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第66章 そして誰もいなくならない Day4(12)

「あなたは・・・・・黄島刑事!!」


被っていた黒いキャップをはずし、バツが悪そうに3人の前に顔を晒したのは、黄島キンツバその人でした。

黄島キンツバ28歳。現役刑事であり、同じく現役刑事の櫃島チャプチェとは同僚の関係(Wアイランドの片割れ)であり、タルト所長の大学時代の先輩でもあります。


「黄島先輩・・・?どうしてここに?」


タルト所長が困惑気味に、見知った仲の犯人候補に問いかけます。


「・・・・櫃島を追って来たんだよ。あいつ、また嘘の申請で休みを取りやがって」

「櫃島さんのお父さんの一人息子が危篤だとかなんとかっていう・・」


「ああ。大事な一人息子が大変なことになってご尊父もさぞかし辛いだろうと、捜査課の面々が櫃島にお見舞いでも渡そうかという話になったんだが、よくよく考えてみたら、櫃島の父親の一人息子ってことは櫃島本人じゃねーか!・・・と、課長が気づいたんだ。ちょうど、探偵からリストランテ・リストラの食い逃げ事件犯についてのタレコミ電話をもらって、所轄の警察署に連絡した直後の事だったな」

「もっと早く気づけよ」

「ジャペン国家の治安維持をこの人たちに任せて大丈夫なのであろうか・・・」

「ウニャ~~」


「で、課長が怒り心頭だったわけよ。とにかく、どうせまた旅に出ているんだから、その旅行先を突き止めて櫃島を連れ戻して来いって、えらい剣幕で、櫃島の家を捜査課総出でガサ入れしたら、コメディアン島への旅行計画書(旅のしおり)が出てきたっつーことだ」

「それで、この島に来たんですね」

「捜査課総出でやることかニャァ?」

「どうやってこの島に渡ったんです?先輩」


「ドケチな課長が、『出張費は出さん。Wアイランドの片割れの後始末として自腹で行ってこい』などとぬかしやがるから、ヒッチハイクでここまで来た」

「ヒッチハイク?」


「ああ。陸路は長距離トラックに乗せてもらった」

「海路は?」


「小さな漁船をヒッチハイクして、漁場へ行く途中のこの島で降ろしてもらった」

「なるほど」


「で、この島で櫃島を発見した。その場でとっ捕まえようと思ったが、奴には不正休暇申請以外にも嫌疑がかかっている案件があってな」

「え?何です?」


「警察で保管していた白い粉が紛失した」

「なんですって?!」

「先輩!それってまさか!!」

「ニャンか、前にも同じ事件があったような気がするニャ!一体、何回白い粉盗まれれば気が済むのニャ!!」


「刑事課でお金を出し合って買って給湯室に置いていた小麦粉だったのに!」

「小麦粉」

「小麦粉ニャ」

「先輩!それってまさか!!・・・・お茶にするために?」


「あん?お茶だと?小麦粉がお茶になるわけねーだろ。何言ってんだ」

「そりゃそうだ」

「いえいえ、なるっすよ」

RR探偵事務所(うち)ではニャ」


「女性警察官がたまにクッキーを作るんだよ」

「警察署内で?」

「給湯室で?」

「オーブンあるのかニャ?」


「これが意外と署内で評判が良くってな。『POLITRYポリトリー MA’M(マアム)』っつー名前で売り出して小遣い稼ぎをしてる。署内の売店限定販売だが、売店は一般人も入れるエリア内にあるからお前らでも買えるぞ」

「ポリトリーマアム」

「ポリスだからかニャ?」

「いいこと聞いちゃいました!今度買いに行くっすよ!」


「で、その白い粉(小麦粉)紛失事件にも櫃島が関わっているのではないかと疑いが掛かっていて、その捜査も兼ねて櫃島を追って俺はこの島にやって来た。島に到着してすぐにヤツを見つけたが、もしかするとヤツは盗んだ白い粉(小麦粉)を、ツアーを隠れ蓑にして売りさばく気かもしれない。あれは相当な末端価格(市場小売価格)の高級品だからな。これはすぐにとっ捕まえるより、少し泳がせてやろうと思い、島に滞在してヤツの行動を人形回収しながら張ってたんだが、なかなか尻尾を出さない。ヤツが自室を出た隙に入り込んで、盗んだ白い粉(小麦粉)を探してみたんだが、どこにも見当たらない。もう売りさばいた後なのか、それともヤツが肌身離さず所持しているのか・・・そうこうしているうちにツアー日程も終了間際。白い粉(小麦粉)については諦めて、とりあえずヤツを不正休暇申請の罪でしょっぴいてやろうかと思案していたところお前らに見つかって思わず逃げちまった・・・とこういうわけだ」

「ちょっと待ってちょっと待ってちょっと待ってちょっと待ってちょっと待って」

「なんか今、私達の事件の核心に迫る事柄がサラッと・・・本当にサラッと聞こえたような気がするっす」

「オレっち達の疑問に長台詞で丁寧に答えてくれたのに本当に申し訳ニャいのですが、その核心発言以降の部分はほとんど頭に入ってこなかったニャ」


「あ?何の話だ」

「え・・・と、島に滞在して櫃島刑事の行動を・・・何をしながら張っていたと?」


「人形回収だが?」

「え・・・と、『人形回収』というのは・・・何か警察の隠語とかいう事は・・」


「あるわけないだろ。普通に人形を取っていっただけだ。・・ああ、1か所に置いてあった人形を1つずつ持って行っただけだから『回収』とは言わんのか」

「え・・・と、それはまあ、どうでもいいんですが・・・その人形はどこにあったどんな人形でしょうか?」


「食堂の隅にあった木製の妙ちくりんなおどけたおっさんの人形だ」

「まごうことなきコメディアン人形・・・」

「コメディアン人形っすね」

「ニャンで人形を持って行ったりしたのニャ?!」


「いや、当然だろ。あの”声”に10体の人形、10人のゲスト出演者」

「”声”も聞いてたんですね、先輩」

「ゲスト出演者って言わない」

「ウニャ~」


「その声を聞いて俺はピンときたわけよ。これはもしかしなくても、そして誰も・・・」

「いなくなってないです!いなくなってないですから!・・・・そういえば先輩、不類の地球ファンでしたね」

「あの小説を知ってたってわけっすね」

「ウニャ~」


「第1の事件が起こっても、誰も人形を減らそうとしないんだ。俺がやるしかないだろ」

「・・・そ・・そう・・ですかねぇ・・?」


タルト所長がこの強引な論理に賛同すべきか混迷する中、またもスフレさんが何かに気づいたようです。


「あっ!っていうか黄島刑事!初日のほぼ初っ端からこの島にいたんですよね?!どこに隠れてたんですかっ?!私達、ずいぶん探したんですよ?!」

「砂浜を掘り返してまでね」

「邸内はタルト所長とオレっちが捜索したのニャ」


「普通に邸内で寝泊まりしてたが?」

「WHAT?!」

「1階の客間や図書室は隅から隅まで探したニャよ!隠し部屋とかもなかったニャ!」


「いや、使ったのは2階だ」

「え?2階?先輩、2階にいたんですか?」

「2階ニャったのか・・・」


「ふ・・・・ふふふふふふ・・・ふはははははは!!!」


突然、魔王のような笑い声をあげたのはもちろんスフレさんです。


「語るに落ちましたね、黄島刑事!!あなたは嘘をついている!!1つの嘘はまた別の嘘を産むのです!!そう!あなたが2階で寝泊まりしていたなんてありえない!!しかし、どこで寝泊まりしていたかに関して嘘をつく必要性が見当たらない!・・・・ということはつまり、この嘘は、もっと大きな嘘を隠すために産み出された嘘なのです!!そう!あなたの言っていることは全てが嘘なのです!!櫃島刑事を追ってこの島に来たという事も、初日からこの島にいたという事も、コメディアン人形を次々と減らしていったという事も!!」

※前回の警察署内白い粉紛失事件は、『ノックスの十戒8』の章にチラッと登場しています。

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