13、元カレが現れた
13.元カレが現れた
「おはようございます。」
今日から早出出勤で、光は深夜勤務員のメンバーと入れ替わりに時間外出入口の勤務に就いた。
「おはようございます。」
「お疲れ様です。」
光は、出勤してくる職員や夜勤を終えて帰る職員に挨拶をする。
「お疲れ様です。久しぶりですね。」
声をかけてきたのは、バイト学生の真木君だった。
「あ、お疲れ様でした。」
片付け魔の真木君は、夜の10時から翌朝7までの深夜バイトの大学生だ。光が、遅出研修の期間は会っていたが、それ以外の勤務時間では、会うことがなかった。
「今度は、早出の研修ですか?」
真木君が、聞いてくる。
「うん。今日からね。真木君は、今から学校?」
「はい、行ってきます。あの、頑張ってください。」
「ありがとう。真木君も眠いだろうけど、頑張ってね。行ってらっしゃい。」
年が近いせいか、光は、真木君とは軽く話す程度の間柄になっていた。光は、バイトの身でありながら、自身の片付け魔のスタンスを崩さない真木君をスゴイと羨ましい気持ちで見ていた。
・・・変わった人が多い職場だけど、真木君もそうだなぁ。真木君も同じ気持ちで私を見ているのかもね。見ていると言えば、アニメオタクの野間弟と時々、視線が合うんだけど、いつかのことを根に持っているのだろうか?やだやだっと、光は、頭をブルっと振って
「おはようございます。」
と、出勤してくる職員さんに再び声をかけて仕事に集中した。今日も岩村さんと同じ勤務で、出入口の立番が終わったら、一緒に駐車場の誘導をする。
広崎先輩の手紙で受けた衝撃も仕事に集中することで忘れられている。ガンさんと一緒なら尚更だ。ガンさんとは、お互いに慣れてきたところもあるが、やはりまだ緊張感がある。気を抜かずしっかりやらないと、いつ怒鳴られるか分からない。
「おい、新村。行くぞ」
「ハイ」
早速、ガンさんから声をかけてくれて、駐車場に移動する。
駐車場の入口で光は、ガンさんとペアで駐車場に入る車を誘導する。歩行者や対向の車に気を付ける必要があるが、入ってくる車は、入庫前に先に患者さんを正面玄関で降ろそうとしたり、退院の患者さんを迎えに来た家族や施設の人が、車椅子やストレッチャーを下ろしたりするので、その際の安全確保にも気を配らないといけない。それだけでなく、そのまま入庫する車も窓を開けて、「迎えに来たが、どこに停めればよいのか?患者は、足が悪いが駐車場に停めると、どのくらい歩かないといけないのか?」など、いろいろと聞かれるので、その都度テキパキと対応しないといけない。
今は、研修だから、ガンさんと一緒にやっているが、本当は1人でする勤務だった。光は、聞かれたことに答えたり、乗り降りする人を誘導しているが、ガンさんは周りを見て、車を停める場所を的確に指示する一方で、入庫する車を順番に誘導している。本来の駐車場入口の仕事はそれだ。スムーズに車を誘導することができれば、乗り降りはサポートがなくてもできる。光は、
・・・あの動きができるようにならなくちゃ
と、時々ガンさんを見て、誘導のコツを覚えようと一生懸命だった。そんな時だった。
「あの」
と、光の前に止まったシルバーの軽四自動車の助手席側の窓が開き、運転席から身を乗り出して声をかけてきた男性がいた。
「ハイ?」と
振り返ってみると、その男性は、元カレの岸田 翔 だった。




