第49章 そして誰もいなくならない Day3(3)
3人はキッチンへとやってきました。
「蜂蜜、蜂蜜・・・」
「こっちの棚にはないね」
「冷蔵庫にも冷凍庫にも入ってないニャ」
キッチンをくまなく探しましたが、蜂蜜そのものはおろか、蜂蜜入りの加工品も見つかりません。
「・・・・無いっすね」
「ちょっと待って。現代長唄では”6人のコメディアンの壮年が蜂の巣を採っていた”と唄っていたよね。もしかして、外の蜂の巣から調達するつもりなんじゃないか?」
「そうかもニャ!!」
「何の騒ぎじゃ。今日はいい天気・・・ではないですなあ」
「どうしたんだ、コソ泥のような真似をして。青山君、まだ腹が減ってるのか」
根住ポトフと櫃島チャプチェがキッチンに入って来ました。
「いえ。蜂蜜を探しているんですよ」
タルト所長が答えます。
「キッチンには無いようなので、今から外の蜂の巣を探ってみようかと思っていたところです」
「外ったって、外は今、嵐だぞ。それに、昨日青山君たちと4人で外の捜索をした時にも蜂は飛んでいなかったし、蜂の巣も見当たらなかった」
「そうだったんすか。私は砂浜を油圧ショベルで掘ってたんで」
「油圧ショベルなんてどこにあったんじゃ?今日は悪い天気ですなあ」
「スフレの私物ニャ・・・でも、そういうことなら、この島には蜂蜜はないということなのかニャ」
「そうですよ。この島に蜂蜜はありません」
「「「「「!!!!!」」」」」
答えたのはキッチンの椅子に座っていた乾パエリアでした。
「いつからいたんっすか?!」
「いつからもなにもずっと」
「ずっとニャ?!」
「そういえばNyogiboリメイク座布団を敷いた椅子に座りっぱなしだって言ってたな」
さっきまでキッチンの家捜しをしていた3人を黙ってただ見ていたのでしょうか。
やはりNyogiboの後遺症は想像以上のものです。
「当宿泊施設に蜂蜜はございませんよ。あと、この島には蜂も生息しておりません」
「そうですか。スタッフの乾さんがおっしゃるなら、間違いないですね」
「・・・うーーん。仕方ない、もう1度仕切り直しましょう、所長」
~~~~
再びタルト所長の部屋で捜査会議です。
「この島には蜂蜜がない・・・・か。どう思う?エ・クレア君」
「ピコーン☆閃きましたよ!所長!!!」
「いや、スフレ君、君には聞いてな・・」
「これは、2階の廊下に飾ってあったシクラメンが重要アイテムっす!!」
「・・・ニャ?シクラメン?」
「あのシクラメンの鉢植えを窓から次々と眼下を歩くターゲットの頭めがけて落とす・・・・ああ!なんという残忍な犯行!!」
「・・・一応聞くが、どういう事だい?」
「なんか嫌ニャ予感が・・・・」
「鉢植えを3つ・・・・鉢3つ・・・・・はちみっつ・・・蜂蜜!!」
「くだらない!!実にくだらない!!!!」
「しょーもなすぎるニャ!しかも刺してないしニャ!」
「落として割れた鉢の破片で刺してとどめを・・・」
「やめなさい。そもそも『蜂蜜』と漢字で書いてあるんだからそんなダジャレは通用しないよ」
「蜂蜜は蜂が花の蜜を集めてきて作ったあの蜂蜜以外の何ものでもないニャ」
「ピコーン☆整いました!!」
「ボケる気満々じゃないか」
「もうスフレの三流漫談はお腹いっぱいニャ」
「蜂蜜はハニー!つ・ま・り!つまりですよ!”蜂蜜が1人を刺して”ということは、”ハニーが1人を刺して”・・・そうです!被害者の恋人が犯人なのですよ!!すごい!すごすぎる!!完璧な推理!」
「あーはいはい」
「ウニャウニャ」
「ちょっと!!今の、いい推理でしょう?!」
「ウニャ~。いい推理っちゃ、いい推理ニャのだが・・・ちょっと無理があるのニャ」
「何でですかっ?!」
「スフレ君。・・・・次の被害者は・・・その・・・オリジ・・・いや、君の・・あくまで君の予定では誰なんだい?」
「誰ってもちろん・・・・・あ!!!!」
「・・・という事ニャ」
コンコンコン
「探偵殿!!探偵殿!!俺様だ!大尉だ!ちょっと来てくれ!」
3人が捜査会議をしているタルト所長の部屋のドアをノックしたのは元大尉・渡来ムサカです。
「はーい。どうしたんっすか?」
スフレさんがドアを開けます。
「あんたか!青山スフレ!!ああ、探偵殿も。食堂に来てくれないか。あの婆さんが変なんだ」
「宇鷺ミラネサさんですね」
「間に合わなかった!!」
「タタミニャー!!」
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急いで食堂に降りてきた一同。
そこにはすでに根住ポトフ、後谷マリネ、旨川スブラキ、櫃島チャプチェがいて、1脚の椅子を取り囲んでいました。ちなみに、すっかり忘れられた存在の立見ケバブ(パリピ)は食事と入浴時以外、ほぼ自室にこもっているようです。
そして、食堂の椅子に座っているのは宇鷺ミラネサです。
彼女は一心不乱に何かを食べています。
「旨い!!旨すぎる!!この世にこんなに旨いものがあったとは!!あたくしはこれまで一体何を食べていというのか!!八代村のタタミなどもうどうでもよいわ!!この旨い食べ物を全世界に布教しなくては!!」
食べているのは・・・・・そう、蜂蜜です。
「ええっ?!なんでここに蜂蜜がっ?!」
「この島に蜂蜜はないはず!」
「ニャニャニャッ!!」
「また一人、現代長唄通りの被害者が・・・」
旨川スブラキがつぶやきます。
「唄通りじゃないっす!!刺されてないっすよ!これ、蜂蜜貪っているだけっすよ!!」
「・・・いや、見事に刺されておるよ。宇鷺女史は蜂蜜に胸を刺されたのじゃ・・・・ああ・・それにしても今日は悪い天気ですなあ・・」
【胸を刺す】
心に強い衝撃を与える。
例文:深い悲しみが胸を刺す
「なるほど。蜂蜜の衝撃的な旨さが、婆さんの胸を刺したというわけか」
「雅な、文学的な表現だな」
渡来ムサカと櫃島チャプチェが感心して言います。
「タタミも忘れるほどの衝撃だったようですわね」
後谷マリネまでそんなことを言い始めました。
「いやいやいやいや」
「これはさすがに無理ありすぎる」
「胸を刺す、って主に悪い意味で使われるようニャ気が・・・」
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またまたタルト所長の部屋に引き上げた3人は先程の出来事について討論を始めます。
「・・・・あんなのアリっすか?」
「・・・うーん」
「ジャペン語の世界は奥深いのニャ・・・」
「あれだったら私の推理の方がずっとマシじゃないっすか?!」
「・・・うーん」
「『私と猫と迷探偵と』の筆者は思慮浅いのニャ」
「それはそうと!何で蜂蜜があったんですか?!パエリアさん、この島に蜂蜜は存在しないってキッパリ言ってましたよね?!」
「だニャ」
「こうなれば可能性は1つしかないよ」
「え?」
「客の誰かが持ち込んだ。これしか考えられない」
「そうだニャ」
「スフレ君、君まさか・・・」
「いえいえいえいえいえ。持って来てませんて。ちょ、そんな目で見ないで下さいよ。エ・クレアさんも!」
「じーーーーー」
「まあ、君が悪意を持って嘘をつく人間だとは思ってないよ・・・だが、例えばメープルシロップだと思って間違えて蜂蜜を持ってきてしまったとか」
「例えばシャンプーと間違えて蜂蜜を持ってきてしまっニャとか」
「してませんて!!本当に私じゃありません!」
≪読者への挑戦状≫
「え?何?!」
「何が始まった?!」
「ウニャニャ?!」
≪読者への挑戦状≫
さて、読者の皆さま。ごきげんはいかがでしょうか。
天の声、またの名を地の文さんです。
今回の謎はフーダニット。
誰がこのコメディアン島に蜂蜜を持ち込んだのか、です。
え?何のヒントも無しで当てろというのか、ですって?
まさかまさか。
伏線はちゃんと引いてありますですわよ。
え?読み返すのが面倒と?
まあまあ、そうおっしゃらずに。
そうですね。では1つだけ皆さまにヒントを。
実は、このコメディアン島に滞在中の全登場人物の中でこの謎を解けるのは、蜂蜜を持ってきた犯人自身の他には2人だけなのです。
その1人は・・・・そう、我らが青山スフレさん。
実は、タルト所長にもエ・クレア助手にも犯人は推理できないのです。
なので、謎解きにはなんとしてもスフレさんに頑張っていただかないといけないのですが・・・
ちょっと不安ですね。
では、皆さま。
解決編でお会いしましょう。
地の文さんでした☆




