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第64章 そして誰もいなくならない Day4(10)

「後谷さん!大丈夫ですか?!」

「マリネっちニャァァァァーーーー!!」


部屋に入り、タルト所長とエ・クレア助手が目にしたのは、ドアに背を向け部屋の中央に立っている後谷マリネの姿でした。


「・・・・後谷・・さん?」

「・・・マリネっちニャ?」


・・・・・・・・


「はい?」


後谷マリネは、タルト所長とエ・クレア助手が入ってきたドアの方をゆっくり振り向きました。


「探偵さんと猫ちゃん。そんなに慌ててどうされましたか?」


振り向いた彼女の首には・・・・


「う・・後谷さん・・・首元の”それ”は一体・・・」

「ま・・・マリネっちぃぃ・・・ニャア・・」


「はっっ!!!!!」


後谷マリネは自身の襟元を手で覆い隠し、ばつが悪そうに2人に背を向けます。


「いやいや。今更隠しても」

「バッチリ見ちゃったニャ・・・それ、タルト所長のネクタイニャね?」


後谷マリネの首にはしっかりと、赤地に白い猫の小柄がついたネクタイが締められています。

タルト所長は今回の旅にもスーツ着用で来ていましたので、もちろん替えのネクタイも持ってきています。

後谷マリネはどうやらクローゼットの中に吊るしていた、タルト所長のそのネクタイをちょっくら拝借してしまったようです。


「1人残ったコメディアンがネクタイで首をくくり・・・」

「後には誰もいなくなった・・・めでたしめでたし・・・ってめでたくないニャ!!」

「・・・・・てへぺろ☆」


・・・・・・・・・


「・・・・・・・」

「・・・・・・・」

「・・・・・・・」


「・・・・もう、何を言えばいいのかわからないのだが」

「何も言わなくていいニャ。これはこういうお話なのニャ」

「てへぺろ☆」


「・・・・ところで、スフレ君は?」

「あっ、忘れてたニャ」

「あそこで寝ていますよ」


後谷マリネはベッドを指さしました。

ベッドの上の布団が膨らんでいます。


ベリッ


タルト所長が布団をひっぺがしました。


くかーくかー


スフレさんは健やかに眠っています。


ベリッ


エ・クレア助手が面の皮をひっぺがしました。物理的に。


「ぎゃーーーー」


スフレさんは速やかに起き上がります。


「何するんっすか!人が気持ちよくお昼寝してるのに!」

「君こそ何してるんだ!後谷さんを頼むといっただろ!何故目を離してるの!」

「マリネっちの最後の”見立て”が遂行されちゃったのニャ!」


「ついに最後の惨劇が?!?!?!・・・・・て、ネクタイ首にくくり付けてるだけじゃないっすか」

「てへぺろ☆」


「・・・で、どういう経緯でこうなっちゃったの?」


タルト所長がスフレさんに問いかけます。


「・・・え、と・それは・・」

「あ、それは私から説明しますね」


後谷マリネが言葉を引き取ります。


「探偵さんたちが部屋を出た後、暇だったので、2人でホッカンをしようという事になったんですが、ここの椅子って背もたれ付きじゃないですか。だから仕方なくそこのベッドd」

「ちょっと待って、ちょっと待って!!!」


「はい?」

「今、聞きなれない単語が出てきたんですが?」

「ホッカン・・・ニャ?」


「あら?ホッカンをご存じない?」

「ご存じないです」

「北海道観光協会かニャ?」


「あっそうか!やだ、私ったら。ホッケーンと言った方が通りが良かったですわね。ごめんなさい」

「いやいやいや」

「謎が謎を呼んでるのニャ」


「メジャーなスポーツですよ?」

「スポーツの名前だったのか」

「まずはそこからなのニャ」


「いかにかっこよく椅子に座れるかを競う、実在する大真面目なスポーツらしいっすよ」

「・・・・そうなの?」

「そうですわ」

「ニャンでここでそれをやろうとしたのか・・・」


「ホッカーはパワーホッカーを使うんですけれど、ここにはそれに代わるものが無k」

「ちょっと待って、ちょっと待って!!!」

「もう少しkwskニャ」

ホッケーンの選手( ホッカー)は鼓や糸巻きのような形をしたスツール椅子(パワーホッカー)を使って跳んだり回したりといったアクロバティックな技を繰り出しながら、最後に決めポーズで着席するんす。でも、この部屋にはそういった類の椅子がなかったんっす」


「スフレ君が初めてまともな発言をしている・・・」

「コメディアン島のタタミかニャ・・・ブルブル」


「で、しょうがないから、私達でアレンジした新しいホッケーンをしようという事になって、『いかに華麗にベッドに潜り込み、そしていかにスピーディーに眠りにおちるか』を競うホッケーン睡眠スイミングver.を編みだしたのです」

「・・・アレンジしすぎじゃない?」


「それで、まずは私から挑戦したんっすよ」

「彼女の成績は、技術点が1254点。ベッドへの入射角度は良かったんですが、最後、布団の端がちょっとめくれてしまったんで惜しくも減点されてしまいました。入眠タイムは0.82秒でした」

「入眠タイムが、地球のワールドレコードを持つ野比選手のタイム0.93秒より好成績ニャ!!コズミックレコードニャ!!」

「・・・・なにがなんだか・・・ところで、窓からコメディアン人形が落ちてきたんですが、あれは?」


「ああ、それでしたら・・」

「それ、私かもしれないっす。眠っているとき、夢の中でバケモン捕まえようとしてて、モンスターボウルを思いっきり投げたんっすよ」

「モンスターボウル・・・」

「バケモンをゲットするために使うお椀型捕獲器ニャ。ステンレスボウル、プラスチックボウルなどなど沢山の種類があるのニャ。投げてバケモンにかぶせて捕獲する投てき方式や、紐をつけた棒で裏返したボウルを固定して地面に置いて捕獲する罠方式など、捕獲方法にも種類があるのニャ」


「私が使ったのはウッドボウルだったっす」

「確かにコメディアン人形は木彫りだね」

「夢うつつで、近くにあったコメディアン人形をつかんで投げちゃったというわけかニャ・・・」


たまたまベッド脇の窓が全開だったため、あわれ、コメディアン人形は階下へと消えていったようです。


「スフレ君。まったく君は毎度毎度、僕たちの想像を超える行動をとってくれるよね」

「いやぁ~照れるっすねぇ~」

「褒めてないニャ」


「まあ、でもこれで現代長唄は全部唄い終わりましたね。重大事件が起こらなくてよかったっす・・・・で、犯人はわかったんですか?」

「”声”のMDと現代長唄の額を用意した犯人は判明したよ」

「オーナーの習志野源兵衛(UNKNOWN)氏だったニャ」


「じゃあ、コメディアン人形を次々と失くしていったのもオーナーだったんすか?」

「いや、それは違う。習志野源兵衛はこの島には来ていない」

「別の犯人がいるのニャ」


「1階の2体のコメディアン人形をペイントボールマーカーで撃ったのは私です。・・・・すみません」

「あの窓辺にあったオレンジ色の人形はやはりあなたの仕業でしたか。後谷さん」


「その2体と、2階から落ちた1体。これら3体はマリネさんが関与したものだとして、その他の人形は誰が・・・人形自体が消えてしまってますもんね。どこに隠したんでしょう。外の砂浜に埋めたとかっすかね」

「いや。人形が8個になった後、君が砂浜を掘り返してるだろう。その時、僕たちは邸内を捜索している。その上キッチンは蜂蜜騒動の時に隈なく探ったからね」

「そうだったニャ」


「ということは、人形は今も犯人が所持している・・・」

「そう考える方が論理的だろうね」

「そうニャ。そうニャ」


「あの・・・一介の体育家庭教師が差し出がましいのですが・・・コメディアン人形は木製なので、燃やしてしまえばイチコロなのでは・・・」

「「「・・・・・・・・」」」


「さて!エ・クレア君、スフレ君。唄に沿ってコメディアン人形を次々と持ち去り、今もその手中に隠し持っている、この事件の最大の犯人を暴きに行こうではないか!!」

「イエッサーーーーっす!!」

「ファイトニャーーーン!!」


ええ。まあ、隠そうと思えば家具の裏とか隙間とか、どこにでも隠せると思いますけどね。

それは、まあ、その、大目にみていただけると幸いです。

そして、タルト所長が”この事件の最大の犯人”などとのたまっておりますが、今回その”この事件の最大の犯人”に対して≪読者への挑戦状≫はございません。

何故、ですって?それはその・・・大人の事情(伏線を引いていない)で?

しかし、初登場の人物を出してきて『実はこの未知の人物が犯人でしたー!』・・・なんてことはありませんので、よろしかったら犯人を予想(”推理”ではない)してみて下さいませ。

では、地の文さんでした☆

【登場人物おさらい】

赤岩タルト…RR探偵事務所所長 

エ・クレア…同事務所助手兼看板にゃんこ

青山スフレ…その他

根住ポトフ…元裁判員【第6の被害者】      

後谷マリネ…カテキョ【第10の被害者】

渡来ムサカ…元サバゲ―大尉【第9の被害者】  

宇鷺ミラネサ…八代村のタタミ【第5の被害者】

立見ケバブ…パリピ【第1の被害者】       

旨川スブラキ…歯科医【第8の被害者】

櫃島チャプチェ…Wアイランド【第7の被害者】  

去取ボルシチ…鍋将軍【第3の被害者】

乾ビリヤニ…スタッフ(夫)【第4の被害者】   

乾パエリア…スタッフ(妻)【第2の被害者】


バケモンは、ジャペンで流行のスマホゲームに出てくるキャラクターです。

詳しくは『そして誰もいなくならない Day4(7)』をご覧下さい。

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