第81章 HAPPY BIRTHDAY《CAT’S EYE 1》
この章は75章『HAPPY BIRTHDAY』のエ・クレア視点でのお話です。
時系列にも注目してみて下さい。
7:29、シニタテピチピチ鮮魚店。
オレっちはエ・クレア。
言語ワクチンを接種して、人間の言葉を理解・発音できる“おしゃべりにゃんこ”認定猫なのニャ。
RR探偵事務所で働いていて、近所の商店街にあるここ、シニタテピチピチ鮮魚店の2階を間借りして一匹暮らしをしている立派な社会猫なのニャよ。
・・え?ちょっと前もオレっち主人公の章があったのに、またか・・って?
そうなのニャ。これがにゃんこ特権なのニャ。『私と猫と迷探偵と』の影の主人公はオレっちなのニャ。
ニャニャニャニャ五月蠅いのはご勘弁なのニャ。これがオレっちのアイデンティティなのニャ。
今日も朝ご飯に鮭児の丸焼きを食べて元気いっぱい。
テレビでは、いつもの朝の占いコーナーが放送されているのニャ。
【本日のにゃんこ血液型占い A型のあなたの今日の運勢はニャー吉!
お目当ての買い物を残り1個でゲットできちゃうかも☆
今日のラッキーナンバーは10だよ!】
オレっちの血液型はA型。
猫の血液型はA・B・ABの3種類。
だから、にゃんこ血液型占いにはO型はないのニャよ。
さて、占いもチェックしたし、そろそろ仕事に向かうのニャ。
「おはようございますニャ」
1階に降りたオレっちは、いつものように鮮魚店の開店準備をしているおかみさんに挨拶をしたニャ。
「はい、おはようさ~ん」
おかみさんはいつも陽気でフレンドリー。おかみさんの旦那さんであるおやっさんも豪快で気のいい人なのニャ。
あれ?今日はおやっさんの姿が見えないニャ。
いつもはとっくに仕入れから戻ってきて、作業場の仕込みをしている頃なのニャ。
「ああ、おとっちゃんならさっき商店街の組合長さんに呼ばれて出て行ったよ」
「こんな朝早くに?何があったのニャ?」
「なんでも商店街の珈琲店で偽物のコーヒー豆が売られてたとかなんとか騒いでたねえ」
「偽物ニャ?」
「南極大陸で育てられた貴重な高級コーヒー豆で、“タロ(ウエッデルアザラシ)とジロ(アデリーペンギン)が一生懸命運びました!”っていう謳い文句で売ってんだけど、そのコーヒー豆・・・麦チョコだったらしいのよ」
「ニャンと?!」
「最近、食品偽装とか多いじゃない。商店街でも対策をしないと、って組合長さん言ってたわ~」
「・・・・ウニャ~・・・でも、そもそも南極大陸でコーヒーの木ニャンか育たニャいし、誰も騙されニャいのニャ。放っておいても大丈夫なのニャ」
「そうさねー。よっぽどのおまぬけさんじゃないと、こんなのに騙されんわねー」
「そうニャねー。こんニャのに騙されるのは、よほどの無知蒙昧さんなのニャねー」
おかみさんと朝の雑談を済ませて家を出たオレっちは、そのままRR探偵事務所に出勤したのニャ。
事務所のドアを開けて・・・
08:26
ガランゴロン ガランゴロン ガランゴロン
?!ニャンだこの“出力大き目のカウベルをぶら下げた牛が大暴れ!”的な音は?!
事務所の中にいたタルト所長も口を丸く開けているニャ。
普段、仕事が終わって帰宅する時にはドアベルを固定して鳴らないようにしているのニャ。
そして次の日の朝、いつも最初に出勤してくるタルト所長がドアを開けて入るときに、固定してある金具をはずして、再び鳴るようにするのニャ。
だからタルト所長が今日、まともにこのベルの音を聞くのは今が初めてなのニャ。
そして今、オレっちと同じ反応をしている所長を見るに、このカウベル・・・じゃニャかったドアベルは、昨日の終業時から今日タルト所長が出勤してくるまでの間にすり替えられてるのニャ。
もちろん、タルト所長の仕業ではニャイ。
・・・・まあ、こんニャ馬鹿げた事をした犯人は分かっているのニャ。
それは・・・・
「スフレの仕業だニャ!」
「またスフレ君だな!」
さすがにタルト所長にも分かったらしいニャ。
2人で同時に声を上げたのニャ。
オレっちはPCから事務所のサイトを立ち上げ、メールチェックをしたのニャ。
最近は電話よりもサイトのフォームからファーストコンタクトを取ってくる顧客が多いのニャ。
でもほとんどが町内会の連絡であったりするのは内緒なのニャ。
今日は・・・・
『スフレメモ 毎月13日は“スーパー ジェイソン”でマチェーテの大安売り!』
何故ここをメモ帳代わりにするのニャッ?!
何故自分のスマホに入れニャイのか?!
そしてマチェーテは毎月買うようなものニャのか?!
『ちなみに13日が金曜日だった場合、なんとマチェーテ95%引き!!』
知らんニャッッッ!!!
その後オレっちは、架空請求にコロッと騙されそうになったタルト所長を叱り飛ばしたのニャ。
まったく、この事務所でまともなのが猫だけだニャンて。
09:47
ガランゴロン ガランゴロン ガランゴロン
カウベル・・・じゃなかった、事務所のドアベルが鳴って、オレっちはドアの方を振り向いたのニャ。
そこには、40代くらいの女性が立っていたのニャ。
初めてみる顔。新規の飛び込みのお客さんのようだニャ。
タルト所長が自己紹介をしながら、女性を応接スペースのソファに案内している間に、オレっちはキッチンでお茶の準備をするのニャ。
スフレがいニャいから、お茶くみもオレっちの仕事。
まかり間違っても(小)麦(粉)茶なんて出さないニャ。
無難にコーヒーをお出しすることにしたのニャが・・・
来客用ドリップコーヒーが切れていたニャ。
スフレが買い忘れたのニャ、まったくもう。
仕方がないので、普段はタルト所長専用だけど、彼お気に入りのコーヒー豆をちょっくら借りることにしたのニャ。
09:53
タルト所長はお気に入りのコーヒーにご満悦のようニャが、依頼者の女性の方は怪訝な顔をしているニャ。
お口に合わニャかったのかな?
猫にコーヒーはNGだから、オレっちは味見できニャいけどね。
「あの・・・こちらはペット探しとかは頼めるのでしょうか」
ペット探しはやっていない探偵事務所もあるけれど、ここRR探偵事務所は依頼の8割が、家からいなくなったペットの捜索ニャ。
もちろん猫探しが一番得意であることは言うまでもないニャね。
「お探しのペットは猫ちゃんですか?ワンちゃんですか?」
タルト所長の問いに彼女はこう答えたのニャ。
「・・ええと・・どれにしようかと思って」
ニャンと?!
「猫も犬も好きなんですけど、文鳥とかも手乗りさせたらかわいいし、庭に池を作って錦鯉なんかも癒しになるかなって・・・」
“ペット探し”ってもしかしてニャ・・・・
「どれがいいと思います?」
そうか。“これから飼うために、自分にぴったりのペットを探してほしい”という依頼だったのニャ!!
事情を察したオレっちは、口を半開きにしたまま固まっているタルト所長に助け舟を出したのニャ。
オレっちはいろんなペットの長所や短所を依頼者に説明したニャ。
「ジンミンゲンミット!いいですね!!ジンミンゲンミットと一緒にゴロゴロしたり穴掘りしたり!楽しそうですね!!ジンミンゲンミットにします!ペット探しを手伝っていただいてありがとうございました!!」
そう言って依頼者は料金を支払って帰って行ったのニャ。
依頼者さん、良いペットライフを過ごしてくれるといいニャア。
16:35
いつものように慌ただしくスフレが事務所に駆け込んできたのニャ。
スフレに誕生日?
スフレの誕生日とは、卵が産み落とされた日の事をいうのニャろうか、それとも卵を割って出て来た日の事をいうのニャろうか、はたまたその後煮えたぎるマグマの海から地上に這い出た日の事をいうのニャろうか・・
「私じゃなくて、私の弟カヌレの誕生日なんです!」
カヌレ君?
オレっちの記憶によると、カヌレ君とは、顔は似ているが性格は全く似ていないスフレの弟だニャ。
小学5年生だと、10歳から11歳になるのニャね。
お父さんもお母さんも留守にしていて、友達も呼べないなんて可哀相ニャ。
このRR探偵事務所でパーティーを開いてあげるのニャ。
「で、パーティーは何時からの予定だい?」
「あ、18:00です」
「ニャンだってっっ?!?!」
あと1時間半もニャいじゃないか!!急がニャいと!
タルト所長の采配で、分担して準備をすることになったのニャ。
タルト所長がメインディッシュを用意すると言ってるから、オレっちは・・・主食になる炭水化物・・ピザがいいかニャ、パスタにしようかニャ・・・
あ!パンにしようニャ!パンデミックパン店ならここから近いし、確かパーティー用のサンドイッチセットを売ってたはずニャ!
飾りつけをスフレに任せるのは心配だけど、今は時間がニャい。
『スフレの手でも借りたい』事態なのニャ。
猫の手は主戦力として貸し出すのニャ!
次章に続きます。




