第74章 エ・クレア助手の事件簿(6)
はい、回想入りまーす。
~~~~~容疑者2 工事現場で働く中年男性の発言~~~~~
「ダイヤモンド落とすなんて不用心だな。どうせ、大人の真似して指にはめてたものの、子供の指には大きすぎて、指からスポーンと抜けちまったんだろ。警察には届けられてないのか?」
「まさにここだよ。エ・クレア君は『ダイヤモンド』としか言ってないのに、この男性は“指から抜けた”などと発言してる。この男性はそのダイヤモンドが指輪であるということを知っていたんだよ。これは現物を見た犯人でないと不可能な発言だ。・・・よって!今回の落し物猫ババ事件の犯人は、この中年男性で決まりなのだよ!」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・おーい、エ・クレア君?スフレ君?」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「エ・クレアさん」
「何かニャ、スフレ」
「ダイヤモンドって・・・指輪だったんっすか?」
「・・・・・・わからニャい」
「わからない?!」
「依頼人の女の子から聞いてないんっすか?」
「面目ニャい」
「探偵の猫ちゃーーん」
通りの向こうから、エ・クレア助手を見つけたホタルちゃんが手を振りながら走って来ました。
「ホタルちゃん、ちょうどいいところにニャ!」
「あれが依頼人の女の子っすか?」
「猫ちゃん・・・ママのダイヤモンド・・・見つけてくれた?」
ホタルちゃんは目に涙を浮かべています。
「その事だけどニャ、ほたるちゃん。ダイヤモンドはどんな形をしてるのかニャ?」
「・・・?」
「指輪かニャ?ペンダントかニャ?」
「・・・・うーんとね、白くてね、ちょっと透き通っててね。このくらいの大きさ」
ホタルちゃんは指で丸を作って大きさを表します。
「指輪の大きさかニャ?」
「違う。指輪じゃないの。ダイヤモンドなの」
「ダイヤモンドの指輪じゃニャいの?」
「指輪じゃないの。何も付いてないの。ゴロゴロしてるの」
「え?まさかの裸石?・・・だとすると、結構大きいっすね。直径2センチくらいあるっすよ」
「何カラットあるのだろうかニャ・・」
「そ、そ、それって・・・“億”の世界なんじゃ・・」
「ニャニャニャーー!!」
慌てふためくスフレさん。
エ・クレア助手も急いで仲間の猫たちに、今の話を通訳します。
タルト所長はスマホ通話状態のまま放置されています。
ホタルちゃんは疲れてしまったのか、肩からたすき掛けにぶら下げていた水筒を開けて、中の飲み物を飲もうとします。
コップ代わりの水筒の蓋に、液体を注ぐホタルちゃんですが、エ・クレア助手はその液体から放たれる香りにいち早く反応します。
「ニャ?!ホタルちゃん?!その飲み物はどうしたのニャ?!」
ホタルちゃんはきょとんとした顔でその質問に答えます。
「おうちで作った梅ジュース。ママが作ったんだよ。お台所のテーブルの上にあったから、水筒に入れて持ってきたの。それで、ダイヤモンドも置いてあったから、ちょっとだけ借りて来たんだけど・・・」
ホタルちゃんは失くし物の事を思い出して、またも泣き顔になっています。
「それ、ジュースじゃないのニャ!飲んじゃダメなのニャ!!」
「ん?・・あ、ホタルちゃん、ちょっとそれお姉さんに貸して・・・ぐびぐびぐび・・・!!!こ、これは・・・梅酒!!」
「さっきアルコールの匂いがしたのニャ」
「危ない所だったっすね・・ぐびぐび・・あ、もったいないから残りはお姉さんが飲んじゃうね」
スフレさんはホタルちゃんの肩から水筒を引き上げて、自身の腕に抱え込んで酒盛りをはじめてしまいました。
「・・・・ニャニャッ!!もしかして!!」
エ・クレア助手が、何かを思いついたように声を上げます。
「テーブルの上には梅酒とダイヤモンド・・・ママの手作り梅酒・・・白くて、ちょっと透き通って・・・ニャッ!ニャニャッ!!・・・この事件・・・解けたのニャッ!!!」
「おおぅ?!」
「ホタルちゃんが家から持ち出して失くしたものは・・・・・」
「失くしたものは?!」
ごくっ
エ・クレア助手の次の言葉を待つスフレさんは、緊張して唾を飲みこみます。
・・・と思いましたが、飲みこんだのは梅酒でした。
「ニャニャニャ ニャニャニャニャニャーニャーーーーン!!」
「何故ここだけネコ語っっ?!」
「嘘~?!(ネコ語)」
「そんな馬鹿な!(ネコ語)」
「まさか!!!(ネコ語)」
3匹の猫達には理解できたようです。
「エ・クレアさん、もう一度、人間語でプリーズ!!」
スフレさんは梅酒を口に運ぶ手を止めて、エ・クレア助手に催促します。
「・・・・ホタルちゃんが家から持ち出して失くしたものは・・・氷砂糖ニャ!!」
「なんですとーーー?!」
「これは最初から猫ババ事件なんかじゃなかったのニャ。ただの落し物事件だったのニャ!」
「ホタルちゃんは、お母さんがキッチンのテーブルの上に放置していた、梅酒を作った残りの氷砂糖をダイヤモンドだと思って家から持ち出して、その途中で落としちゃった、というわけっすね・・・でも、そしたら結局、その落とした氷砂糖はどこに行っちゃったんっすか?探索でそれらしきものは見つからなかったんですよね?」
「その答えは、最初からちゃんと示されていたのニャ。答えをくれたのは・・・キリタくんニャ!」
エ・クレア助手は、3にゃんズのキリタくんを指さします。
3匹とも、先程からの人間とおしゃべりにゃんこの人間語での会話はほとんど理解できていませんでしたが、自分の名前を呼ばれ、そして指をさされたキリタくんは、その場にいる全員からの注目を受けてドギマギしています。
「え?何?何?」
エ・クレア助手は最後の謎解きを進めます。
「オレっちとキリタくんが今日ばったり出くわした時の世間話の中にその答えが示されていたのニャ。もう一度、回想シーン入るのニャ。天の声さん、よろしくなのニャ!」
OK、再びかしこまりー。
我等の前に立ち塞がりし、全ての愚かなる物忘れに、我の力もて、等しく滅びを与えんことを!
我が前に統べよ!メモリーーーーーリメンバーーーー!!!
はい、回想入りまーす。
~~~~~キリタ氏 町内水たまり巡りのお話~~~~~
「町内の、どの水場の水が一番美味しいかを調査するのさ。ちなみに2丁目の魚屋の裏の水洗い場に溜まってた水は魚の出汁がきいてて旨かったぜ。あと、そこの路地裏の側溝の水はちょっと酸っぱかったな。逆に3丁目の公民館横にあった水たまりの水は甘かったし、5丁目の香河さん家の犬の水入れの水は・・・あれは飲めたもんじゃねーな」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「ああっ!!そういえばこんな事言ったような!!」
「こんな会話が繰り広げられていたんっすね」
ちなみに回想シーンは、”天の声”またの名を”地の文さん”権限により、人間・動物、双方において理解できる『超言語』でお送りしております。
「そうなのニャ。3丁目の公民館横にあった水たまりの水は甘かった・・・つまり、氷砂糖は・・・水たまりに落ちて溶けてしまったのニャ!!」
「なんとーーー!!!」
「ニャーニャニャニャ。ニャンニャーニャニャニャーニャンニャンニャニャニニャッニャニャニャニャニャニャニャニャニャニャニャニャニャッニャ・・・ニャニャニャ、ニャーニャニャニャーニャ・・・ニャニャニャニャニャニャニャニャニャニャニャニャニャニャッニャニャニャ!!(エ・クレア助手、前言をネコ語で繰り返し中)」
「だから甘かったのか!」
「そうだったんだね~!」
「道理でどこ探しても見つからなかったわけだ!」
~~~~
「・・・ホタルちゃん、大丈夫ニャよ。おうちに帰って、ママにちゃんとお話しするのニャ」
「テーブルの上の物を勝手に持って行っちゃってごめんなさい、ってね。あ、あと、梅酒美味しかったですって伝えてね」
「・・・ママ・・・許してくれるかな」
「もちろんニャ。さあ、もう泣かないで。おうちでママが待っているのニャ」
「うん。ありがと、猫探偵さん。あと、猫ちゃん達とお姉さんも」
ホタルちゃんは3匹の猫達を撫で、スフレさんから水筒を返してもらって、何度も振り返り、手を振りながら帰っていきました。
「ニャンだか今日はバタバタした休日だったニャ。でも、大きな事件じゃなくてよかったニャ」
「そうっすね。お友達もご苦労様でしたっす」
「ニャ~ン」
「ミャー」
「シャーシャー!」
「・・1匹威嚇してるのがいるんですが、私何かしたっすかね?」
「初めてのノラ人間に緊張してるのニャ。気にするニャ」
「おおーーーい!おおおーーーーい!!」
「うん?何か聞こえるっすか?」
「スフレのスマホから聞こえてくるのニャ」
「あ、スマホ、腰ポケットに入れて忘れてたっす。何の音だろ?この前みたいに、また故障したのかな?」
「いニャ、この前は料金滞納で止められてただけなのニャ」
「・・・ま、いっか。ほっとこ」
「それじゃあ、みんな。今日は協力ありがとニャン。またニャン」
「またね~」
「じゃーなー」
「おつー」
こうして無事今回の事件を解決し、4匹と1人はそれぞれの帰途につくのでした。
めでたしめでたし
~~~~月末 RR探偵事務所 タルト所長のデスク~~~~
「%×$☆♭#▲!今月のスマホ通話量が!!!!」
最後までお読みいただきありがとうございました!




