第50章 そして誰もいなくならない Day3(4)
さて、解決編です。
あ、その手の中に握り込んでいる石はポイして下さい。
大丈夫です。今回は大丈夫です・・・たぶん。
あ、ほら。スフレさんが容疑者を集めて推理披露を始めましたよ。
お手並み拝見といきましょう。ほら、ほら。
「さて、皆様にお集まりいただいたのは他でもありません」
スフレさんが話し始めます。
「蜂蜜の存在しないはずのこの島に、誰がこの凶器を持ち込んだのか。その犯人をお教えいたしましょう」
スフレさんは大広間の玄関側に立ち、左手を腰に当て、右手に持った虫眼鏡を前方に掲げながら演説を続けます。
彼女の正面には横1列に根住ポトフ、後谷マリネ、渡来ムサカ、櫃島チャプチェ、旨川スブラキ、赤岩タルト、エ・クレアが、スフレさんに向かい合った形で並んでいます。
「・・・あの、お2人はあちら側に立たなくていいんですか?」
旨川スブラキがスフレさんの方を指し示しながら、隣に立つタルト所長とエ・クレア助手に話しかけます。
「何のことでしょう」
「ニャんのことかニャ」
「さて、ここで私、RR探偵事務所の紅一点であり有能な探偵助手兼秘書の青山スフレさんの華麗なる推理をご披露してもいいのですが」
スフレさんは推理ショーを続けています。
「RR探偵事務所って言ってますけど・・」
「『あるある鑑定ジム女』ですね」
「骨董品の査定をしながら体を鍛える系女子の事ニャ」
タルト所長とエ・クレア助手は、横の旨川スブラキの方を全く見ようとせず、まっすぐに正面の玄関ドアの1点を見つめながら、無表情で答えます。
「披露してもいいんですよ、ええ。私、青山スフレにはすべてわかっているんです。わかっているんで・す・が!ここは犯人に自首してもらいたい!!これ以上、罪を重ねてはいけません!!蜂蜜を持ち込んだ犯人さん!名乗り出て下さい!」
「・・・・・・・」
「・・・・・・・」
「・・・・・・・」
(以下同)
「わかりました。全員目を瞑って。ええ。先生は皆さんを信じています。悪いことをしたと名乗り出るのは簡単ではありません。でも、勇気を出してください。さあ、今は先生しか見ていません。蜂蜜をこの島に持ち込んだ人。そっと手を挙げて下さい」
しーーーーーーーん
「誰も目を瞑ってすらいない!!!」
「わかってるんだったらさっさと犯人の名前を言え、青山スフレ」
と、渡来ムサカ。
「わかってないんだろ」
と、櫃島チャプチェ。
「この状態でよく推理ショー始められたね」
と、赤岩タルト。
「ちょ、ちょっと所長!仲間ですよね?!てか、なんでしれっとそっち側に陣取ってるんですか?!一緒に推理して下さいよ!」
「無理だよ。天の声が言ってたじゃないか。僕とエ・クレア君には推理に必要な情報を得る機会がなかったと」
「そうニャ。その情報を持っているのはスフレともう1人だけだって言ってたニャ」
「私ともう1人・・・・」
「思い出したまえ、スフレ君。僕たちと別行動しているときに何かあったんだよ」
「今から記憶をさかのぼって検証してみるのニャ」
「・・・はい。え・・と、今からさかのぼって・・・・情報を持っているのはもう1人いるわけだから、私1人で行動している時ではないという事ですよね・・・・自室で寝ていたりお風呂とかトイレの時ではないって事で・・・所長たちと別行動だったのはまず今日の朝っすよね」
「乾ビリヤニさんを探しに君が嵐の中、外に出ていった時のことだね」
「でも、その時はスフレの単独行動だったニャ」
「イタチがいました!」
「第2の情報保持者はイタチだと?」
「イタチは言語ワクチン非対応ニャよ」
「乾ビリヤニさんもいましたけど」
「その時、何か気づいたことは?」
「・・・うーーん。特に蜂蜜につながる情報はなかったと思います」
「じゃあ、次。もう少しさかのぼってみよう」
「次は・・・昨日の昼食の時ニャ」
「所長とエ・クレアさんと旨川先生が去取ボルシチさんを探しに行った時ですね」
「君が食い気に負けて探索を辞退してくれた時のことだね」
「しかしタルト所長、この時はスフレと一緒に何人か食堂にいて、昼食をとっていたのニャ」
「ですねー。そもそもその昼食時の様子は全く著されてないっすよ。読者さんにも謎解き不可能っす」
「これも違う、か。そうなると、それよりも前・・」
「スフレと男性3人で島の捜索をした時ニャ!!」
「そうっすね。そこが1番怪しいっすね。結構描写長かったし」
「よし。その時のことを思い出すんだ、スフレ君」
「ニャにか重要な手掛かりがあるかもしれニャイ。順を追って説明するのニャ」
「えーと。まず私と元大尉の渡来さんと歯医者の旨川先生、それから刑事のWアイランド櫃島さんの4人で建物の外に出ました」
「だからWアイランド言うな」
櫃島チャプチェが思わずツッコみます。
「で、駄菓子を楽しみながら駄菓子談議に花を咲かせて・・」
「・・・大の大人が4人も揃って何やってんの?」
「ちょっと待て!濡れ衣だ!」
「駄菓子は青山君が1人で勝手に食べていただけだ」
「『ここは滋賀れっと?』は駄菓子かどうかも怪しい代物でした」
渡来ムサカ、櫃島チャプチェ、旨川スブラキが一斉に抗議します。
「で、渡来さんが銃器を持っていることが判明して・・」
「え?!銃器?!」
「ピストルかニャッ?!」
「ちょっと待てよ!確かに持っているがピストルなどではない!」
渡来ムサカが慌てて答えます。
「・・・・ん?・・・・ちょっとシンキングタイムっす・・・確か、あの時・・・Wアイランドさんがみんなに銃器を持っているかの確認をして・・・渡来さんが『もちろん持っている』と答えて・・・・・あ!!実際にはその銃器を見せてないっす!!」
「ん?」
「どういうことかニャ」
「”ここに入っているぞ”的に迷彩服の腰元を指し示しただけでした!きっと、その腰のポケットの中には銃器ではなく蜂蜜の瓶が入っていたのです!!!!!」
「!!!!!」
「ニャニャッ!!」
「なんでそうなる?!これはサバゲーで使うエアソフトガンだ!!それに、このガンは普通に腰元にぶら下げていただろう!めちゃくちゃ見せてるんですけどぉ?!貴様みたいに油圧ショベルをポケットに仕舞ったりできないんでね!!青山スフレ、貴様どこの世界の人型ロボットだよ!」
「・・・・渡来さん、それ、エアソフトガンじゃなくてペイントボールマーカーですよね?」
「それにさっきはスフレの推理に思わず反応してしまったけど、そのやりとりは旨川センセと櫃島刑事も見てたんじゃニャイのか?情報保持者はスフレ以外に1人しかいないのニャ」
「・・・・むぅ~・・・でもその後は私の”狼煙をあげちゃおうZE”案が却下されて、雑学披露大会をして・・・」
「これも青山君が勝手にやってただけだからな!赤岩君!助手猫君!そんな目で見るんじゃない!」
「それからは4人バラバラで探索をしたので・・・ちなみに私の担当は砂浜の掘り返しでした」
「それで特に何も発見できずに邸内に戻って来たんだよね」
「ウニャ~・・・・ということは、この場面にも手掛かりは無しかニャ」
「それより前になると・・・・あ。この宿泊施設に到着した当初っすね。2階の客室に案内された時に乾パエリアさんと2人でした!」
「ということは、もう一人の情報保持者は乾パエリアさんかい?」
「その時何があったのニャ?思い出すのニャ!」
「・・・・私の部屋には例の現代長唄の額くらいしか変わったところはなかったような・・・あと、会話はスナメリの事くらいしかしてないですし・・」
「スナメリ?」
「田 誤憲さんに聞けと言われました」
「ウニャ~」
「蜂蜜らしきものも見てないですし」
「そうか」
「この場面だと思ったけどニャ~」
「うーーん。私が所長やエ・クレアさんと別行動したのは以上です。蜂蜜に関する伏線なんて無かったと思いますけど・・・」
スフレさんは額に手を当てて考え込みます。
・・・・すると、
「ちょっと待て、青山スフレ。まだあるだろ」
【登場人物おさらい】
赤岩タルト…RR探偵事務所所長
エ・クレア…同事務所助手兼看板にゃんこ
青山スフレ…その他
根住ポトフ…元裁判員
後谷マリネ…カテキョ
渡来ムサカ…元サバゲ―大尉
宇鷺ミラネサ…八代村のタタミ【第5の被害者】
立見ケバブ…パリピ【第1の被害者】
旨川スブラキ…歯科医
櫃島チャプチェ…Wアイランド
去取ボルシチ…鍋将軍【第3の被害者】
乾ビリヤニ…スタッフ(夫)【第4の被害者】
乾パエリア…スタッフ(妻)【第2の被害者】




