第3章 所長!事件です!!1
「フランソワーズちゃんを探してちょうだい!!!」
探偵事務所のドアを乱暴に開け、開口一番、端的に依頼内容を叫ぶ女性。
年の頃なら45,6。かなり太・・・・ふくよかな体を、『それ、どこに行けば買えるの?』と聞きたくなるような(教えてもらったところで絶対に買いませんが)、ド紫の生地にスパンコールのようなものがゴテゴテとくっつけてあるワンピースドレスに押し込んで、首という首、指という指全てにいくつものアクセサリーを装備しています。
「ああ、床が抜けますのでお静かにお歩き願います」
「なんですって?!」
ああー。スフレさん、さらっと言っちゃいました。
「えー、家中の装飾品全部持ち歩いてるんですか?不用心ですよ。おうちのセキュリティーにお困りでしたら、当探偵事務所でもご相談をお受けできますが」
「失礼ねっ!これはファッションですの!これはアンティグア・バーブーダのクリケット場の裏手にあるサトウキビ畑から採掘されたブルージルコニア、これはサントメ・プリンシペの旧マヌエル・ピント・ダ・コスタ邸の向かいの信号を左に曲がったところにあるカカオの木の下から採掘されたピンクジルコニア、それからこの指輪はセントクリストファー・ネイビスの・・・・」
「あーー、はいはい。でも、全指の関節固定されちゃって、指、曲げられなくなっちゃってるじゃないですか・・・・・
じゃーーーんけーーんポンっっ!」
「ああっっ!!」
スフレさん、ドヤ顔でチョキを出しています。ご婦人も反射的に手を前に出しています。
「勝った(はーと)」
「ちょっと?!どういうつもりですの?!」
ご婦人ご立腹のようです。
当然と言えば当然です。
「失礼いたしました。指輪、外そうと思っても外れないのですね。よくナニ〇レでやってるような鉄のポールを巻き込んだ木状態になってますものね、お肉が指輪を・・・ぷぷ」
火に油を注いでいます。
「抜けなくなった指輪をはずすには、指にすり下した玉ねぎを塗りこんで15~30分放置して・・・あ、玉ねぎがない場合は牛乳とかコーラとかでも大丈夫ですよー」
それは食用の肉を柔らかくする方法ですね。
「もう、どこをどうツッコんでいいのかわからないな」
「まず己の(自称)助手の、客に対する態度にツッコむべきだニャー」
この時、タルト所長は日課の『10イィェン硬貨の表面を削って2まわり小さい10イィェン硬貨を完璧に再現する』作業の真っただ中、エ・クレア探偵は、先週、クルンテープ・マハナコーン・アモーンラッタナコーシン・マヒンタラーユッタヤー・マハーディロック・ポップ・ノッパラット・ラーチャターニーブリーロム・ウドムラーチャニウェートマハーサターン・アモーンピマーン・アワターンサティット・サッカタッティヤウィッサヌカムプラシットに出張した報酬で購入した高級マグロを使った『利きマグロ』で、「南インド洋で昨日水揚げされたミナミマグロのオス15歳、235cm、255kg、好きな食べ物はブラックタイガー、趣味は可愛いマトウダイの女の子をストーキングすること」まで判定したところでしたが、さすがに2人とも手を止めて、このへっぽこ(自称)助手と依頼人の会話に耳を傾けました。
え?ここはアース星じゃなかったのか、ですって?
へえ、地球にも同じ地名があるのですね。宇宙って狭いんですね。
生物も地球とほぼ同じですよ。
違う点は3つです。
まず、アース星には『ウォンバット』という生物はいません。
代わりにいるのが『ジンミンゲンミット』。
ウォンバットと体格、生態などは全く一緒ですが、毛色がライムグリーンです。
そして、『ツチノコ』がいます。普通にいます。みそ汁の具にすると美味しいです。
『アマビエ』もいます。
探偵事務所の近くの商店街にもアマビエさんが経営している『アマビエ写真館』や『アマビエ甘エビ店』が存在します。
ちなみにアマビエ写真館は、アマビエさんに写真を”撮ってもらう”のではなく、アマビエさんの写真を”撮らせてもらう”写真館ですよ。その写真を家に飾っておいた人々から『風邪が5週間で治った!』とか『ジャンボ宝くじを連番で10枚買っただけで300円が当たった!』等の喜びの声が寄せられているそうです。アース星にお越しの際にはぜひお立ち寄りを。
実はここだけの話、写真館のご主人に、とある合言葉をこっそり伝えると、写真を撮ってもくれるそうなんです。その合言葉が何なのかは、この町内の七不思議の一つに数えられているので、知っている人がいるのかいないのか・・・・。
それから、ちなみになんですが、ジャペン国では硬貨を含む貨幣の改造は、”貨幣に描かれている、もしくは掘られている肖像及び額面が判別不可能にならない程度”で”趣味の範囲内”ならば法的に問題なし、なのです。
なので、タルト所長は違法行為はしていません。安心して下さい。
日本の皆さんはマネしないでくださいね☆
話がかなり脱線してしまいましたね。
さて、本題に戻りましょう。
なかなか本題に入らないのはこのお話の標準仕様です(;^ω^)
どうか引き続きお付き合いくださいませm(_ _)m