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第29章 ノックスの十戒10(3)

3人はRR探偵事務所にて合流しました。


「月馬さんの写真は合成ではないらしい」

「ンニャ?!」

「・・・写真は本物・・・」


「しかしニャ、あの宇津田L代は月馬さんを陥れてお金をだまし取ろうとしているのは確かニャ」

「なら、あの写真はどうやって・・」

「・・・・・・・」


「どうした、スフレ君」

「さっきから珍しくシリアスな顔してるニャ」

「・・・・『依頼人は嘘をつく』」


「ん?」

「依頼人が・・・嘘をついてるっていうのかニャ」

「うーーん。嘘というか・・・・もしかしたらこれは・・・・・ピコーン☆

 !!!!!わかりました!!所長!エ・クレアさん!!私、わかっちゃいました!!」


スフレさんがピコーン☆と閃いたようです。


「さあ、依頼人を呼んで下さい。スフレさんの華麗なるビューチホー謎解きを始めましょう」


~~~~~~~~~~~~~


「私の疑いは晴れたんでしょうか」


月馬さんは不安そうな顔をしています。


「まあ、どうぞお掛けください」


タルト所長も不安そうな顔をしています。


「アイナメジャーキーどうぞですニャ」


エ・クレア助手も不安そうな顔をしています。


「さて、皆様。お集まりいただき、誠にありがとうございます。早速ですが、今回の事件のキーワードは・・・ズバリ!『依頼人は嘘をつく』!!」

「僕は嘘は言ってません!!本当に本当に宇津田L代さんなんていう人は知らないし、弁護士と一緒にうちに来られるまで見たことも会ったこともないし・・・・」


「いいえ。そこではありません」

「・・・・は?」


「嘘はそこではありません。あなたが付いた嘘は・・・・さあ、地の文さん!今こそあなたの『重要証言ピンポイント再生能力』をここへ!」


りょ。

・・・では・・・


我等の前に立ち塞がりし、全ての愚かなる物忘れに、我の力もて、等しく滅びを与えんことを!

我が前に統べよ!メモリーーーーーリメンバーーーー!!!


はい、回想入りまーす。


~~~~~3時間前 RR探偵事務所~~~~~


「わかったニャ。・・・では、ズバリ聞きましょうニャ、月馬さん。あなた・・・・双子ですか???」

「いいえ。僕は双子ではありません」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



「はい、ココー!!!」

「今回はピンポイントだったニャ」

「双子ではないというのが嘘か・・・」

「待って下さい!本当に僕は双子ではない!!」


「ええ。厳密には、あなたは嘘はついていない」

「どういうことニャ?スフレ」


「月馬さんは嘘”は”ついていない」

「嘘”は”ついていない?」


「僕は”双子では”ありません」

「・・・・ニャ!」

「まさか!」


「そのまさかですよ、所長。・・ええ、月馬さん。確かにあなたは嘘はついていない。あなたは”双子では”ない・・・つまり!三つ子なのでs」

「いいえ。ちがいます。僕は三つ子ではありません」


「食い気味にきたな」

「食い気味にきましたニャ」


「もうだまされませんよ!これで終わりだ、依頼人!!あなたは四つ子以上d」

「いいえ。ちがいます。僕は四つ子以上ではありません。なぜなら僕は一人っ子だからです」


これまた中学2年英語教科書、Becauseの構文の和訳のような話し方をする依頼人、月馬樋さん。


「で、ではあなたによく似た親類縁者・・・」

「いません。・・・ていうか、ストーカーの冤罪を晴らしてほしい僕が、どうして双子やら三つ子やら四つ子やらの存在を隠そうとするんですか?馬鹿なんですか?」


「・・・・ぎゃふん」


スフレさん完敗です。


「・・・・スフレ君の事だから期待はしていなかったが」

「そこそこいい所ついてたけど、ちょっとベタだったニャ」


「・・・・ホントに一人っ子なんですかね。ねえ、地の文さん。あなたは絶対嘘言わないんだよね」


ええ。地の文ですから。

前にも申し上げましたが、探偵小説において”地の文に読者を欺くための故意の虚偽があってはならない”は絶対ですからね。これは『私と猫と迷探偵と』の一戒と言ってもいいでしょう。


「じゃあ、この依頼人、嘘ついてる?教えてよ」


・・・はあ。スフレさん、それを毎回やってたら、お話成り立たないでしょう?

全く、困ったちゃんですねぇ~


「スフレ君。我々は探偵であって漫才師ではないのだよ」


え?そうだったの?


「探偵は己の経験と推理力と勘・・・は十戒に反するからダメだけど、とにかく自分の足で調べ、考えて答えを導くのだよ。いいかい?スフレ君。エ・クレア君の調査で、宇津田女史と自宅警備員の偽弁護士は結託して月馬さんを騙していたのは明白。そして、その2人が主張しているストーカーの証拠はこの数枚の写真のみ。・・・となると、この写真になんらかのトリックが隠されているのは間違いないんだ」


リリーーン リリーーン リリーーン


「でも、合成じゃないんですよね」


リリーーン リリーーン リリーーン


「どんな絡繰りが隠されているのかニャ」


リリーーン リリーーン リリーーン


「あのー。どなたか、電話に出たほうが・・・」


見かねた依頼人が口をはさみます。


「・・・まったく、こんな時に・・・はい。RR探偵事務所です」

「あー。赤岩君?ワシワシ」


「鷲の友人はいません。鷹の同級生と鳶の従弟ならいますが」

「ちゃうわ。ワシ、アマビエ写真館のアマビエさん。さっきねー、写真の分析したでしょー?あれねー、さっきは聞かれんかったから言わんかったんやけど、やっぱり言っといた方がいいと思ってねー」


「え?何をですか?」

「おたずねの男の人の方には加工された形跡ゼロやったんやけどね、女の子の方、あれ、首から上、合成してるな。別人の顔を乗っけとるわ。いや、必要ない情報かもしれんけど、一応言っとこ思うて」


「・・・・・・・」

「ほんならな。今度はアマビエさんの写真撮りに来たってや~」


ガチャ


「・・・・・・・」

「所長?」


「・・・どういうことだ」

「どうしたんっすか、所長」

「鷲から電話がかかってきたのかニャ?」


「宇津田L代の顔の方が合成だったらしい」

「ほえっ?!」

「ふニャっ?!」


「・・・・月馬さん、これはいったいどういう・・・」


タルト所長が依頼人の方を振り返った時、月馬樋はキッチンにあったスピリタスの残りと『つまらないもの』の箱を抱えて探偵事務所を出ようとしていたところでした。


「あ!待ちなさい!!」

「そうはいかないニャ!!」


スフレさんとエ・クレア助手が、ドアを開けようとする依頼人にとびかかろうとしたその時・・・


ガチャ


ドアが外側から開けられました。


「おーい。探偵・・・・って、お前は月馬樋!!」


入ってきたのは黄島刑事。


「黄島先輩、月馬さんを知ってるんですか?」

「ああ。こいつは女子大生の河合伊子かわいいこさんにつきまとい行為を繰り返し、被害届が出されているストーカー野郎だ」


「河合伊子さん?」

「ああ。・・・ん?その、今探偵が持ってる写真に写ってる女、顔は全く違うが体形や服装はその女子大生に似てるぞ」




~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「なあ、探偵よ」

「・・・・はい」


「月馬は、写真に写っているのは自分ではないと言ったんだろう」

「・・・・はい」


「なら、写真が撮られた時間、どこで何をしていたのかは聞いたのか?」

「・・・・いいえ」


黄島刑事はRR探偵事務所のソファに座り、タルト所長は地べたに正座しています。


「しかし、月馬さんは一体何がしたかったのニャ」

「”宇津田さんへの”ストーカー行為が冤罪だと証明できればそれで良かったんじゃないっすかね」

「なんだそりゃ」

「・・・・・・」


タルト所長はまだうつむいたまま凹んでいます。


「でも、所長。双子はいなかったんだし、十戒の最後も無事守られたってことで大団円ですよ」

「ウニャ~。やっと終わったニャ~。十戒検証、結構大変だったニャ~」

「なんのことかよくわからんが、まあ、お疲れさん」

「・・・・・」






というわけで、『私と猫と迷探偵と』はノックスの十戒を忠実に守って書かれています。



RR探偵事務所の皆様、そして読者の皆様、大変お疲れさまでした。

さて、次回からは”ヴァン・ダインの二十則”が始まります☆


「「「絶対嫌だ(ニャン)!!!」」」←3人の声

※始まりません

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