第84章 HAPPY BIRTHDAY《MERINGUE'S EYE 2》
12:05
午前中の授業終了のチャイムが鳴ると同時に、私は教室を飛び出して食堂へと走った。
B定食は毎日10食限定の特別メニュー。
日替わりA定食はから揚げ定食・ハンバーグ定食・ミックスフライ定食など、定番の洋食メニューなのだが、B定食は、のどぐろ姿煮定食・松阪牛すき焼定食・国産一尾うな重などなど、和食中心のお品書きだ。
これが500イィエンぽっきりで食べられるのだから、私が食堂へと爆走するのもご納得頂けるだろう。
ああ、ご存知かもしれませんが、ここアース星のジャペン国の通貨1イィエンは地球の日本の通貨に置き換えると1円ですよ。
グミちゃんは「あたしは普通にカレーでいいし、後からゆっくり行くよ。ついでに席取っといてね~」と言っていたので、私は独り、ランチ争奪バトルに参戦することになった。
さて、ここでようやく推理の時間だ。
『私と猫と迷探偵と』は、あくまでも“推理”ジャンルのお話であって、ただただギャグに徹しているようでは看板に偽りありと謗られても文句は言えない。
私視点のお話でも、ちゃんと推理パートは用意されているのだ。
では、お聞きいただこう。
私がさっきまで授業を受けていた教室は校舎の4階、東西に延びる真っ直ぐな廊下の中央付近に位置している。
そして、私が今向かおうとしている食堂は校舎の1階、東寄りにある。
4階から階下へ降りる手段としては、まず廊下の東端に、1階まで続く階段がある。
廊下の長さはどの階も西端から東端まで全長250メートル、今出てきた教室から東端までの距離は、西端までの距離の1.5倍よりも70メートル短い。
ちなみに私の脚力は平地で時速36キロメートルだ。
そしてこの階段、私は1階分を10秒で降りることができる。
廊下の、階段とは反対側、西端にはエレベーターが存在する。
エレベーターは1階分を7秒で降りる。
なお、食堂から西端までの距離は、東端までの距離の3分の2より70メートル長い。
さて、私はどのルートで行けばいち早く食堂にたどりつけるだろうか。
シンキングタイムスタート!
・・え?「これは推理ではなく算数パズルだ」?
まあまあ、これは推理クイズということで。
『私と猫と迷探偵と』は気軽に読める推理ジャンルのライトノベルなのですから。
・・ええ?「どっちのルートでもシンキングタイムで時間食ってるよりは早く到着する」?
まあまあ、シンキングタイムは0.001秒ですので。
さて、わかりましたか?
この問題、私の知ってるどこかの所長さんなら、きっと・・・
「ふっ、スフレ君。僕を誰だと思ってるんだい。こんな推理クイズなど、造作もないさ。いいかい、まず西側のエレベーターでかかる時間を計算しよう。教室から東端までの距離は西端までの距離の1.5倍よりも70メートル短いということは、東端までの距離に70メートルを加えると、ちょうど1.5倍ということだ。そうすると、全長は250プラス70で320メートルになる。西端までの距離を1とした時、東端までの距離は1.5なのだから、全長は1プラス1.5で2.5となる。これが320メートルに値するんだから320÷2.5で、西端までの距離は128メートルとわかる。・・いいかい?ついて来られてるかい、スフレ君?同じように1階部分も計算すると・・・おいおい、寝るんじゃないよスフレ君。分数でも同じように計算して・・・え?分数のたし算がわからない?まず通分してだね・・いやいや、それは約分だよ・・・もういい。とにかく同じように計算して・・・え?分数のわり算がわからない?逆数をかけるんだよ・・いやいや、それはアボガドロ数だよ・・・それで、そうそう、それが約分だよ・・・で、食堂から西端までの距離は142メートルとわかるね。は?わからない?・・・よしわかった。省略せずに説明しよう。1階の食堂から西端までの距離は、東端までの距離の3分の2より70メートル長いのだから、西端までの距離から70メートルを減らすと・・・うん、廊下の端を切り落としてしまったと思ってもいいよ。いや、本当にやるなよ?君ならやりかねないから言ってるんだよ。・・・話を続けていいかい?・・とにかく70メートル短くすると、ちょうど東端までの距離の3分の2になる。全長は、70メートル短くしたんだから250マイナス70で180メートル。今度は東端までの距離を1とすると、西端までの距離は3分の2、全長は1プラス3分の2で・・・そう、ここで通分をするんだよ。分母を揃えるんだ。え?『“1”に分母は無い』だって?君!この算数ドリルをあげるから、毎日100ページずつ練習しなさい!・・・話を続けていいかい?・・とにかく3分の3プラス3分の2で3分の5だ。これが180メートルに相当するんだから180÷3分の5、分母と分子を逆にしてかけて・・・そうそう、で、約分・・うん、108だね。だから、食堂から東端までの距離は108メートル。西端までの距離は142メートルになるよね。・・・はい。納得したね?続けるよ?
君は廊下を時速36キロメートルで走るんだから、秒速にすると何メートルだい?・・・え?1584メートル?どう計算するとそんな数字が出てくるんだ。第一そんな速さで走れるわけないだろう。・・・いや、君ならやりかね・・・かねる、かねる!!普通に無理!さすがに無理!!・・・こほん。それはともかく、3600で割ればいいんだよ。秒速10メートル、簡単だろ・・・て!これでも速すぎない?!女子の世界記録超えてない?!・・・まあそれもともかく、西側廊下部分の距離の合計は128プラス142で270メートル、これを君は27秒で走る。そしてエレベーターにかかる時間、1階分が7秒だったね。4階から下まで降りるわけだから、これなら簡単だろう、何秒かかるかわかるよね、スフレ君。・・・え?7×4で26秒?いろいろ違う!いいかい。4階から1階に降りるんだから、3階分降りればいいんだよ。7×3で21秒だ。・・・ああ、まてまて、もう少しで終わるからHuluHuluでアンビアンスを見始めるのは止めなさい。・・・話を戻すよ。西側の合計は27プラス21で48秒だ。東側は廊下の合計が230メートルで23秒、階段は全部で30秒かかるから、合わせて53秒。つまり、西側から食堂に行った方が早く着くということさ。ふふっ、今回も鮮やかな推理を展開させてしまったようだね(ドヤ!)」
なんて、御託を並べるに違いない。
だがしかーーし!そんなものは机上の空論!!
エレベーターの待ち時間や、途中の階で止まることなども考えなくてはならない。
そもそも私は実体験から西側と東側でどのくらい時間がかかるかなど百も承知なのだ。
ああ、もうシンキングタイムの0.001秒はとっくに過ぎている!!
「アンビアンス」は上映時間720時間の映画です。




