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第75章 HAPPY BIRTHDAY(1)

「今日、誕生日なんです!」


16:35、RR探偵事務所。

午前中に入ってきた依頼を10分で解決したタルト所長とエ・クレア助手は、午後のひとときをまったりのんびり過ごしていました。

そこへ、大学の授業終わりに事務所へ慌ただしく駆け込んだスフレさん。

開口一番、先程のセリフを放ちます。


「え?・・・君、誕生日今日なの?」

「スフレに誕生日があったとは・・・ニャンてこった」

「どういう意味っすか?」


スフレさんは激おこぷんぷん丸のポーズを取りながらズンズンッと2人に近づき、言葉を続けます。


「私じゃなくて、私の弟カヌレの誕生日なんです!」


RR探偵事務所の非公認アルバイト助手である青山スフレさんの弟、青山カヌレは小学5年生。

独り暮らしの女子大生であるスフレさんとは別々に暮らしているのですが、タルト所長やエ・クレア助手とも面識があります。


「へえ、そうなんだ。確か小5だったよね。ということは、12歳になるのかな?」

「11歳ニャよ、タルト所長」


「それで、所長たちにお願いがあるっす!!」


スフレさんは両手を合わせ、タルト所長とエ・クレア助手に懇願の表情を向けます。


「なんだい、スフレ君」

「どうしたニャ」


「話せば長くなるのですが、実は不肖わたくし超絶美少女スーパーインテリジェンス有能探偵助手兼大人気頭脳明晰博覧強記才気煥発女子大生兼弟思いの頼れるお姉さん、青山スフレが!あの青山スフレが!可愛い弟の誕生日を今朝まですっっっかりと忘れていたんっすよ!!カヌレには誕生日パーティーを準備してるって言っちゃったけど、実は何も用意してないんです!!助けて下さい!パーティーを開くの手伝って下さい!!」

「どの青山スフレって?」

「話しても長くなかったのニャ。そしていつもの虚偽キャッチフレーズを省略したら、さらに半分の長さになるのニャ」


「今日は両親も不在らしくて、カヌレの友人も都合が悪く、誕生日を祝ってあげられるのが私しかいないんですよ」

「あれ?確か君、他にも兄弟いたよね?弟さんだったっけ?」


「はい。私とカヌレの間にもう一人。サブレっていうんですけど、今、全宇宙ニューハーフコンテストに出場するために地球に行ってるんです」

「・・ああ、そういえば今は妹さんだったね」

「優勝できるといいニャ」


「なので、カヌレと私の共通の知り合いでお願いできるのが所長とエ・クレアさんしかいないんです!どうか!力になって下さいっす!!」

「う・・うん、まあ、そういうことなら協力するよ。パーティー会場はここでいいよね?」

「カヌレ君に喜んでもらえるといいニャ」


「で、パーティーは何時からの予定だい?」

「18:00です」

「ニャンだってっっ?!?!」


「ちょ、ちょっと!もう時間がないじゃないか!!どうするの?!」

「え?・・・ああっ!!ホントだ!!あわあわあわあわ」

「ニャニャニャニャニャー!!」


「とりあえず、料理は作ってる暇なんてないから商店街で買って来よう。確か、角の肉屋で豪華なパーティーオードブル売ってたな」

「そうだニャ。じゃ、そっちはタルト所長に任せるのニャ。オレっちはパンデミックパン店のデラックスサンドイッチプレートを買ってくるニャ。まだ残ってるといいけどニャ」

「え、え、え、と、なら私は・・私は・・・パーティーで披露する手品に使う白い鳩を捕まえに、駅前公園へ行ってきます!」


「駄目だスフレ君!駅前公園には灰色の鳩しかいない!」

「タルト所長!ツッコミどころはそこじゃないニャ!スフレは部屋の飾りつけをする材料を買ってくるのニャ!貼ったり吊るしたりするだけで飾れる、簡単なものを買うんニャぞ!」

「あいあいさー!!」


こうして慌ただしく役割分担を済ませ、3人は探偵事務所を一旦離れ、それぞれの目的地へと急ぐのでした。



~~~~~~~~65minutes leter~~~~~~~~


「買って来たよ。スフレ君、テーブルセッティングはー?」

「いまやりまーす」

「デラックスサンドイッチプレート、最後の1個だったのニャ!ツイてるのニャ!」


「飾りつけはー?」

「おなじみの94均で60cm×350cmのHAPPY BIRTHDAYパネルを買って来たんで、壁に取りつけますねー。あと、1000個入りのカラフル風船もあるので膨らませて飾るっすー」

「そんなに膨らませてる暇ないニャ!・・ていうかジャペンの94イィエン均一すごいニャ」


「大丈夫っすよ。一気に20個膨らませますから!それ、ふーーーーっ!!」

「人力では無理だろ」

「できたところで、それを50回続ける必要があるのニャ」


18:00

ガランゴロン ガランゴロン ガランゴロン


「ごめんくだ・・・さい」


そう言いながらドアを開けて、青山カヌレ君が時間ちょうどにやって来ました。

予想外の音を立てるドアベルに少々怪訝な表情を浮かべましたが、その事には特に言及することなく、中に入り、部屋の中を見渡します。

スフレさんが94均で仕入れ、即席で飾り付けたにしては上出来な装飾になりました。


「すごいですね」


カヌレ君も1000個もの色とりどりな風船に圧倒されています。


「・・・ん?姉さん、心なしか顔色が青いような・・・どうかしたんですか?」

「ちょっと酸欠・・・ゴホン。な、なんでもないよ。元気元気」


「赤岩探偵、エ・クレア探偵、お久しぶりです。その節はお世話になりました。本日はお招きいただきありがとうございます」


カヌレ君は2人の方に歩み寄り、ぺこりと丁寧にお辞儀をします。


「ああ、カヌレ君。相変わらず礼儀正しいね。さあさあ、主役はこっちに座ってくれたまえ」

「スフレと血が繋がっていることが信じられないのニャ」


カヌレ君は、タルト所長とエ・クレア助手が以前に会った時と変わらず、坊ちゃん刈り、太い黒縁のメガネ、短パンにサスペンダーといった優等生スタイルで、今日は誕生日パーティーの主役ということで、ちょっとお洒落に変成器へんせいき付きの蝶ネクタイもしています。変流器と変圧器の両方が入っていて、電流も電圧も変換しちゃう変成器です。便利ですね。


「さて、早速ですがバースデーケーキの登場でーす」

「ああ、ケーキならこっちにあるよ」

「オレっちがちゃんと用意したのニャよ~」


「ん?」

「んん?」

「ニャニャニャ?」


「え?ケーキなら、私が1年前から予約してましたけど」

「ええっ?!君、ケーキの事言ってなかったから、絶対忘れてると思って僕も買って来たんだけど!」

「オレっちは、パンデミックパン店でちょうど新発売の“パン製チョコレートケーキ(ホール)”を見つけたのニャ。タルト所長と同じく、スフレの事だから十中八九、ケーキ買ってないだろうと思って買って来たのニャ」


エ・クレア助手は、箱から6号サイズの丸いホールケーキを取り出します。

中はスポンジではなく、食パン生地でできているようですが、周りは全てチョコクリームでコーティングされているため、見た目は普通のケーキと何ら変わりません。

ケーキの縁は同じチョコクリームを絞ったデコレーションで彩られ、中央には白いチョコペンで“カヌレくん おたんじょうびおめでとう”と書いてあります。

パンデミックパン店のサービスのようです。


「エ・クレア君もチョコケーキなのか!」


タルト所長もケーキを取り出します。

7号サイズのお洒落なスクエアケーキで、これまた茶色いチョコレートケーキです。

上面にはラズベリーがちりばめられていて、“HAPPY BIRTHDAY”と書かれた四角いホワイトチョコのプレートが乗っています。


「どんだけ私の信用度低いんっすか、失敬な!誕生日パーティーと言えばケーキ第一でしょう!忘れるわけないっすよ!」


ぷんすかしている風に見せかけているスフレさんですが、目が泳いでいます。

おおよそ、予約した店からの連絡が来て初めて思い出したのでしょう。

そもそもカヌレ君の誕生日の事さえすっかり忘れていたのですから。


どーーーん


そしてスフレさんがテーブルの上に乗せたのは、5段重ねのケーキです。

それはさながらウエディングケーキのようなのですが、問題はそのケーキのクリームの種類であり・・・


「チョコレートケーキなのニャ・・・」

次章に続きます。

【青山カヌレは『ノックスの十戒7』の章に登場しています。彼と探偵事務所陣との出会いにつきましてはそちらの章をご覧下さい。青山サブレにつきましても同章でちらっと触れています。94均は『そして誰もいなくならないDay4(9)』をご参照下さい】

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