第48章 そして誰もいなくならない Day3(2)
スフレさんが邸内に戻ってきました。
タオルを持った後谷マリネが小走りでやってきます。
タルト所長とエ・クレア助手も一応出迎えます。
「スフレ君、ビリヤニさんは見つかったかね・・・って、その頭は何だい?」
タルト所長がスフレさんのネコ耳を目にして問いかけます。
「いたちごっこしてました」
「What???」
「あいにくイタチ耳は持って来てなくてネコ耳で代用しましたけど」
「意味わからん」
「イタチダンスもしたんですよ」
「キツネじゃないのニャ?」
「耳付けて姿勢を低くしてできる限り似せてみたんっすよ」
「それはいたちごっことは言わない」
「少し近づいたら後ずさりして、また少しだけ近づいたら後ずさりして、なかなか追いつけなかったんですよ」
「それがいたちごっこニャ」
「・・・あの・・・イタチの話はそれくらいで。それで、乾さんは見つかったんですの?」
後谷マリネがスフレさんのネコ耳をぴょいっと外し、持っていたタオルでスフレさんのびしょ濡れの髪の毛を拭いてあげながら、まともな質問をします。
外したネコ耳をこっそり自分のポケットに入れたような気がしますが。
その後、自室の鏡の前でネコ耳を付けた姿を自撮りしまくったというのはまた別の話です。
「乾ビリヤニさんは・・・・真っ二つに割ってました」
「ま、真っ二つですか?!」
「!!!!ま、まさか!!あ・・あたm」
「ニャニャニャーーーーー!!!」
「割り箸を」
「「「・・・・・・・」」」
「いや、正確には”真っ二つ”ではないかもです。全部斜めになってましたから」
「あー。あるよねー。『何でこんな割れ方する?』って事」
「ええ。私も経験ありますわ」
「ふーむ。皆さん、ぜひその体験談をお聞かせくださいっす。メモメモ・・・」
「急にどうしたスフレ君」
「妙に食いついてきたニャ」
「お忘れですか?私、大学で研究しているんっすよ。」
「え?そうだっけ?」
「そうだったかニャ?」
そうでしたっけ?
「ちょっと!地の文さんまで何言ってるんすか!!」
「そもそもスフレ君て大学生だったのか?」
「野良人間じゃなかったのかニャ」
「もーっっ。こちとら花のJDですよ!」
「ああ。職務記述書ね」
「Job Descriptionニャ」
「違いますっ!女・子・大・生!!大学では『”こちら側のどこからでも切れます”が、どこからも切れたことがない人の身体的・心理的特徴』を研究してるんですぅー!・・・・で、今回の割り箸の件もこれと似ているんで、参考になるかなーって」
「あー。スフレ君にはそんな設定もあったねー」
「設定言うなっす」
「あら、青山さんて大学生なんですの?どちらの学校?」
後谷マリネが問いかけます。
「ふふふー。実はあ・の!超~有名なパパと同じ大学なんですよー」
スフレさんがなぜかドヤ顔で答えます。
「なるほど。あのお料理上手なパパと」
「いえ、クッキングしない方のパパなんですが・・・ヒントは○○田大学!」
「えぇーーー?!早稲田大学っ?!」
「タラちゃんのパパでもありません。今の『えぇーーー?!』はその人の物真似っすよね?」
「タラちゃんのパパは”パパとして”有名か?」
「ウニャ~。パパとしてというより、その固有名詞が普通名詞になったことで有名なのニャ」
「何とかのパパと言えばほら!」
「新宿の?」
「違う。それは『母』」
「なら知らない!」
「えぇーーー?!」
後谷マリネの世代ではご存じないようですね。
でもスフレさんは彼女より若いんですけどね。
「しかし、これで4人目ですね」
「また今回も現代長唄通りの事件が起こったというわけか」
旨川スブラキと渡来ムサカもやってきました。
「今度こそ!今度こそ未然に防いでやりますよ!RR探偵事務所の名にかけて!!」
スフレさんが、手のひらを下にして右腕をまっすぐ伸ばして左腕を体の後ろに回した、北の地を開拓した某博士のポーズで宣言します。
「やはりおたくの事務所のお嬢さんじゃないですか」
「何のことでしょうか、ドクター」
「うちの事務所の実働スタッフは、タルト所長と助手のオレっちしかいないのニャ」
「いや、でもあのお嬢さん、『RR探偵事務所の名にかけて』って・・」
「『あるある探険隊の名にかけて』でしょう?」
「懐かしいニャ」
~~~~~~朝食後~~~~~~~
「それでは!『第2回 そして誰もいなくならないように事件を回避しちゃうぞ捜査会議』をはじめます!」
「88888」
「ktkrニャー」
「残念ながら前回の割り箸は予想できませんでした・・・だがしかーーーーし!!!今回はそうはいきませんよ!見ていなさい!!このスフレさんを筆頭とするRR探偵事務所が!必ずや!!次なる犯行を止めてみせましょう!!」
「88888888」
「wktkニャー」
「ではでは!現代長唄の5番の歌詞を検証しましょう」
「8888888888」
「うぽつニャー」
「・・・・・・・ちょっと!!」
「88888」
「ktkrニャー」
「2人のコメントが第1回とまったく一緒そして棒読み!!」
「88888888」
「wktkニャー」
「2人とも無表情そして明後日の方向を向いてる!!」
「8888888888」
「うぽつニャー」
「コピペで楽しようとしてる」
「それは違う」
「『私と猫と迷探偵と』は誠心誠意、全力投球、不眠不休でお送りしていますニャ」
「・・・『それでこのレベルかい』っていうツッコミが聞こえてきそうですが、それはとりあえず置いとくっすよ。・・・では、現代長唄5番の歌詞をおさらいしましょう・・・6人のコメディアンの壮年が蜂の巣を採っていた・・・蜂蜜が1人を刺して、5人になった・・・ですね」
「”蜂の巣を採っていた”は、まあ、いいとしよう・・・問題は・・」
「”蜂蜜が1人を刺して”ニャ」
「蜂蜜が刺す?蜂が刺すなら普通ですけど」
「誤植か?」
「どういう状況ニャ?」
「ピコーン☆私、わかっちゃいました!!」
「来たよ、ヤバイやつ」
「スフレの”ピコーン☆”は『お年玉、一応お母さんが預かってあなたのために貯金しとくからね~』以上にアテにならない!」
「凍らせた蜂蜜を凶器にするんです!!」
「蜂蜜を凍らせる・・・・凍るのか?」
「白く固まりはするけどニャ・・」
「理論上、マイナス41.3℃で凍るらしいっすよ!糖分の割合で、もう少し高い温度で凍る事もあるって聞きました!」
「・・・・なるほど」
「ウニャー」
「凍らせた蜂蜜を削って鋭利な刃物に加工してグサリ!!そして解凍して何事もなかったかのようにキッチンに紛れ込ませ、”この後ハニートーストとして私たちが美味しくいただきました”的な完全犯罪を目論んでいるんっすよ!!なんという狡猾な犯人!!許すまじですねっ!!」
「ここの冷蔵庫、そんなに低い温度になるかな?」
「加工から犯行までをかなりスピーディーに済ませないと融けちゃうのニャ」
「とりあえず、蜂蜜探してみるっすよ!」
「そうだね。蜂蜜を取り上げてしまえば犯行は阻止できる」
「まずはキッチンに行ってみるニャー!」




