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第63章 そして誰もいなくならない Day4(9)

「・・・・お騒がせしてすみません。ワカメがぶら下がっていたのでつい・・」

「ワカメがぶら下がっていたくらいで首をつってちゃ、命がいくつあっても足らないっすよ?」

「生ワカメが目の前にぶら下がっているシチュエーションがそうそうあるとも思えないが」

「淵戸内海沿岸地方では日常茶飯事なのニャ」


日常茶飯事ではありません。


「とりあえず、もうすぐ帰りの船が迎えに来る時間です。それまではこの部屋で過ごして下さい。少し睡眠をとってもいいでしょう」

「ワカメもフックも回収したっす。換気をして更にファブっておいたんで、磯の匂いももう消えてるので大丈夫です」

「・・・・はい・・・ありがとうございます」


「残された時間はもうあまりありませんが、僕はこの一連の事件の犯人を最後まで追おうと思います。エ・クレア君、一緒に来てくれたまえ。スフレ君は後谷さんについていてあげて」


タルト所長は部屋を出ていこうとします。


「え?犯人?そもそも犯人なんているんっすか?事件らしい事件も起きてないっすよね?」

「最初に言ったじゃないか。少なくとも、あの悪趣味な”声”のMDを用意したり、コメディアン人形を次々と減らしていった犯人は確かに存在するんだ」

「そうだったニャ!それが今回のお話最大の謎だったのニャ!」


「行こう、エ・クレア君。我々探偵の真の力を今こそ!そう、今こそ発揮する時だ!!」

「・・・今までの30章超は一体ニャンだったのであろうか・・・」


~~~~


2人が部屋を出ると、廊下の向こうから乾ビリヤニが歩いてこちらに向かってきているところでした。


「赤岩様。ちょうど良うございました。ご報告したいことがありまして」

「ああ、乾さん。割り箸の方は大丈夫でしたか?」


「はい。どうにかこうにか1本だけ綺麗にまっすぐ割れましたので、納得がいきましてございます。ご心配をおかけいたしました。やはり94均で購入するものではありませんね」

「あー。ですねー。94均はたまにそういう粗悪品に当たったりしますから」

「オレっちも94均で買った1000ピースのジグソーパズル、ペラッペラの薄さでしかも浅い切り目が入っているだけで、全部つながってたのニャ。箱を開けたらもう完成してたのニャ」


94均とは、ジャペン国で人気の量販店です。全商品税込み94イィエン均一価格でお財布に優しく、生活雑貨や食品など、ありとあらゆる商品を扱っていますが、たまに”はずれ”を引いてしまったりもします。

そしてそこそこの頻度で、同じものがスーパーにて85イィエンで売られていたりすることもあります。


「で、報告とは?」

「そうでございました。実は先程、PCを確認いたしましたところ、この島のオーナー様よりメールが来ておりまして」

「ニャニュッッ?!」


「こちらでございます」


乾ビリヤニはそのメールをプリントアウトしたものと思しき1枚のコピー用紙をタルト所長に手渡します。


【コメディアン島宿泊施設スタッフの皆さん

 例のMDですが、お客様の反応はどうでしたか?

 今回、地球で有名な小説を基にした、

 ちょっと洒落たディナーの演出を考えてみましたw

 全客室に飾った現代長唄の額や、コメディアンの壮年人形も

 結構いい味を出してると自負してますv(*^-^*)v

 今回は多忙にて、そちらに出向くことができませんが、

 もし今回の企画が好評ならば、次回のツアーは自分が直接島に出向いて、

 ミステリークイズ大会も開催してみようかと思ってます(*^▽^*)

 お客様へのアンケート結果、楽しみにしてます!

 ではでは(^.^)/”

 コメディアン島オーナー 習志野源兵衛】



「あの”声”のどこが『ちょっと洒落た』演出なんだ!!!」

「悪質極まりないニャ!!」

「・・・どのようにして全員の過去を調べたのでしょうか」


ひょっとすると習志野源兵衛(UNKNOWN)はこのお話内のどの探偵よりも優秀な調査員なのではないでしょうか。

乾ビリヤニは、まもなく全員のチェックアウト時刻が迫っているため、準備がありますので、と言って一足先に1階へ降りていきました。



「・・・・というかニャ、タルト所長?」

「うん?」


「今回のお話最大の謎が、あっさり解明しちゃったのニャ」

「!!!!!!」


「我々探偵の真の力が発揮されることなく、秒で解明されちゃったのニャ」

「!!!!!!」


「・・・・いや、ちょっと待てよ。・・・あの”声”の件はこれで片が付いたとして・・・コメディアン人形の方はどうなっているんだ?」

「コメディアン人形を減らしていった犯人の事かニャ?」


「そう。このメールには習志野源兵衛が多忙で、この島には来ていないことが明記されてるよね」

「そうニャ。だったらコメディアン人形を減らしたのは習志野源兵衛の仕業じゃないのニャ!」


「となるといったい誰が・・・」

「どの事件でも、いつの間にか人形が減っていたのニャ。はっきりした時刻もわかってないし、アリバイから犯人を突き止めるのは無理なのニャ」


「ここに来て、オリジナルと同じ犯人だとか?」

「いニャ、さすがにそれはニャいでしょ。オリジナルの犯人ネタバレだけは絶対にしちゃいけないのニャ」


「うーーん。あの小説の犯人は、もう周知の事実だと思うんだけど」

「それでもダメなのニャ。それに、あの人にはそんなことする動機はないのニャ」


「それを言っちゃうと、全員に動機はないんだけどね」

「それにそれに、オレっち達以外のこの島にいる人物の中にはおそらく地球のあの小説を知っている人はいないのニャ。小説通りに人形を減らしていくという模倣ができるとは思えないのニャ」


「それもそうか。・・・だとすると・・・一体誰が?」

「ウニャ~~~~」


~~~~


2人は、とりあえず1階へと降りてきました。

食堂に入り、例のコメディアンの壮年人形が置かれていたテーブルを見てみましたが、初めに10体あった人形が1つも残っていないこと以外、特に変わったところもありません。

窓際には、後谷マリネに撃たれてペイント弾で汚れた人形が2体倒れています。


「・・・何故この2つの人形はこんな所でオレンジ色に染まっているんだ?」

「ニャんでだろう・・・」


2人は後谷マリネの食堂での奇行を目撃していませんので不思議に思うのも無理ありません。

窓や周辺の壁は、乾パエリアが掃除済みのようで、粗方綺麗に拭き取られています。

さすが仕事が早いです。


「・・・・犯人につながる証拠品も見当たらないな・・」


何も手掛かりが見つからず、窓を開け、迎えの船がもうすぐやってくるだろうと思われる海の方向を見ていたタルト所長ですが、その目の前を上から下に物影が通っていきました。


カコーーーーーーーン


「何か空から落ちてきた!」

「ニャンだ?!」


エ・クレア助手は窓から外に躍り出て、落下物の確認に向かいます。

タルト所長は走って玄関から回り、外へと急ぎます。


タッタッタ タッタッタ


「エ・クレア君!何だった?」


先に落下地点に到着していたエ・クレア助手に、後から追いついたタルト所長が問いかけます。


「タルト所長・・・これは・・コメディアン人形ニャ!!」


落ちていたのはまぎれもなくあの木彫りのコメディアン壮年人形です。


「どこから落ちてきた?!」


2人は建物の2階を見上げます。


「ここの真上は・・・僕らの部屋だ!」

「今はマリネっちとスフレがいるニャ」


「そういえば、廊下で後谷さんと出くわしたとき、彼女は手にコメディアン人形を持っていた!」

「ということは・・・まさか、マリネっちの身に何かあったんニャ!?」


~~~~


バタバタバタバタバタバタ(タルト所長の足音)

・・・・(無音)・・・・(エ・クレア助手(猫)の足音)


急いで2階の自室へと戻ります。

ドアを乱暴に開け、室内に向かって呼びかけます。


「後谷さん!!何かあったんですか?!」

「マリネっちニャァァァァーーーー!!」

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