第73章 エ・クレア助手の事件簿(5)
最後の犯人候補である野良犬は、よく見かける場所があると言うミーちゃんの案内で、近くの和食店横の路地裏へと探しにやって来ました。
4匹は、路地裏に面している和食店の勝手口脇に置いてあるゴミ箱に首を突っ込んで、残飯を拝借している野良犬を見つけます。
「あ!あの犬だよ~」
「ちょっと話を聞いてくるニャ」
エ・クレア助手は野良犬に近づきます。
「すみませんー。ちょっとお話いいですかニャ?」
「バウバウ」
「さっき、3丁目の公民館前を通りましたかニャ?」
「ワンワン」
「ダイヤモンド、拾わなかったですかニャ?」
「ワオーン」
「・・・・だめニャ。さっぱりわからんニャ」
「クゥーン」
ネコ語と人間語のバイリンガル、優秀なエ・クレア助手も、さすがに犬語は理解できないようです。
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「さて、これで全員に話を・・・一応聞いたわけニャけど・・」
「誰が犯人か!いよいよ推理だね~」
「探偵の腕の見せ所だな」
「それで、わかったのか?エ・クレア」
「うニャー・・・そうだニャア、最後の野良犬は多分シロだニャ」
「え~?あの犬、シロって名前だったの~?」
「そうじゃねえよ」
「犯人ではない、って事だろ」
「犬にダイヤモンドの価値は分からないし、食べ物と間違えて飲み込んだって事もさすがにニャいと思う」
「そうだよね~」
「ダイヤが生ゴミの中に紛れてたとかいうならまだしも、単独で落ちてる無機物を食ったりしないだろ」
「無味無臭だしな」
「怪しいのはやっぱり最初の若者かニャ。ひと通り探しては見たけど、隠そうと思えばどこにでも隠せるのニャ」
「う~ん・・例えば?」
「屋根裏とか床下とか」
「でもなぁ・・誰かが家に訪ねてくるなんて予想もしてなかっただろうから、そんな大がかりな場所には隠さないと思うけどな」
「そうだニャ。だから、ピンポンが鳴ってすぐに隠せる場所・・・」
「みなさんお揃いでネコ捜査会議っすか?」
「ニャニャッ?!?!」
「やっほー。クールビューティー、RR探偵事務所の紅一点、有能探偵秘書兼助手の青山スフレさんが助っ人に来たっすよー」
エ・クレア助手たち4匹の背後から突然、会話に割り込んできたのはご存知、RR探偵事務所のおしかけ探偵助手アルバイト、青山スフレさんです。
「いや~。推しかけてないで、がっつり推してくれちゃっていいんですよ~。照れるな~」
「さあさあ、ズンダくん、キリタくん、ミーちゃん。場所を変えて推理の続きニャ」
「あ~、この女の人、先週、この町のスーパーの特売に前の晩から1人で並んでいるのを見たことある~」
「俺も先々週、堤防に撒かれていた豆を鳩と奪い合ってついばんでいるところを見たぞ」
「エ・クレアの知り合いか?」
「さあ、知らないのニャ。関わっちゃいけないのニャ。早く他の所に行くのニャ」
エ・クレア助手は3匹の仲間を連れて、そそくさとその場を後にしようとします。
「待ってー。なんで無視するんっすかー?!」
エ・クレア助手は仕方なくスフレさんの相手をします。
「ダイヤモンド紛失事件については所長から聞いたっすよ。で、私も捜索に加わろうと思って来たんです。詳しく教えて下さい」
エ・クレア助手は仕方なくスフレさんにここまでの顛末を話します。
「なるほろ・・・ということは、これはどうやら遺失物横領事件のようっすね」
「そうなのニャ。・・てか、スフレにしては意外と難しい言葉を知っているのニャね」
「・・・あ、こちらは猫仲間のみなさんかな?こんにちはー。みんな可愛いねー。私はキュートでクレバーなピチピチ女子大生モデル探偵助手の青山スフレ。スフレちゃんって呼んでねー・・・まあ、呼ばれてもネコ語わかんないっすけどねー」
「中古でクレイジーな探検助手(ネコ語)」
「アポ山ススレ(ネコ語)」
「スプレ~ちゃん(ネコ語)」
「んーー。やっぱりネコ語は分かんないなー。エ・クレアさん、通訳して下さいよ」
「・・・・・オレっちも隣町のネコ語は良くわからないのニャ」
「ふーん。方言みたいな感じっすかね。まあ、それはそうと、事件の事ですよね。今回の事件のあらましはだいたいわかったっす。エ・クレアさんの話によると・・・ふむふむ・・・ほぅほぅ・・・ピコーーーーン☆」
「・・・・また出たニャ」
「今回は、かんっっっぜんにひらめいちゃいましたよー。やっぱりエ・クレアさんの見立て通り、犯人は島値青年っすよ!」
「して、ダイヤの行方はニャ?」
「ヒントはベランダっす」
「ベランダ・・・ニャ?」
「ベランダの、とある場所にダイヤモンドは隠されているのです!」
「とある場所と言っても、洗濯機や洗濯物の中もチェックしたのニャ」
「ノンノン。そうではありません。ダイヤの隠し場所は・・・チューリップの花弁の中です!!」
「ニャヌーーーーン!!」
「簡単にポンと上から落とし込むだけで隠せますからね。そう。チューリップの花の中に、ダイヤモンドは隠されているのです!」
「・・・・・・」
「どうっすか?」
「・・・すまニャイ・・・」
「何がですか?」
「言い忘れていたが、チューリップはまだ緑の固いつぼみで、開いて中に何かを入れられるような状態ではなかったのニャ・・・」
「がびーーーん」
「驚き方が古いのニャ」
「てか、じゃあなんでさっき『ニャヌーーーーン!!』なんて言ったんすか?」
「いニャー。ついノリで」
ピロピロォー ピロピロォー
スフレさんのスマホが鳴りました。
タルト所長からの着信です。
「もしもしっす」
「あ、スフレ君。調査の方はどうだい?ダイヤ、見つかったかい?なんか、エ・クレア君のスマホはつながらないんだよねー。電波悪いのかな?」
「ああ、それがですねー。どうやら紛失事件じゃなくて、占有離脱物横領事件のようですよ」
「・・・君、存外難しい言葉を知っているんだね」
スフレさんはタルト所長に、先程エ・クレア助手から聞いた話を伝えました。
「ふんふん。なるほどね・・・・ふっ。やはり君たちだけでは荷が重かったようだね。今の話だけで、僕はこの事件の真相に気付いたよ。さあ、スフレ君。スピーカー通話に切り替えてくれるかな。謎解きの始まりだよ」
「はいはーーーい。ぽちっとな」
スフレさんのスマホから、タルト所長の声がスピーカーで流れてきます。
「いいかい。我々は探偵だ。探偵は事件を調査するのが仕事だ。今回は消えたダイヤモンドの行方を追っている」
「そうっすね」
「そりゃそうニャ」
「エ・クレア君はかなり徹底的に容疑者の家宅や持ち物を探したようだが・・・ではスフレ君。同じく事件を追う警察と、我々探偵とではどこが違うかな?」
「はい!警察官には制服があります!」
「・・・・うーん。刑事も基本私服勤務だけどね。・・って、そうじゃなくて」
「はい!警察官は公務員なので安定した収入がありますが、我々は先月の依頼がゼロだったので、今月の電気代・水道代・おやつ代の支払いが危うい状態であります、所長!!」
「・・・う・・うん・・そうなんだけどね・・・その通りなんだけどね・・・ぐずぐず」
「スフレ!タルト所長を泣かせるんじゃニャい!!」
「てへぺろ☆」
「・・・こほん・・・スフレ君、いいかい。人海戦術でただ物理的に捜索するだけでは、警察と同じなんだよ。探偵は“心理的”に調査するんだ」
「心理的・・・っすか」
「・・・警察の方々に微妙に失礼な気がするのニャ」
「今回の事件では、容疑者の発言に注目するんだよ。工事現場で働いている中年男性のセリフを思い出してみるんだ」
はいはいはい!久しぶりに”天の声”またの名を”地の文さん”が持てる力、『重要証言ピンポイント再生能力』、発動しますよー!
我等の前に立ち塞がりし、全ての愚かなる物忘れに、我の力もて、等しく滅びを与えんことを!
我が前に統べよ!メモリーーーーーリメンバーーーー!!!




