第8章 所長!事件です!!6
「しょちょーーーう。タルト所長ニャーーーーン」
ほぼ丸々1章、回想にふけっていたタルト所長とスフレさんの元に駆けつけたのは、この探偵事務所で1番の常識人(猫)、エ・クレア探偵助手です。
家の塀の上をひょいひょいっと走って来ています。
「あ、エ・クレア君。調査はどうだったかい?」
「それがですネー。どの猫に聞いても、兼物さんの家の猫に心当たりがないようなんだニャー」
「あれ?でも、長男の天世さんの話では、フランソワーズちゃん、頻繁に猫の集会に顔を出しているということでしたよね、所長」
「うん。・・・別のグループだったりするのかな」
「いえ、ここいらのボス猫3匹にも聞いてみたんニャけど、兼物さんちの猫は見たことないって言ってたニャー」
ちなみにエ・クレアさんは、人間言語ワクチンを接種した『おしゃべりにゃんこ』認定猫ですが、猫語ももちろん話せます。
「さて、これからどうしましょうか、所長」
「うーーん。とりあえず一度、兼物邸に戻ってみようか」
「了解だニャー」
3人(正確には2人と1匹)で、兼物邸に戻ってきました。
ワンワン ワンワン
ニャーニャー ニャーニャー
「あれ?」
「ん、んっ??」
「ニャニャッ???」
例の庭の柵から中を見ると、チャーリーと、写真に写っていた猫が仲良くじゃれあっています。
「え?!フランソワーズちゃん??」
写真を見返す3人(正確には2人と1匹)。
どうみても写真の中の猫と、目の前の猫は同一猫物です。
「・・・・自分で帰って来たのか」
「まあ、たまにはこういうこともあるニャー」
「・・・・・・」
「とりあえず、兼物さんに挨拶して帰るか」
「そうだニャー」
「・・・・・・」
「どうしたんだ、スフレ君。さっきから黙り込んで」
「・・・何か引っかかってるんですよね」
「今朝食べたシシャモの骨かい?」
「違いますっ!何となく、今見ている光景と矛盾するような何かを聞いたような・・・」
「聞き込みで聞いた内容かい?」
「ええ。ええ、そうです。・・・誰の証言だったかな・・・」
「オレっちはその時別行動してたからわからないニャ」
スフレさん、今日はなぜか勘が鋭いようですね。
「じゃ所長、早速、第5章と第6章を読み返してみるニャ!」
「だが断る」
「ニャンで?!」
「めんどくさい」
「上に同じ」
まあ、そうですよね。
読者の皆さんもきっとそうですよね。
いいでしょう。
ではわたくし、”天の声”またの名を”地の文さん”が持てる力、『重要証言ピンポイント再生能力』を今こそ発揮しようじゃありませんか。
我等の前に立ち塞がりし、全ての愚かなる物忘れに、我の力もて、等しく滅びを与えんことを!
我が前に統べよ!メモリーーーーーリメンバーーーー!!!
「こいつ、ヤバイな」ヒソヒソ
「絶対、意味なく眼帯付けてますね。見えんけど」ヒソヒソ
「絶対、意味なく手を額に当てるポーズしてるニャ、見えんけど」ヒソヒソ
はい、回想入りまーす。
~~~~~2時間前 兼物天世との会話~~~~~
「ああ、僕は探偵の赤岩タルトです。兼物照代さんの息子さんですね」
「・・・はい、確かに私は長男の兼物天世ですが・・・え・・と、探偵さんですか?・・・母は、いったい何を依頼したんでしょうか」
「はい、実はフランソワーズちゃんがいなくなったそうでして、その捜索を」
「え?フランソワーズが?・・・いや、今朝早くにチャーリー・・・あ、うちの犬なんですけど、その犬小屋でフランソワーズが寝ているのを見かけたんですが・・・チャーリーが追い出されて、犬小屋の裏で丸くなって寝ていたんですよ。あいつら、どうもウマが合わないみたいで」
「ええ。チャーリー君のことは存じてます。今も、うちの(自称)助手が遊んでもらってます。ほら」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「うん?」
「びみょーにピンポイントじゃないニャ」
「わかった!!!」
「本当かい、スフレ君」
「はい!天世さんのこの台詞です!」
『あいつら、どうもウマが合わないみたいで』
「あ!」
「ニャ!」
「今、ここにいるチャーリーとフランソワーズちゃんはどう見てもマブダチです!」
「マブダチって・・・・だから、スフレ君、君一体、歳いくつなんだい?」
「スフレの死語には目を瞑るとして、確かに2匹はとてもウマが合わないようには見えないニャ」
「・・・どういうことだ・・・?」
3人(正確には2人と1匹)・・・・え?しつこい?・・・あ、もうこれ要らないですか?
では、”3人”に統一しますね。
3人の頭の上に『?』マークが飛び交う中、外での3人の騒ぎを聞きつけたのか、邸の中から兼物夫人が出てきました。
「探偵さん方、フランソワーズちゃんは見つかりましたの?!」
「ああ、マダム。それがですね・・・」
「フランソワーズちゃん、帰って来てますよ」
「えっ?!なんですって?!どこにいるんですの?!」
「ほら、そこに」
スフレは庭の柵から見え隠れする、仲睦まじく遊びまわっている犬&猫コンビを指差しました。
「・・・・はい?」
「いや、『はい?』じゃなくて、フランソワーズちゃん、そこに」
じーーーーーーーーーーーっ
「・・・・はい?」
兼物夫人は、庭の方を10度見くらいしながら首をかしげています。
「・・・・え?もしかして、見えてない・・とか?え?え?所長は見えてますよね?」
「ああ・・・ばっちりと」
「オレっちも見えてるニャ・・・」
「まさかのホラー落ち?!」
「いやいや、こ、この話はハートフル推理ストーリー(?)のはず。ホ…ホラーなんて、ホラ話だよ」
「オオオ・・・オレっち、幽霊は苦手なのニャ!しょ、所長、空気を余計冷たくするようなくだらないダジャレはやめるのニャ!!」
「ちょっと!フランソワーズちゃん、いないじゃない!!どうなってるの?!」
「・・・こ・・こ・・こっちが聞きたいですぅ~・・・」
まだオチではありませんのでご安心(?)下さいませ。
お話はあと少しだけ続きます(今回の事件は次で最終回です)
お付き合いいただけたら幸いです。