っている。隣の席には、ガンさんがムスッとした顔で座っていた。グリーンの仕切りを挟んで光と並んで座っているので、翔からは、ガンさんが見えないし、もちろん、ガンさんがいることは、翔には言っていない。ガンさんは、アイスコーヒーの氷を砕いているんじゃないか?と思うくらいに激しくてアイスコーヒーをかき混ぜている音がする。

 ・・・くそう。何だってこんなことに。と、思っているに違いない。

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