第30章 そして誰もいなくならない Day0
RR探偵事務所の昼下がり。
本日は、急を要する調査依頼もなく、いつものようにタルト所長は10イィェン硬貨を削り、エ・クレア助手は先日、”にゃんこまっしぐら!とっておきジャーキー賞”を受賞したサンショウウオジャーキーが商品化され、新たにコンビニ販売も展開されるという事で、新発売記念イベントで行われる開発者講演会のスピーチ原稿を執筆中です。
スフレさんは近所のスーパーのタイムセールに出かけています。
お目当ては大特価の小麦粉です。
もちろん、例のお茶の材料です。
バタバタバタバタ
おや、外が騒がしいようです。
噂をすればなんとやら。
どうやら爆弾娘が帰って来たようです。
「た、た、ただいまっっ!!!!た、た、大変です!!!」
スフレさん、なにやら興奮しているようです。
「どうした、スフレ君。河童にカツアゲでもされたかね」
「いえ。それは昨日の出来事です!」
「されたんかいニャ」
「当たっちゃいました!!」
「河豚にか?」
「牡蠣にかニャ?」
「いいえ!そんなんじゃないです!!」
「車にか?」
「新幹線にかニャ?」
「違いますって!!な、なーんと商店街の福引!しかも特等!!」
「本当かっ?!」
「と、特等という事は・・・もしニャ・・・」
「はーいー♪超豪華リゾート島3泊4日ペア旅行招待券ゲットです~☆」
「おおっ!」
「ニャニャッ?!」
「しかもしかも、ペット同伴可なのですー♪」
「おおーーー」
「ウニャッウニャツ!!!」
「というわけで、私とトビハゼさんとクマ吉っちゃんとで行ってきます」
「「なんでやねーーーん(ニャッ)!!」」
「冗談ですってば☆この3人で行きましょう♪」
「久しぶりの旅行!!」
「超豪華リゾート島ってどこの島ニャ?」
「パンフレットによると、『コメディアン島』らしいっす」
「コメディアン島?聞いたことないな」
「どこにあるのかニャ?」
「ジャペン国内ですね。淵戸内海に浮かぶ小さな島らしいっす。個人所有の島ですね。プライベートリゾート島としてツアー用にも貸し出しているっぽいです」
「へえ。ちょっとパンフレット見せて」
「オレっちも見たいニャ」
スフレさんの戦利品(?)であるツアーパンフレットと目録を3人で仲良く見ることにしました。
先程のスフレさんの説明通り、コメディアン島は元々ジャペン国の西にある淵戸内海の中央付近にある無人島で、その昔、ある有名なコント師だか落語家だか喜劇俳優だかが購入したという噂が広まりましたが、真偽のほどはわかりません。島を購入した人物は、雑木だらけのこの島に洋風の宿泊施設を1棟建て、当初は自分や身内の別荘として使用していましたが、最近では旅行会社と提携して一般のツアー客も受け入れているようです。
宿泊施設の周りにはなるべく手を入れず、自然を満喫できるようなリゾート地になっています。
「温泉とかあるんですかね?!」
「温泉ねー。小さな島だしね。どうだろう」
「オレっちは水大丈夫なタイプの猫ニャンよ!温泉万歳!!」
「温泉と言えばあれですよね!所長!!」
「ああ、猿だね」
「いニャ、カピバラだニャン!」
「違いますよ~。温泉と言えば”温泉湯けむり殺人事件”!!」
「うち、それダメだからね」
「”湯けむり温泉卵盗難事件”ならOKニャ」
「盗難事件じゃしまらないっすよ~。やっぱり”温泉湯けむり殺人事件《隔離された温泉旅館で愛憎渦巻く復讐劇!熱血警部が25年前の落盤事故を追うが、それは仕組まれた事件だった!当時の事件関係者に犯人の魔の手が迫る!最愛の弟のために復讐を誓う犯人!それを追う刑事!雪で囲まれた温泉旅館に隔離された宿泊客は全員歌舞伎役者!男だらけの温泉旅館に咲く一輪の花、紅一点の美人女将!犯人はいったい誰なのか!熱血警部、執念の捜査が実を結ぶ!ラストシーンは断崖絶壁!犯人の女は何を語るのか!》”でしょ」
「サブタイトルであらすじやら動機やら犯人やら盛大にばれちゃってるパターン」
「女将が犯人ニャ」
「ホロリもあるよ」
「涙がホロリ、ってね」
「ニャイニャイ」
さて、このコメディアン島へのアクセスですが、まず電車で淵戸内海沿岸まで行きます。今回のツアーでは、この電車代も招待券内に含まれているようですが、各々自家用車で行ってもいいようです。
「どうしますか?」
「せっかくの旅行だし、駅弁でも楽しみながらのんびり電車で行こうじゃないか」
「淵戸内カブトガニ弁当楽しみだニャン」
淵戸内海沿岸からはチャーター船でコメディアン島へ。
「船ですか!私、乗ったことないんですよ!中にプールやら映画館やらカジノやらいろいろあって、街のようなんですよね?!ドレスコードとかあるんですかねっ?!どうしよ。私、成人式に着た肩出しカクテルドレスしか持ってないんですが!」
「どんな豪華客船想像してるの?島への連絡船だよ?」
「真冬の成人式に肩出しかニャ」
「やっぱり氷山にぶつかって刑事プリ夫さんと器械体操しないといけないっすかね」
「器械体操言うな」
「今の時季の淵戸内海に氷山は無いニャ・・・今の時季じゃなくても無いニャ」
コメディアン島では例の宿泊施設に泊まり、島内を散策したり、施設内でのんびりくつろいだりと、自由に行動できるようです。食事は淵戸内海の海の幸が盛りだくさんの豪華なもので、宿泊客全員で集まって摂るということです。今回のツアーの紹介パンフレットには、初日の夕食時にちょっとした催し物もあると書いてあります。
「催し物って何でしょうかね。かくし芸大会とかですかね。・・・え、どうしよう、私、かくし芸って言っても、1000イィェン紙幣を折って南里柴犬さんの肖像を怒った顔にする、とか昆布巻きに巻いてあるかんぴょうを口の中できれいにほどく、とかしかできないんですよ」
「それはずっとかくしっぱなしでもいい芸だね」
~~~~~そして、ツアー前日~~~~~
「所長!おやつは何イィェンまでですか?」
「100イィェンまでです」
「少なっっ!!」
※1イィエン=1円、固定相場制です
「所長!バナナはおやつに入りますか?」
「入ります。バナナも含めて100イィェンまでです」
「やっぱり少なっっ!!」
※バナナは1本80イィェンです(商店街のスーパー”アエオン”での時価)
「スフレ、バナナは切って弁当箱に詰めればおやつじゃなくてお弁当の分類になるのニャ」
「エ・クレアさんマヂ天才!!!」
スフレさんはバナナと”おいしい棒”と”コアラのルンバ”と”あらよっとっと”と”ねるねるねるねるね”と”ガラガラ君”をお弁当箱にせっせと詰めています。
エ・クレア助手はタコジャーキー、イカジャーキー、ナマコジャーキーをお弁当箱にいそいそと詰めています。
「ガラガラ君はアイスじゃないのかね、スフレ君。そして君まで何をやっているんだね、エ・クレア君」
「てへぺろニャ☆」




