第57章 そして誰もいなくならない Day4(3)
「探偵さん!!」
背後から聞こえてきた後谷マリネの声に3人が振り返ります。
渡来ムサカも一緒です。
「大変なんです。櫃島さんが!!」
「ああ。ええ、存じてますよ。またあの家具生物兵器の犠牲者が出てしまいました。・・・・恐ろしいことです」
タルト所長が冷静に答えます。
「え?どうしてご存じなんですの?!」
「・・・あ・・まあ、いろいろと大人の事情で・・・」
「それから、旨川殿が行方不明だ」
「夜中に建物の外に出たのを櫃島さんが見たそうで、外を探したのですが・・・どこにもいないんです」
「勝手口から再び邸内に入ったのかもしれない。中を探しましょう」
タルト所長の呼びかけに、エ・クレア助手、スフレさん、後谷マリネ、渡来ムサカは邸内の探索を始めようとしましたが・・・
うぐぐぐーーーー!!
食堂の方からうめき声が聞こえます。
「こっちっす!!」
今回もスフレさんがいち早く駆け出します。
他の4人も後に続きます。
「大丈夫ですか?!」
スフレさんを先頭に、5人が食堂に入るとそこには、着席して蜂蜜を貪っている宇鷺ミラネサと、床に倒れて喉を掻きむしっている旨川スブラキの姿がありました。
「・・・の・・・喉に・・・さ・・・刺さっ・・」
スフレさんが旨川スブラキの傍らにしゃがみこみ、無理矢理彼の口を広げます。
「あっ!!喉の奥の方に何か刺さってます!」
ズボッ
スフレさんは手を旨川スブラキの口の中に素早く突っ込み、彼の喉に刺さっているものを取り出そうとします。
「スフレ君は相変わらず素手に躊躇がないね」
「今回は人命救助だから立派な行為だニャンよ」
「・・・手首まで入ってますけど大丈夫でしょうか」
「うぐぐぐーーーー!!い・・・息が!!!!」
旨川スブラキがのたうち回ります。
「ちょっと我慢して下さい!今刺さった物、取ってますから!!」
スフレさんが旨川スブラキを押さえつけて更に喉の奥に手を突っ込みます。
「うぐぐぐーーーー!!」
「だ、大丈夫なんですかっ?!」
「人命救助です・・・・・たぶん」
「絵面的には明らかに人命救助とは逆に見えるが」
「大丈夫ニャ。ノックスの十戒その7『探偵自身が犯人であってはならない』がある限り、スフレが殺人犯になることはないのニャ」
スポーーーーン
取れました。
スフレさんの手の中には、黒っぽい干からびた肉片のようなものがあり、彼女はそれを一瞥し、
「・・・・これ、ニシンの燻製・・・・っすかね」
「・・・・ぐ・・・ぎ・・・」
旨川スブラキは少々喉と顎(スフレさんが無理矢理手を突っ込んだため)を傷め、声が出せなくなってはいますが、命に別状はないようです。
一安心ですね。
・・・・ということで、お聞きしましょう。
今回も代表してスフレさんが回答するという事でよろしいですね?
では、昨夜の読者への挑戦状その2”ニシン事件の犯人は誰か?”の答えをプリーズ。
「・・・・むむぅ・・・犯人は・・・」
はい。
「は・・・・犯人は・・・」
ええ。
「わかりません!!!」
潔い!
「スフレ君、探偵としてさすがに降参はまずいよ」
「・・・・いや、だって。伏線も引いてるんだか引いてないんだか曖昧だったし、乾パエリアさんが作ったNyogibo熊の例もあるから、残っている人物の中に犯人がいるとも限らないし。推理なんて無理っすよ」
「おい、青山スフレ。何の犯人を捜しているんだ」
渡来ムサカがスフレさんに声をかけます。
「大尉・・・あ、元大尉!」
「言い直さんでいい」
「はい、元大尉!『旨川スブラキさんにニシンを渡した犯人は誰か』・・・という問題であります!」
「なんだ?このニシンのスモークジャーキーを渡した犯人だと?・・・・旨川殿が自分で持って来たんじゃないのか?」
「いえ。これは事件であります。何者かがニシンを持ち込んだのであります」
「何故そう言い切れる」
「それがこのお話の理だからであります!」
「・・・何を言っているんだ?」
「元大尉はご存じないかもしれませんが、我々は決まったシナリオに沿って動かされているのであります」
「誰にだよ?!怖いわ!!」
「とにかく誰かがコメディアン島にニシンを持ち込んだのであります!そしてその犯人を我々探偵は推理しなくてはならないのであります!!敬礼!!」
「・・・ニシンのスモークジャーキーを持ってきた人物の特定がそんなに重要な事とも思えんが・・」
「それもこのお話の理であります!」
「まったく意味わからん」
「ちょっと待ったーーーーーーーーーっっ!!!!!」
「「?!?!?!」」
声をあげたのはタルト所長です。
「と・・・・渡来さん!!」
「どうした、赤岩殿」
「さっき・・・何とおっしゃいました?」
「あ?さっき?・・・『まったく意味わからん』」
「その前!その前です!」
タルト所長は勢い込んで渡来ムサカに問いかけます。
「あ?その前?・・・『ニシンのスモークジャーキーを持・・」
「それーーーーーーーっっ!!!」
「ん?なんっすか、所長・・・・ニシンのスモークジャ・・・ああーーーーっ!!」
どうやらスフレさんもお気づきのようですね。
「犯人、かんっっぜんにわかったっす!!犯人は・・・・・・
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お前だ!!エ・クレア!!」
「ニャヌーーーーーン!!」
「タメが長い!!」
「”ファイナルアンサー!”後より長いな」
「”男子マラソンはこの後すぐ!”後より長いですね」
「ジャーキーと言えばあなたしかいませんよ、エ・クレアさん」
「ウニャニャウニャニャ」
「ウニャウニャ言ってもダメです!おしゃべりにゃんこのくせして、都合の悪い時は猫語でごまかす!あなたの悪い癖です!」
「ぼ・・”僕の悪い癖”ニャァ・・」
ジョボジョボジョボ
「紅茶を高い所から淹れてごまかさない!眼鏡も外して!そのオールバックも早く直して!」
「ニャオーーーン」
「そういえば、エ・クレア君さっきから無口だったよね」
「探偵さんが・・・犯人ですの?」
「いいのか?探偵が犯人などというオチ・・」
「ダメっす。絶対ダメっす。ノックスの十戒に反してるっす!」
「違うのニャ!違うのニャ!・・・・確かにスモークジャーキーを持ってきたのはオレっちなのニャ」
「やっぱり!」
「違うのニャ、違うのニャ!・・・・でもニシンのスモークジャーキーは持ってきてないのニャ!」
「・・・・・本当っすか?」
「本当ニャ!ニシンは持ってきてないニャ!!」
「じゃあ、何なら持ってきてるの?」
「パッケージには『高級数の子スモークジャーキー』って書いてあったのニャ!」
「数の子?」
「そうニャ!数の子だからお高かったのニャ!」
「おいくら?」
「1袋50グラム入り2万5000イィエンだったニャ」
「高っ!!」
「ネットのお取り寄せで買ったのニャ!・・・ほら、これニャ!」
エ・クレアさんはスマホを取り出して、注文履歴をみんなに見せました。
「ほんとだ。『高級数の子スモークジャーキー』って書いて・・・・ん????」
「どうした?スフレ君」
「”数の子”と”スモーク”の間にめっっっっちゃ小さい文字で”の親”って書いてあるっす!!」
「・・・・・・・・」
「ということは・・・『高級数の子の親スモークジャーキー』?」
「ニシンスモークジャーキーじゃねえか!!」




