第76章 HAPPY BIRTHDAY(2)
スフレさんの用意したウエディングケー・・・失礼。バースデーケーキ(チョコクリーム)には、各段にマジパンで作られた可愛い動物達が飾られています。
・・・・・・ん?可愛・・い?
「姉さん、これはカエルですか?」
「ううん、犬だよ」
「スフレ君、こっちはアナコンダかい?」
「キリンさんですっっ!」
「スフレよ。ゴールデンライオンタマリンとは、またマニアックなアニマルをチョイスしたニャ」
「どう見てもウサギでしょっ?!」
「一体どこのケーキ屋さんで買ったんだい?」
「ケーキはこの近くの“モノノフ”の物ですけど、追加の飾りつけは自分でしました」
「・・・・そんな時間あったかニャ」
「マジパンで動物と誕生日プレート作って置いただけっすけどね」
紫色のマジパンプレートに緑色の食紅で“HAPPPI BARSDEY かぬれ 呪!11才”と書いてあります。
「“呪”!“呪”になってる!しめすへん、しめすへん!」
「英語部分についてはツッコむ気も起こらニャいけど、何故わざわざ“カヌレ”より複雑な“かぬれ”にしたのかが疑問なのニャ。まあ、“才”の部分は賢明な判断だったニャ」
「・・・・・・」
“歳”の字が書けなかった(技術的にではなく知識的に)だけのようです。
ちなみに小5のカヌレ君は読めるし書けます。
「・・ぷぷ・・・姉さんらしいですね」
カヌレ君は笑っています。
「・・・ま・・まあ、主役のカヌレ君が喜んでくれているようだからいいか・・」
「さすが姉弟だニャ」
「しかしホールのケーキが3個も・・」
「しかもその全てがチョコレートケーキニャ」
「私はカヌレがチョコレートケーキ好きなこと知ってたんで当然ですけど、ケーキと言ったら普通バタークリームじゃないですか?」
「昔懐かしの!・・いやいや、普通は白い生クリームでしょ。僕は、小学生の男の子と言えばチョコレートだろうと気を利かせて選んだんだよ」
「パンデミックパン店ではこれしかケーキ売ってなかったのニャ」
「・・・・・・」
実はカヌレ君の好きなケーキはチーズケーキなのですが、彼はしっかりと空気を読んで何も言いません。
「でも、3つもケーキが並ぶと壮観っすね」
「みなさん、ありがとうございます」
「じゃあ、ロウソク立てようか」
「どのケーキに立てるのニャ?」
「うーーん。平等に4本ずつ立てるのはどうでしょう」
「それだと合計12本になるぞ」
「なら、タルト所長とオレっちのケーキに4本ずつ、スフレのケーキに3本立てるのニャ」
「え?!嫌です!私の1本少ないじゃないですか!」
「君のは5段重ねだから、1番上の部分の面積が狭いじゃないか。3本で充分だよ」
「スフレのケーキは変な動物が邪魔して、ロウソク立てるスペースが残ってないのニャ」
やいのやいの
結局誰も譲らず、全てのケーキに11本のロウソクを立てて、あの恒例の儀式を3回繰り返すこととなりました。
ふーーーーー
パチパチパチ
「カヌレ、おめでとう!」
「おめでとう、カヌレ君」
「ハッピーバースデイニャ」
ふふーーーーー
パチパチパチ
「カヌレ、おめでとう!」
「おめでとう、カヌレ君」
「ハッピーバースデイニャ」
ふ・・ふ・・ふぅー
ふぅぅー
パチパチパチ
「カヌレ、おめでとう!」
「おめでとう、カヌレ君」
「ハッピーバースデイニャ」
スフレさんがケーキを取り分けます。
皿の上はケーキバイキングのようになっています。
「さて、それでは早速料理を食べながら、わたくし青山スフレのミラクルイリュージョンをご覧いただきましょう。ミュージックスタート!」
スフレさんはそう言うと、ポケットから取り出したスマホを操作します。
ちゃらりらりら~♪ちゃらりらりら~らら~♪
スマホからはお馴染み『オリーブの首飾り』の鼻歌が流れてきます。
スフレさんの声です。
「スマホで流す意味は」
「もぐもぐ・・このフライドチキン美味いニャ」
「さて、ここに何の変哲もないシルクハットがあります。中には・・・何も入っていませんね」
くるっくー
スフレさんは手に持ったシルクハットの中を観衆(タルト所長、エ・クレア助手、カヌレ君)に見せるように傾けます。
「ここにこのスカーフをかぶせて・・」
くるっくー
スフレさんは同じくポケットから取り出したスカーフという名の風呂敷を、シルクハットにふわっとかけます。
「この魔法の杖で3回たたくと~」
くるっくー
スフレさんは同じくポケットから取り出した魔法の杖という名の菜箸で、シルクハットをポンポンポンとたたきます。
「・・・さっきからスフレ君の胸元でくるっくーくるっくー言ってるんだが・・・」
「姉さんはああ見えてあがり症なんです。心臓の鼓動がここまで聞こえてきてますね」
「あれが本当に人間の心臓の音なら、即病院送りだニャ」
「3回たたくと~」
くるっくー!くるっくー!くるっくー!
スフレさんは風呂敷で隠しながら、胸元から何かを必死で引っ張り出そうとしています。
「おいおいおい。鳩は大丈夫か?!」
「(シルク)ハットは意外と丈夫にできているので問題ないでしょう」
「うまいこと言ってる場合じゃニャいのでは?!」
ぽんっ!
くるっくー!!!!
白っぽい灰色の鳩が元気にスフレさんの胸元から(自力で)出てきました。
「はい。てじなーわん☆」
スフレさんは満面の笑みで、犬のポーズ(ヨガのダウンドッグポーズ)をします。
「あの鳩、シルクハットから出てきてないよね?」
「ガッツリ胸元から出てきたニャン」
「ブラボー!姉さん!!」
カヌレ君は拍手喝采です。
ばさばさばさばさーーー
鳩は大慌てで窓から出ていきました。
特に怪我はなさそうなので一安心ですね。
「ご高覧いただき、ありがとうございました。では、次は所長、お願いします」
「えっ?!僕?!・・ああ・・え・・と、出し物については準備してなかったな・・・そうだ。僕の10イィェン硬貨アートコレクションをお見せしようか」
タルト所長はそう言って腰を上げようとしましたが、エ・クレア助手の肉球にやんわりと押し戻されてしまいました。
そんなタルト所長に提案をもちかけたのはカヌレ君です。
「赤岩探偵。また推理対決しませんか」
「え?」
「なに?なに?推理対決?面白そう!!」
「“また”って事は前にもやったことがあるのかニャ」
「では、エ・クレア探偵と姉さんもゲスト解答者として参加して下さい。僕と赤岩探偵とで1問ずつ出題しましょう」
「わかった。いきなりだけど、1問くらいなら用意できそうだ」
「わくわく☆」
「面白そうニャ」
カヌレ君はソファから立ち上がり、3人は彼に注目します。
「ということで、僕からの出題です。ある美術館で有名な絵画が盗まれました。犯人は怪盗Y」
「Xじゃないんだ」
「まあ、未知数をあらわす文字であることには違いないけど」
「ニャ」
「狙った獲物は逃さない。黒いタキシードにモノクルを付け、月光を背にマントを翻す。彼の正体は誰も知らない」
「ほぅほぅ」
「探偵の好敵手といえば何といっても怪盗だからね」
「ニャ」
「その日も怪盗Yは予告状通り華麗に美術館の名画を盗み出し、逃走したのです」
「それでそれで?」
「その逃走手段は?ヘリコプターか?それとも気球か?」
「ニャ」
「彼は軽自動車に乗り、颯爽と美術館から去っていきました」
「軽自動車」
「突然の庶民派」
「ニャニャ」
「もちろん警察は怪盗の後を追いました。しかし、軽自動車の小回りを利かせた逃走で、とうとう警察は怪盗の車を見失ってしまいます」
「ああ!残念!!」
「ここで軽自動車が効いてくるのか」
「ニャニューン」
「しかし、目撃情報から、怪盗の乗った軽自動車が高速道路に入っていったことを突き止めます。そうなれば袋の鼠。警察は怪盗の進行方向先の全てのインターチェンジに捜査員を配置しました。怪盗が高速道路を降りてきたところで捕まえてやろうと思ったのです。全捜査員に軽自動車の車種やナンバーが伝わりました。しかし、当該の軽自動車はどの出口からも出てこなかったのです。怪盗は車と絵画とともに忽然と姿を消しました。さて、怪盗の行方は?」
【タルト所長の10イィェン硬貨アートにつきましては『所長!事件です!!1』をご覧ください】




