第42章 そして誰もいなくならない Day2(2)
探偵事務所陣と旨川スブラキが話しているところへ、渡来ムサカと宇鷺ミラネサがやってきました。
「今朝はどうしたんだ。客が朝食の支度なんかして。そういえば、あのスタッフの女性がいないようだが。それにどうもスタッフの男性の顔色もよくないな」
「・・・ああ、渡来さん。朝食が少し遅れているが勘弁してやって下さい。・・・乾パエリアさんがとても作業できる状態ではないもので・・・彼女は・・・とても動ける状態では・・・」
「・・・・・・」(宇鷺ミラネサ)
「・・・・・・」(赤岩タルト)
「・・・・・・」(エ・クレア)
「・・・・・・」(旨川スブラキ)
「・・・・・・」(渡来ムサカ)
「くぉらーーー!!!宇鷺ミラネサ!!今でしょ!ここでしょ!あんたでしょ!!なに黙りこくってんっすか?!」(青山スフレ)
「・・・・・はっ!た・・タタミじゃ~~!!八代村のタタミじゃ~~!!!」
「そうそう」
そうそう、じゃないですよスフレさん・・・・
「八代村のタタミがあの女を罰したんじゃ~~!!」
「宇鷺さん、どういうことですか」
タルト所長が聞きます。
「お前らも聞いたじゃろ。あの”声”を。あの女の罪を!!」
「ああ、確かポメを柴ちゃんにしたとかなんとか」
「罰せられるほどの事でもない気が・・・」
「タタミじゃ~~!!八代村のタタミじゃ~~!!!」
そこに乾ビリヤニがやってきました。
「あのう・・・ちょっとよろしいでしょうか」
「はいはーい。なんでしょ?」
乾ビリヤニはタルト所長に声をかけたようですが、スフレさんが勝手に返事をします。
「そこのテーブルなのですが・・・」
乾ビリヤニは食堂の隅の例のテーブルを見ながらタルト所長に話しかけます。
「はい」
タルト所長が言葉少なめに答えます。
「昨夜気づいたのですが、とても不可解なことが起こっているんです・・・いえ、どうか私奴が何かおかしくなったのではないかと思わないで下さい・・・・しかし、気づいてしまったので・・・誰かに聞いてもらいたかったんです。実はそこのテーブルの」
「上に置いてあった人形が減ってるんっすよね?」
「青山様!!何故それを?!」
「いや、だって台本通り・・・」
「スフレ君!!!」
「・・・・台本とはなんでしょうか?」
「いえ、乾さん、こちらの話です。お気になさらず」
「え?乾さん、知らないんすか?・・・あ、そういえば私、文庫本持ってきてたんだった。ほら、これですよ。『そして誰もいなく・・」
シュバッッッッ
ビリビリビリビリ
「あーーーーー!!タルト所長!何やってるんっすか?!・・・て、まあ、いいですよ。実はDVDも持ってきてるんで。ほら、これですよ。『そして誰もいなく・・」
シュバッッッッ
パリーーーーーン
「あーーーーー!!エ・クレアさん!何やってるんっすか?!」
「・・・・あの、お客様・・・大丈夫ですか?」
「ええ、ご心配なく」
「いつもの事ですニャ」
「何を騒いでおるなりか」
騒ぎを聞きつけ、去取ボルシチを先頭に、他の宿泊客もぞろぞろとやってきました。
「皆様。・・・ええ、ここの人形の事です。」
「コメディアンの壮年人形じゃな。今日はいい天気ですなあ。」
「あら。8個しかありませんわね」
「昨日見た時は10個あったよな?」
「私奴が昨夜、立見様の騒動の後、テーブルを見た時に人形が9個になっておりました。そして今朝、家内の事件の後で8個に・・」
「どういうことでしょうね」
探偵陣3人を除く全員が、2個無くなっている木彫りの人形を眺めて口々に不安を口にします。
「・・・・みんな、知らないんすかね?」
「ああ。他星の物語だからね」
ここアース星では、他の星との商業取引を盛んに行っています。
100光年より近い星との間では、物資の貿易以外に観光業などでも交易を密にしています。
もちろん、地球の文化などもアース星に入ってきてはいるのですが・・・
「今のトレンドは火星カルチャーなのニャ」
「そういえば、直近のオレコンチャート1位は火星人ユニット”MO2(エムオーツー)”だったすね」
「文芸でも、火星人作家”木公本清張”の『石少の口口大口口』や『.(ピリオド)と‐(ハイフン)』とかが爆売れしているよね」
アース星では今、空前の火星ブーム。
修学旅行や卒業旅行、新婚旅行や会社の慰安旅行まで、老若男女、有象無象、誰もが1度は行ったことがあるといっても過言ではないほどのトレンドになっています。
ですから、わたくし”天の声”またの名を”地の文さん”は、火星の事については詳しいのですが、いかんせん、地球の事となるとちょっと・・・・
というわけで、RR探偵事務所陣以外の皆様もあまり地球の世情には明るくないようですね。
「みなさん・・・・当方は大変重要な事に気が付きました」
旨川スブラキが沈痛な面持ちで話し始めます。
「むぐぐぐぐぐ」
なぜかスフレさんはタルト所長に後ろから口を塞がれて、もがいています。
「むぐぐぐぐ・・・唄・・通り・・・次々・・・全員・・」
何か言っていますが、気にしないで進めましょう。
旨川スブラキが話を続けます。
「客室にあった、あの額ですよ」
「あのコメディアンの壮年の現代長唄ですか?」
後谷マリネも不安を隠しきれない様子で問いかけます。
「ええ。あの唄の通りに事件が起きているではありませんか」
「確か1番の歌詞は・・・10人のコメディアンの壮年が食事に出かけた・・・1人が食事を詰まらせて、9人になった、か」
渡来ムサカさん、随分と記憶力がいいようですね!
ええ!随分と!!
一言一句覚えているなんて、すごい記憶力ですね!
その記憶力でサバゲーのルールを覚えた方がよかったんじゃないでしょーかねー?!
「天の声、どうしたんだ?」
「『重要証言ピンポイント再生能力』を披露できなくて苛立ってるんだニャー」
「最初の被害者はケバブ君じゃ。いい天気じゃったというのに」
「確かに食事(消化済み)をトイレに詰まらせたなり・・・しかしこの事件では、彼は被害者というより加害者・・・・」
「だから、違うって!!食事(消化済み)なんて詰まらせてない!!あれは紙で・・・」
「わかってるわ。立見君。確かに紙も大量に使うわよね。ちゃんと拭かないと体(の一部)にも良くないしね」
「その紙じゃない!!」
「ない、ない、ない~故~意じゃない♪」
「スフレ君、そのギャグはさすがに古い。そして、彼は思いっきり故意で紙(社歌歌詞カード)を流してるし」
「2番の歌詞は・・・9人のコメディアンの壮年がおそくまで起きていた・・・1人が心地よく過ごして、8人になった、だったな」
「ええ。2番目の被害者はスタッフの乾パエリアさんです。私が診察しましたが、彼女は家具生物兵器により、何もやる気が起こらなくなってしまいました」
「まさか・・・・Nyogiboですのっっ?!」
「あの”非Nyogibo三原則”が破られたなりか?!」
「・・・・すみません・・・犯人は私奴です」
「ああ。本土に帰り次第、逮捕になるだろう」
「今日はいい天気ですなあ」
「タタミじゃ~~!!八代村のタタミじゃ~~!!!」
「いや、八代村のタタミなんかじゃないぞ」
渡来ムサカが冷静に切り出します。
「そりゃそうでしょ。最初のトイレ詰まらせ事件も次のNyogibo侵略事件も犯人わかってるし・・」
スフレさんも冷静に切り返します。
「これは、最初から仕組まれていた事件なんだ」
「そうなり。我々はこの島に閉じ込められ、”罰”を受ける運命なり」
スフレさんの発言は華麗にスルーされ、会話は進んでいきます。
「”罰”って一体、何に対してですの?」
「それはあの”声”が言っていたことに決まってるだろう」
「八代村のタタミに誓って、そのような事実は一切ない!!」
「儂も今日の天気に誓って、そのような事実は一切ありはせん!!」
「いや・・・そもそも、あれってそんな”罰”を受ける程の”罪”なんすかね?」
スフレさんが負けじと口出ししますが・・・
「その”罰”って一体、誰が下しているんですの?」
「それはもちろん、現代長唄の額と”声”のMDを用意でき得た者・・・つまり、この島のオーナーである名無しの権兵衛に決まっているだろう」
「迎えの船は来ないなり・・・我々はこのコメディアン島から出られないなり・・・ここでTHE END・・・それがLOVE AND PEACE・・・」
「あのぅ・・・・私の話、聞いていただけます~?」
「スフレ君、無駄だよ」
「うニャァ・・・・・とは言っても旨川センセのは結構な”罪”だと思うけどニャ」
「なんですか?当方が結構な罪を犯していると?失敬な。ただ、ウメ婆さんとイノシシのコウメちゃんのカルテを取り違えただけだ!それに、ウメ婆さんだって”フライパンを歯で曲げる”一発芸で、敬老会のアイドルの座をほしいままにしているんだ!それを言うなら、あの”声”に告発された”罪”の中で群を抜いてダントツの大罪は、あなたたちRR探偵事務所のみなさんの所業でしょう!!」
「そうだそうだ!」
「あれほどの罪はありませんわ!」
「酷い!酷すぎる!!」
「タタミじゃ~~!!八代村のタタミが起こるぞ~~!!!」




