第72章 エ・クレア助手の事件簿(4)
ピーンポーン
ズンダくんの案内で古アパートの島値さん宅に到着し、チャイムを鳴らします。
「はいはい」
ガチャッ
中から若い男性が出てきました。
防犯カメラに映っていた男性で間違いありません。
「うん?猫?」
男性は、ドアの前に並ぶ4匹の猫を見て驚いた表情を浮かべます。
「こんにちはニャ」
「え?おしゃべりにゃんこ?!」
「わ゛るい子はゐニェがー」
「は?」
「にゃまはげだニャー。泣ぐ子はゐニェがー」
「にゃまはげ?!」
「というわけで、家に入らせてもらうのニャ」
「おじゃましま~す(ネコ語)」
「邪魔するぜ(ネコ語)」
「失礼しやーす(ネコ語)」
おしゃべりにゃんこを先頭に、ニャーニャー言いながら3匹の猫がぞろぞろと家の中に入っていきますが、あっけにとられた男性は、ただただドアを開けて立ったまま、その様子を呆然と眺める事しかできません。
「ニャー。悪事しニェがー。泣がニェがー。にゃまはげ様が来たニャー」
エ・クレア助手はどこで調達したのか、何やら緑の野菜のようなものを振りかざしています。
「・・・あの・・にゃまはげ?さん、その手に持っているものは?」
「にゃまはげと言ったら持っているものは決まっているでしょうニャ」
「え・・ええと・・にゃまはげ?はよくわかりませんが、なまはげなら、出刃包丁とか鉈とかですか?」
「その通りですニャ」
「さっき~そこのお茶屋さんで貰ったんだよね~(ネコ語)」
「加工前の、生の物をエ・クレアが譲ってもらってたな(ネコ語)」
「鉈豆(ネコ語)」
「?????」
猫3匹の言葉は、人間のお兄さんには理解できません。
頭上にクエスチョンマークが飛び交うこの男性を尻目に、猫探偵団は家探しをはじめます。
「もしこの人が犯人なら、どこかに隠しているはずニャ。ダイヤモンドを手に入れてからそんなに時間は経ってないから、まだ換金はしてないはずニャ。隅々まで探すのニャ」
エ・クレア助手は、ネコ語で3匹の仲間に指示を出します。
男性の一人暮らしの部屋は狭く、物もほとんど置いていません。
「わ゛るい子はゐねがー ここかー それともあっちかニャー」
どったんばったん
猫達は総出でそこらじゅうを捜索します。
ワンルームの部屋には、中央にちゃぶ台があり、古びた薄い座布団が1枚敷いてあります。
ちゃぶ台の上には袋の開いた食べかけのポテチとビーフジャーキーが放置してあり、その横に何かを飲んだ後のマグカップがあります。中身はすっかり飲んでしまって空の状態です。
壁際には万年床の布団が敷いてあり、反対側の壁際には小さいテレビと、同じく小さなカラーボックス。
カラーボックスに並んでいるのは、漫画本が十数冊とDVD、あとは小物が少々です。
ベランダには、チューリップの植えられたプランターと洗濯機、物干し竿にはTシャツと下着や靴下が干してあります。
トイレの中には、掃除用のブラシと洗剤、予備のトイレットペーパーくらいしかありません。
浴室もシャンプーなどのボトル類だけです。
「・・・・うーーん。ダイヤはニャいか(ネコ語)モグモグ」
「座布団や万年床の下も、ポテチの袋の中も見たけど、見当たらないね~(ネコ語)モグモグ」
「カラーボックスの小物も見てみたけどハズレだぜ(ネコ語)モグモグ」
「洗濯機の中とかシャンプーのボトルの中まで調べたが・・・収穫ゼロ(ネコ語)モグモグ」
「あの・・・にゃまはげ?さん・・?・・・あの・・これは一体・・」
家主の青年は、もうどうしていいのかさっぱりです。
「ほんニャら、元気にしろニャー。へばニャー」
「へばニャー(ネコ語)」
「いい子にしろニャー(ネコ語)」
「邪魔したニャー(ネコ語)」
「???????」
すたこらさっさーーー
バタン(ドアが閉まる音)
「・・・・今のは一体、何だったんだろう・・・・ああっ!ビーフジャーキーが全部なくなってる!!」
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「う~ん。島値さん、怪しい点は無かったね~」
「まだわからないのニャ。とりあえず、次の容疑者、中年男性の所に行ってみるのニャ」
「ああ、おっさんの働いてる工事現場ならこっちだぞ」
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キリタくんの案内で、町内の道路工事の現場へとやって来ました。
道路に敷いたアスファルトをローラーで固めています。
ちょうど作業が一段落ついたようで、ローラー車から1人の男性が降りてきました。
あの防犯カメラに映っていた中年男性です。
「こんニャちはー」
エ・クレア助手が3匹の猫を連れて、男性に声をかけます。
「うん?何だ?」
男性はヘルメットを持ち上げながら、4匹の方を振り返ります。
「オレっちは、ネコネコ小学校のニィ年ニャニャ組の担任の先生なのニャ」
「は?」
「今日は『工事現場のお仕事を勉強しよう』という社会見学の引率をしてるのニャ」
「社会見学だって?」
「そうニャ。こちらがうちの生徒たちニャ」
「ニャ~ン」
「ミャー」
「シャーシャー!」
「1匹威嚇してるのがいるが・・」
「初めての社会見学で緊張してるのニャ。お気にニャさらず。では早速ですが、工事現場のお仕事はどんなのですかニャ?」
「・・・あ、ああ・・仕事・・。一言でいうのは難しいんだが・・」
「ですよねー。では、仕事中、休憩はとれるんですかニャ?」
「そりゃまあ、昼休みとか。他の仕事と同じで・・」
「今日の休憩の時はどんな風に過ごしたんですかニャ?」
「今日は・・コンビニに弁当を買いに行ったな」
「公民館の前を通ったかニャ?」
「・・・まあ、行きに通ったが・・・帰りは別の道から帰って・・・って、これ、何の質問だ?」
「公民館の前で、何か変わったことは無かったかニャ?」
「は?変わった事?何だ、そりゃ」
「何かを見つけたとか拾ったとかニャ」
「何の話だ?」
「ズバリ、ダイヤモンドを拾ったりしてませんかニャ?」
「はあ?ダイヤモンド?何でそんな物が道端に落ちてるんだよ」
「落とした女の子がいるのニャ」
「ダイヤモンド落とすなんて不用心だな。どうせ、大人の真似して指にはめてたものの、子供の指には大きすぎて、指からスポーンと抜けちまったんだろ。警察には届けられてないのか?」
「届いてなかったのニャ」
「で、それを俺が拾ってくすねたとかいうつもりか?」
「まさかニャ。拾って預かってくれているのではニャイかと思いまして」
「知らん。さあさあ、仕事の邪魔だ。帰れ」
「ニャ~ン」
「ニャニャー」
「シャシャー」
3匹が一斉に男性にじゃれ付きます。
「な、な、なんだ?!ちょ、だから1匹ひっかいてるやつがいるって!」
「いニャはニャ、人懐っこい生徒たちで。はははーニャ」
3匹はじゃれ付きながら、男性の作業着のポケットを探ります。
「おい!何してる!離れろって!」
「いニャはニャ、親切な作業員さんで良かったですニャ。はははーニャ」
ぽいぽいぽいっ
3匹はひっぺがされました。
「ではでは、ご協力ありがとうございました。さあ、みんな、学校に帰りますニャ」
「ニャ~ン」
「ミャー」
「シャーシャー!」
「二度と来るなーーー!!!」
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「ポケットの中には何も入ってなかったぞ」
「胸ポケットもズボンのポケットも空だったよ~」
「ヤツは犯人じゃないのか?」
「いニャ、まだわからない。あとでまとめて考えようニャ」




