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第80章 HAPPY BIRTHDAY《TARUTO’S EYE 2》

16:47

僕は商店街の肉屋、“You meetミート”へとやって来た。


「こんにちは」

「あら、所長さんいらっしゃい」


僕は顔見知りの肉屋の奥さんに挨拶をしてから、視線を横に向けた。

肉屋の壁には『お子様に大人気 パーティーオードブル 注文受付中』のポスターが貼ってあった。


「これって、今すぐ持ち帰る事できますか?」


僕が尋ねると奥さんは、


「単品で売ってるお惣菜を盛り合わせるだけだからすぐできるよー。ちょっと待っててねー」


と言って、店の奥に注文を通しにいった。

店の奥では旦那さんがちょうどコロッケを揚げているところだ。

他にも若いバイトの青年が、出来上がった惣菜を並べたりしている。


「ああ、そういえば所長さん。待っている間、ちょっと相談に乗ってほしいんだけど」


奥さんは、何故か小声でそう言ってエプロンのポケットから1枚の紙を取りだし、僕に差し出した。

メモ帳をやぶり取ったくらいの2つ折りにされた小さめの紙で、開いてみると手書きの文字で何か書かれている。


【パスワード:ヨーロッパ的な】


????

何だこれは。


「奥さん、これは何です?」


僕は不思議なメモを手に、肉屋の奥さんに尋ねた。


「これね。手提げ金庫のパスワードなのよ」


どうやらその手提げ金庫は、普段は肉屋の奥の従業員スペースの棚の上に置いてあり、古い領収書なんかを入れっぱなしで最近ではほとんど開閉していなかったのだが、奥さんがそこにへそくりを貯めようと思いついて、いざ開けようと思ったものの、開けるためのパスワードを忘れてしまったらしい。


「昔、パスワードを忘れないようにこのメモを書いたんだけど・・・・」

「パスワードをメモに残すのは危険ですよ」


僕が注意すると奥さんは、


「だから暗号にしたんだけどね。ああ、パスワードといっても4ケタの数字なのよ。これなんだけど」


と、メモを取り出したのと反対の手に持っていた手提げ金庫をカウンターに置いた。

さっき、注文を通しに店の奥に入っていった際についでに持ってきていたらしい。


「自分で作った暗号の解き方を忘れちゃって。開けられるかしら」


それはダイヤル式のオーソドックスな小型の手提げ金庫だった。

前面に南京錠型のダイヤルが4つ横に並んでいる。


4ケタの数字を回して合わせるタイプだな。

そして、奥さんはその数字を暗号にしてメモに残している。

早速このメモから暗証番号を推理しよう。


パスワードのメモには“ヨーロッパ的な”とある。

語呂合わせか?

ヨーロッパなら468になるな。

しかしヨーロッパはともかく“的な”がひっかかる。

一昔前の若者言葉か?

この部分は語呂合わせにしっくりこない。

“的な”の“な”は7でいいかもしれないが、“的”が浮いてしまう。

4687なら“ヨーロッパな”でいいはずだ。


考え方を変えるか。

ヨーロッパ的な・・・

言い換えか?

ヨーロッパみたいな~(語尾上げる)

・・・二昔前の若者言葉になってしまった。

もしかしてヨーロッパの方を変換するのか?

・・・・欧州?

欧州的な・・・

・・・・・・・

欧風!!

“おうふう”


「わかりましたよ、奥さん」


僕は奥さんに微笑みかけた。

そして、カウンターに置かれた手提げ金庫に手を伸ばすと、ダイヤルを6424に合わせた。


カチャン


小気味よい音が鳴り、金庫の蓋が上に持ち上がった。


「あらあら~あっという間に開いちゃったわ」


奥さんは僕の鮮やかな推理に驚きを隠せないようだ。

種明かしを聞かせてほしいと言う奥さんに、僕は暗号の解読方法を説明した。

この暗号の鍵は『パソコン』だ。

パソコンのキーボード上で“おうふう”のひらがなをそれぞれ探してほしい。

そのキーに書いてある数字を並べると6424となるわけだ。


・・・しかし、この暗号、複雑すぎやしないか?

僕は幸いキーボードの配列を記憶していたからすぐにピンときたんだが。

奥さんは「ああ、そういえばそんな暗号を作った覚えがあるわあ」なんて笑っていたけど、次からはもっとわかりやすいパスワード管理をした方がいいだろう。


そうこうしているうちにパーティーオードブルができあがった。

奥さんはお礼だと言って少し値引きをしてくれて、僕は肉屋を後にした。


さて、メインディッシュはあっさりと手に入れられた。

オードブルには、大人気のクロコダイルコロッケも入れてくれてるって言ってたな。

カヌレ坊ちゃんも喜んでくれるといいけど。

あとは・・・

・・・・・・

ケーキ!!

誕生日会といえば主役はケーキだ!

さっき、ケーキの話は一切出てこなかった。

さてはスフレ君、忘れてるな。

まったく、しょうがない。

自称探偵助手が聞いてあきれるよ。

よし、ケーキはうちの実家も御用達の、ベルギーに本店がある有名店で調達することにしよう。


17:15

僕はケーキ店を訪れた。

ここでは主水モンドコネクションでアルミニウム賞を受賞した、ベルギー産のチーズをふんだんに使用したフロマージュチーズケーキが売れ筋らしいのだが、今日の僕のお目当てはこれではない。


「いらっしゃいませ」


清潔な白い制服を着こなした店員さんが応対してくれる。


「誕生日ケーキが欲しいのですが、チョコレートケーキのホールはありますか」


僕が尋ねると、店員さんは例のチーズケーキを薦めてきた。


「こちら当店で今人気でして、お誕生日ケーキ用にホールのチーズケーキをフルーツで飾ったものもございます。メッセージプレートやロウソクも無料でお付けしていますよ」


せっかくの申し出だが、やはり小学生男子といえばチョコレートだ。

逆にチョコレート以外のケーキとか食べるのだろうか。

僕は丁重にお断りをした。

そして、無事にHAPPY BIRTHDAYプレートの乗ったチョコレートケーキをゲットしたのだ。


そうそう、プレゼントも忘れちゃいけない。

次はおもちゃ屋だ。

ここの商店街は結構大きく、様々な店が立ち並んでいる。

この商店街内だけで生活に必要な物が全て揃えられる、便利な街なのだ。


17:28

ピポパポーン


ここは商店街の中でも比較的古くからあるおもちゃ屋“トーイザうルス”。

おもちゃ屋のドアをくぐると、来店チャイムが鳴り、奥から白髭を蓄えた老店主が出てくる。


「こんにちは」

「おや、赤岩さん。君がおもちゃ屋に来るなんて珍しいね。助手のお姉ちゃんなら、よくそこのガチャガチャやりに来てるけどねぇ。なんだったか、“地球シリーズ 日本の仏像コレクション”で『闇夜で光る!ガチで千手ある観音 (レア)」がなかなか出ないって愚痴ってたねぇ』


「・・・・さあ、誰の事でしょうか。うちの助手はおしゃべりにゃんこだけですので・・・それより、今日は小学生の男の子用の誕生日プレゼントを探しに来たんですよ。小学生男子に人気のおもちゃって何ですかね」

「そうさねー。スリンキーとか旗源平とかベーゴマ・・・」


いつの時代の人気なのだろう・・・

あ。そういえば、前にスフレ君から聞いたスマホの人気ゲーム、あれ何だったっけ。

そうだ、思い出した。ストーリー()ファイターだ。

あれのキャラクターグッズとか置いてないかな。


「え?ストター?あれは小学生よりはもう少し大人向けのゲームだしねえ。ほら、グッズを手に入れようにも重機は子供じゃ買えないし運転できないでしょ」


そりゃそっか・・・てか、ストターって略すんだね。


「最近は“妖怪クロック”が人気だね。キャラクターグッズの入荷も増えてるよ。昨日も『口先女』のマスク手作りキットと『犬面犬』のワンワンレース(プラレールみたいなおもちゃ)が売れたぞな」


それは妖怪なのかな?

口先だけの女性はどこにでもいそうだし、犬面犬に至っては、それ、普通の犬なんじゃないのか?

しかし、いいことを聞いたぞ。

よし。“妖怪クロック”。僕は聞いたことなかったけどこれにしよう。

どんなグッズがあるかな。


僕は改めて店内を見回した。

“妖怪クロック”が人気というのは本当らしい。

それらしきグッズがたくさん陳列してある。


うーん。

やっぱり小学高学年男子といえばフィギュアだろう。

いろんなキャラのフィギュアが並んでいる。

口先女、犬面犬、一旦木綿いったんもめん豆腐&続いて絹豆腐(セット品)、スナメリばあば、ひざこすり、河童、粉無こなきじいじ・・・・・

ん?!河童?!

何故これだけ何のひねりもない?!


「ああ、全身が緑で手足に水かきがあって、キュウリが好物だという設定のキャラクターらしいな」


設定もひねってない!

しかし、河童のフィギュアに付けられた手書きポップには『当店ふいぎあ部門売上第壱位!』と書いてある。

ひねりがないというのも案外いい物なのかもしれない。

カヌレ君にはひねることなく真っ直ぐな性格に育ってほしい。

ああ、僕、いい事言うなあ・・・・

よし、これにしよう。


「この河童のフィギュア下さい。ラッピングもお願いします」


17:45、RR探偵事務所。

買い物を全て済ませた僕は、事務所に帰りついた。

スフレ君はすでに帰ってきているようだ。


「買って来たよ。スフレ君、テーブルセッティングはー?」

「いまやりまーす」


エ・クレア君も今帰ってきたところだと言う。

彼も無事に目的のサンドイッチを手に入れられたらしい。

スフレ君は1000個の風船をあれよあれよという間に膨らませてしまった。

彼女の肺活量はどうなっているんだろう。

顔がデスラー総統のようになっているのが少々気になるが。

さて、飲み物は買い置きの炭酸飲料やフルーツジュースがあるから、それを出して・・・と。


よし、そろそろカヌレ君も到着する頃だろう。

ケーキにプレゼント、喜んでくれるといいな。

『HAPPY BIRTHDAY』赤岩タルト視点編はこれにて終了です。

ここまでお読みいただきありがとうございました。

次章からは、再び別視点でのお話です。

引き続きよろしくお願いいたします。


【ストーリー&ファイターは第61章『そして誰もいなくならない Day4(7)』で登場しています。渡来ムサカ大尉(サバゲー元大尉・サファゲー現大尉)とその友人陽さんの熱いバトル(?)が繰り広げられています】

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