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第43章 そして誰もいなくならない Day2(3)

「しかしだね。オーナーである名無しの権兵衛(UNKNOWN )はこの島にはいないのだろう。どうやって”罰”を下したんだ」


旨川スブラキが疑問を投げかけますが、さすがにこれにはタルト所長が反論します。


「ドクター。”罰”とおっしゃいますが、立見君に関しては自分で破いた紙を流してトイレが詰まったわけですし、乾パエリアさんの件は、ご主人の乾ビリヤニさんが不注意で兵器を輸入してしまったので・・・」

「ええ。それが全て名無しの権兵衛の計算通りだったとしたらどうでしょう」


「どういう事っすか?」

「いいですか、探偵事務所のお嬢さん。まず名無しの権兵衛はトイレが詰まりやすいように細工をしておく。そして、世話焼きで、若者を必要以上に子ども扱いするおばちゃんをスタッフとして雇っておく。あとはご覧の通り、パリピのプライドを粉々に打ち砕くあの惨劇が繰り広げられた・・・というわけです。さらに、乾ビリヤニさんのPCを、どのサイトを見ようとしても『兵器の密輸ならここ!全宇宙デンジャラスウェポンデパート”ナイル”』のサイトにつながるように細工し、そのトップページをさも『楽!天文単位市場』かのように偽装。かくして、今回の、国家を揺るがす前代未聞の大事件へと導いたのです」


「旨川先生。トイレの件なんだが、昨日、夕食前に自分が使ったときには特に違和感はないように思えた。流れも別段悪くはなかったはずだ」


櫃島チャプチェが言います。


「・・・ということは・・・名無しの権兵衛さんがトイレに細工をしたのは、櫃島さんがトイレを使用した後・・・という事になりませんか?旨川さん」


後谷マリネが手で口を覆いながら言います。


「ええ。そういうことになりますね」


「そんな!!じゃあ、やっぱり名無しの権兵衛さんはこの島にいるのですね!!」

「大丈夫だ、後谷マリネ。この島は狭い。そして建物はこの宿泊施設だけ。隠れられる場所など限られている。少し探せば名無しの権兵衛などすぐに見つけられる」


何人かで島を捜索しようという話になり、名乗りを上げたのはゲストの中でも比較的若手の男性陣である、元サバゲー大尉の渡来ムサカ、歯科医師の旨川スブラキ、現役刑事のWアイランド櫃島チャプチェ、そして、とにかく何にでも一枚噛まないと気が済まない青山スフレの4人です。


「所長とエ・クレアさんは行かないんっすか?」

「・・ああ・・・まあ・・ね」

「スフレに任せるニャ」


「確かに、この探索では特に収穫はないんですけどね」

「だから!預言者みたいな言い方やめなさいって!」

「オレっち達は何も知らないのニャ!!」


「むー。いいですよー。私がRR探偵事務所を代表して行ってきますよーだっ」


そう言って、スフレさんは他の男性陣3人と共に玄関から外に出ていきました。


「タルト所長、スフレにRR探偵事務所を代表させていいんですかニャ」

「・・・ま、まあいいだろう。”罰”と言っても大したことはなさそうだし、我々探偵の出る幕でもないよ」


どうやらスフレさんは”我々探偵”の中には入っていないようです。


~~~~~~~~~~~~~~~~


「それにしてももぐもぐここはもぐもぐホントにもぐもぐいい所もぐもぐっすねもぐもぐ」

「・・・おい、青山スフレ。何か食ってんのか」


渡来ムサカが軽く睨みながらスフレさんに問いかけます。


「あ、もぐもぐ『照焼さん二郎』ですよーもぐもぐ大尉ももぐもぐ食べますか?」

「いらん!まったく、緊張感のない奴だな!」


「『おやつカルピス』もありますよ?もぐもぐ」

「それは固体なのか液体なのか・・」


旨川スブラキも呆れ顔です。


「Wアイランドさんもぐもぐ『ここは滋賀れっと?』もありますよもぐもぐ」

「Wアイランド言うな。それと、”滋賀れっと?”って何なんだ」


「”ここは滋賀ですか?”という意味の滋賀県の方言だそうですよもぐもぐ」


いいえ、違います。


「滋賀県とは、あの地球の日本という国の中にある広域的地方公共団体の事か?・・・ほー、そんな方言があるとはな」


ありません。


「もぐもぐ・・ごくん。『ここは滋賀れっと?』は葉たばこを細長く刻んで乾燥させたものを巻紙で巻いた駄菓子ですよ」

「・・・・・・・それは本当に駄菓子なのか?」


「ところで、皆さん。・・・・まさかとは思うが、どなたか銃器を持っていたりしないでしょうね」


刑事の櫃島チャプチェが周りを見渡しながら聞きます。


「え?・・・あ、私、油圧ショベルなら持ってるっす!」

「そっちの重機じゅうきじゃなくてピストルとかの銃器じゅうきだ!それよりも、何故そんなもの持ってる?!いや出さんでいい出さんでいい!!」

「え?今、どこから出した?お嬢さん、今、どこから出した?」


「俺様はもちろん持っているぞ」


渡来ムサカが迷彩服の腰元を指し示しました。


「”元”大尉といえど、いつでもフィールドで戦う用意はできている」

「・・・サバゲー界、追放になったんっすよね?」


4人の烏合の衆は、島の中を探索し始めました。

宿泊施設の外は、正面に砂浜があり、右方にはここへ来るときに船をとめた桟橋があります。

島の北側、宿泊施設の裏側に当たる方面には自然の樹木があるものの、生い茂っているというほどのものではなく、人が隠れられる場所はなさそうに見えます。


「洞窟だとかそういった類のものも見当たらない」

「周りは砂浜で、崖などもないから見通しはいい。名無しの権兵衛が潜んでいるような気配はないな」

「船は滞在終了日にしか来ないらしいですよ」


「狼煙をあげるっすよ!!NO・RO・SHI!!」


スフレさんはどうやら狼煙好きのようです。


「いや、無駄だ。この事件が本当に名無しの権兵衛の仕組んだ事なのだとしたら、本土の人たちには狼煙を見ても無視しているよう、手を回しているだろう」

「そうだな。きっとテレビバラエティーの撮影でもしているのだと言ってるんだ」


「『ユー・アー・探険少女』の”脱出アイランド”ですね!よし!『To Dare Is To Do(挑戦無くして成功なし)!!』、どんどん雑学言っていくっすよー!!!」

「・・・青山スフレ。何故貴様が東大枠なんだ」

「どちらかというと・・・というか、どう考えてもフワフワちゃん枠だろ」

「もしくは荒れくるう君枠」


「雑学その1、ピザって100回言って下さい」

「ピザピザピザ・・・って多いわっ!!」

「それ、雑学じゃなくて10回クイズだろ。懐かしいな」

「それで肘を指さして、『ここは?』と言うつもりだろう」


「いいえ。『ピザって100回言ったらピザが食べたくなる』という雑学です」

「くだらねえ!!」


「では、雑学その2・・」

「いらん!」

「騒音の軽犯罪法違反で逮捕するぞ」

「お嬢さんは『チンタラ歩いてんじゃね~よ』でも食べていなさい」


「食パンの袋に付いている留め具は『バッグ・クロージャー』と言います」

「有名だがまともな雑学!」


「邪魔なコードをまとめたり、コンセントにさしたプラグがどの家電に繋がっているかの目印として使ったり、お湯を入れたカップ麺のフタを留めたりと、いろいろ再利用できます」

「まさかの普通に雑学!」


「ちなみに私は髪の毛をまとめるのに使っています」

「それはやめておけ」

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