第83章 HAPPY BIRTHDAY《MERINGUE'S EYE 1》
この章は75章『HAPPY BIRTHDAY』の青山スフレ視点でのお話です。
時系列にも注目してみて下さい。
私は青山スフレ。
才色兼備の女子大生&RR探偵事務所の有能探偵助手で・・・・って!ちょっと待ったーーー!!
私は声を大にして言いたい!
何ですか、このタイトルはっ?!
大体、何て読むんっすか?!
07:24、青山スフレの自宅。
私は、スマホを取りだし、『MERINGUE』を検索した。
【MERINGUE(仏) メレンゲ。鶏卵の卵白を泡立てた食材。】
なるほど。
・・・・・・・
・・・・・・・・・
スフレ(フランス菓子)の材料!!!
タイトルおかしくないっすか?
お菓子だけに・・・
って、くだらん!!
今日は1日中大学の授業が詰まっているのだ。
こんなおふざけタイトルに付き合っている暇はない。
私はこう見えて真面目な科挙圧巻女子大生なのだから。
さて、パパッと出かける準備をしちゃいますよ。
まずは、顔を洗って・・・・
ぺろぺろ
唾液を前足に付けて~
こしこし
何度も顔を擦って~
再びちょっと待ったーーー!!
何ですか、この洗顔スタイルはっ?!
これ、エ・クレアさんの章じゃないっすよね?!
わたくし、青山スフレの章ですから。
普通に水で顔を洗いますよ?!
ピチピチ女子大生のスフレさんには洗顔料など無用です。
水も弾いちゃうツヤツヤお肌。
え?なんですか?水も弾くほど脂ぎってるわけじゃありませんよ!
まったく、失礼しちゃうっす。
・・・さて、気を取り直して。
まずは滑車にかけたロープの先の釣瓶を水に落とし、その後するすると引き上げる。
釣瓶は、なみなみと新鮮な水で満たされている。
私は両手でその水をすくい、そっと顔にあてる。
水の冷たさが、一気に眠気を吹き飛ばしてくれる。
ああ、この『大人の贅沢家電シリーズ3 おうちで本格井戸端会議』買ってよかったなぁ。
シリーズ1の流しそうめん器とシリーズ2の回転寿司トレインは2、3回使って押入れ行きだったけど、これはもう3年も愛用してるからな~
井戸型容器(プラスチック製)に冷蔵庫で冷やした水道水を入れて、手のひらサイズの釣瓶を落としたらスイッチオン。
電動で釣瓶を引き上げてくれるのだ。
半畳に置けるお手軽サイズで、狭い我が家にもピッタリ。
うん。いい買い物をしたな。
私は洗顔を終え、髪を丁寧にとかす。
昨日の大学の帰りに買っておいたのだ。
この、パイプクリーナー。
お風呂場の排水溝に詰まった髪の毛を綺麗に溶かしてくれるのだ。
・・・いや、やっぱり時間がかかるから、これは帰ってからにしよう。
私はトイレに行った後、洗って濡れている手で自分の髪の毛を撫でつけ、スマホを大学用のバッグに入れて部屋を出ようとした。
準備万端の私の事、着替えは昨夜寝る前にすませておいたのである。
え?メイクはって?
ピチピチ女子大生のスフレさんにはお化粧など(以下略)
私はふと、バッグに入れかけたスマホの画面に目を留めた。
・・あれ?スマホのスケジュール帳、今日の日付に何かマークが付いてる。
なんだったっけ?
・・・・・・
!!!!!!!
我が弟、カヌレの誕生日!!!
あわわわわわ
すっっっっかり忘れていた!!!
今日だったか!
な・・・なんも準備してない・・・・ヤバい。
とりあえず、電話してみよう。
スマホでカヌレの番号を呼び出し、早速電話をかける。
トゥルルル トゥルルル
・・・・出ない。
そういえば、弟も小学校に行く時間だ。
忙しくしているのだろう。
LIMEのメッセージでも入れておこう。
『おはよ(T_T)
今日はカヌレの誕生日だね、おめでと~(^^ゞ
お姉ちゃんは、もう1年前から楽しみにしてたよ(~_~)y-.。o○
それはそれは盛大なパーティーを計画してるんだけど\(゜ロ\)
カヌレはお友達とパーティーをするのかな?m(_ _)m
お姉ちゃんの方はまた後日でいいから、お友達と楽しんでね~(゜o゜)』
よし。これで、多少の時間稼ぎになるだろう。
その間になんとかしなくては。
・・・まあ、とりあえず学校へ行く時間だ。
08:50、○○田大学(スフレの通う大学)。
「スフレ、おはよう~」
1限目の授業が行われる教室に入ると、友人の緑川グミが私に話しかけてきた。
「グミちゃん、おはよーっす」
私も挨拶を返し、彼女の隣の席に着く。
ドゴーーーーン ゴボボボボボ
「!!!!」
突然の音にグミちゃんが驚いているが、これは最近設定した私のLIME受信音。
アポロン1111号がモ゛ニュリ゛ミョ星に着陸した時の貴重な音声データ、LIMEストアで期間・数量限定販売していたのを1500イィエンでゲットしたのだ。
「あ、カヌレからの返信だ。あれ?小学校ってもう授業始まってるんじゃないのかな?まさかあの子、スマホを隠し持って・・・」
私は大学の近くのアパートで独り暮らしをしているが、弟は実家から地元の私立進学校の小等部に通っている。
ちなみに弟の学校は“初等部”ではなく“小等部”という名称を使っているらしい。
それはともかく、弟の学校の場合、スマホの持ち込みは可能だが、朝会の時に貴重品箱に預けて、下校時に持って帰るというルールなのだ。
私に似て真面目で優秀な我が弟に限って、スマホを隠し持ってるとか、そのような不良行為をする事などまずありえないだろう。
そんな事を考えながらスマホの画面に目を落とす。
『昨日、調理実習で作ったカキフライに
クラスメートの内25人があたってしまい、
本日は学級閉鎖になりました。
幸い、僕はカキが苦手で食べなかったため、事なきを得ました。
本日予定していた僕の誕生日パーティーは、招待した友人全員ダウンのため、
中止となりました』
おおぅ?!集団食中毒?!
そうだ。我が弟カヌレは柿が苦手だった。
やはり今の時季の柿は危険だ。
カヌレが中毒を回避したのは良かったが・・・・パーティー中止?
私はすぐさま返信する。
『でも、家族だけでパーティーするんだよね?
お姉ちゃんもこっちでとてもとても盛大なパーティーを準備してたんだけど
今日はパパとママにお祝いしてもらって
お姉ちゃんの方はまた今度ということで☆』
私たちにはもう一人兄弟がいるが、今は所要で不在だ。
しかし、両親がパーティーを用意してくれているだろう。
よし、送信っと。
ドゴーーーーン ゴボボボボボ
返してくんの速っっ!!
横に座ったグミちゃんの視線が痛いけど、そんなこと気にしている場合じゃない。
なんとか時間稼ぎは出来ただろうか。
『父上と母上も、僕が食べずに持ち帰ったカキフライを食べ、
現在、家のトイレ争奪戦の真っ最中です』
なんてこった!!!
『ですので、喜んで姉さんの企画してくれたパーティーに行きたいと思います。
父上と母上も、「大したことないから心配しなくていい」
「気にせずパーティーに行っトイレ」
と言っています。
あと、「スプレによろしく言っといて」だそうです。
誤字ではありません。言われたままに伝えています。
姉さんは大学の授業があるのですよね?
何時に行けばよいですか?』
おおジーザス!!
とてもとても盛大なパーティー、と言ってしまった手前、招待客も必要だろう。
と、とりあえずグミちゃんに相談しよう。
他の友人にも声をかけて・・・
「え?スフレの弟の誕生日パーティー?・・・いいけど、弟君も見知らぬ大人どもに祝われても気まずいだけじゃない?」
そういえば、グミちゃんは私の弟と会った事も話したことも無い。
他の友人も然り。
そうだよね。せめて知り合いじゃないとダメだよね。
「スフレの職場の人たちに頼んだら?」
お?
グミちゃんの言葉に、私の頭の中でピコーン☆と、いつものメロディが響き渡る。
「確かスフレ、探偵事務所でバイトしてるんだよね。この前、弟君が事務所に来たとか言ってたでしょ。だったら、事務所の人たちとは知り合いなんじゃないの?」
それだーーーー!!!
私は、九死に一生を得た思いでグミちゃんの両手を取り、ぶんぶんと感謝の握手をした。
それから、カヌレに18:00にRR探偵事務所に来るように、とLIMEを送った。
実家からは電車で1時間半くらいで来られる距離だ。
今思えば、この時すぐに所長たちに事情を説明するメールでも送っておけばよかったのだが、この瞬間の私の心の中には解決策を手に入れた安心感と、今日の学食の日替わりB定食のメニューは何だろうなぁという思いしか存在していなかったのである。




