15.助けられている
突然、元カレの岸田 翔 と職場で再会してしまった光を助けてくれたのは、野間兄弟だった。特に野間弟にいい印象を持っていなかった光は、驚きながらも感謝し、上司の黒田さんに元カレのことを話したのだった。
15.助けられている
元カレの岸田 翔に見つからないように注意していたのに、出入口の勤務に就いている時に見つかってしまった。突然、翔に
「光?光だよな?」
と声をかけられて、心の準備がなかった光は、耳を塞いで俯いたまま、
・・・どうしよう、どうしよう。と気持ちだけが焦って、動けないでいた。
と、そこへ誰かが、
「すいません。勤務中ですので、私用の話は、やめていただけますか?」
そう言って、光の前に立ったのは、あのアニメオタクの野間 弟だった。
何で、何で?何で野間 弟が?と驚いている間もなく、もう一人やって来た人がいる。
「奥で黒田さんが呼んでるから、行ってください」
そう言って、光に事務所に戻るように合図を送ってきたのは、プロレス好きのぽっちゃり野間 兄だった。
何で、何で?何で野間 兄が?と、また驚いていると、2人揃って振り向いて
「早く、行って」
「早く、行って」
と同時に言った。さすが兄弟!息ピッタリだ。
光は、反射的に
「はいッ」
と、気をつけの姿勢で返事をして、ダッシュで事務所に向かった。次々と起きることに、光は、もう訳が分からなくて、
・・・とにかく、翔がいるこの場から、逃げられる。
という思いだけだった。
慌てて事務所に戻った光を黒田が迎える。
「新村さん、大丈夫ですか?」
「黒田さん・・・。」
心配そうな黒田さんの顔を見た途端、光は、ふっと力が抜けて、倒れるように椅子に座り込んだ。
「す、すいません。黒田さんの顔を見たらホッとしちゃって」
光は、そう言ってから、改めて「すいません。」と黒田さんに頭を下げて、翔とのことを正直に話した。
「なるほど、うちに転職してこられたのも、そういう事情があったんですね。」
「はい、ですが、ここまでのことは、岩村さんにも話していません。でも先日、彼が急におばあさんの入院でついて来た時に突然、再会して動揺してしまった私を岩村さんは、何も聞かずにかばってくれて、さっきも野間さん。お兄さんも弟さんも助けてくれたんです。本当にありがとうございます。」
申し訳なさでいっぱいの光は、恐縮して言った。
「みんな同僚ですから、困った時は、助け合うのは当然ですよ。」
黒田さんの優しい言葉とにこやかな笑顔に光は、安心して
「はい。ありがとうございます。」
と笑顔で言った後に
「でも、黒田さん、野間さん達は本当に親切でしょうか?弟さんなんか、私がアニメのガンダムを見ていたのをちょっとイヤミ言っただけで、ずっと睨んできてたんですよ。助けてくれたんじゃなくて、単に私が友達とお喋りしていて仕事をサボっていると思ったのでは?」
うーんと考えながら、光が言うと
「え?野間君が睨んでって、新村さん、どうして言ってくれなかったんですか?僕から注意しておきます。」
黒田さんが落ち着いて、上司らしく対応してくれたので、逆に光は、慌ててしまった。
「あっ、あの、別に、そこまでは大丈夫です。」




