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第24章 ノックスの十戒9(2)

スフレさんは清廉氏の後について、ロビーの受付に向かいます。


「あ、清廉さん。清廉さんって、おいくつなんですか?」


スフレさんは気軽に、前を歩く清廉氏に話しかけます。

会社の内情を知るには、やはり社員の皆さんとのコミュニケーションは大事です。

そういう点では、スフレさんの人見知りしない、気さくな性格はこのミッションに最適なのでしょう。


「コンプライアーーーーーーーンス!!!!!」

「?!?!?!」

「ぶふぉっっ!!」


清廉氏は突然大声を出して立ち止まり、首にかかった社員証の裏側をスフレさんの方に向けて差し出します。

社員証の裏は赤の無地です。


「・・・レ・・・レッドカード?」

「異性にみだりに年齢を聞くなどということはセクシャルハラスメント略してセクハラにあたります。クリーン商事は文字通りクリーンな会社!!特にハラスメントは社内規定でも厳しく取り締まっています!!!ハラスメント、ダメ!絶対!!!私は社内ハラスメント撲滅運動のリーダーも任されています」


さっきの清廉氏の豹変ぶりに、音声送信機を通じてRR探偵事務所で2人の会話を聞いていたタルト所長も、思わず口にしていたコーヒーを吹き出しました。(「ぶふぉっっ!!」はその時の音です。受信機を耳にしているスフレさんにしか聞こえていません)


「・・・そ・・そうなんですか・・」

「気を付けて下さいね。では、行きましょう」


再び、受付に向かって歩く二人。


「あー。そういえば、私、この自前のスーツで出勤してますけど、この会社、制服ないんですか?」


スフレさんがまた何気なく声を掛けます。


「コンプライアーーーーーーーンス!!!!!」

「?!?!?!」

「ぐぶごあっっ!!」


再びレッドカード。

タルト所長、今度は食べていたきな粉餅をのどに詰まらせました。


「無理矢理社員に制服を着させることは、ユニフォームハラスメント略してユニハラに当たります。以前、女子社員からスカートの制服に関する意見が出て、パンツスタイルの制服も選べるようにしたのですが、今度は男子社員が、『なら、男子社員にも選ばせろ』と言い出して、97%の男子社員がスカートの制服を着始めたので収拾がつかなくなって結局制服は廃止となったのです」

「・・・・は、はあ・・・・そうっすか・・・」


気を取り直して、ロビーの受付に着いた2人。


「ここがレセプションカウンターです。常時1人社員がいます」


受付には、20代くらいの女性社員がいます。

・・・が、なにやら困っているようです。


「どうしたんですか?」


スフレさんが声をかけると、その女子社員は、


「あ、このPCが動かなくなってしまって・・・」


どうやら、受付にある、来訪予定者等の管理をするPCの調子が悪いようです。


「ああ、これっすか。スリープモードになってますねー。ここをこうして解除するといけるっすよー。簡単簡単」


スフレさんは手を伸ばし、気軽に手助けします。


「コンプライアーーーーーーーンス!!!!!」

「?!?!?!」

「ゴン!!のぐヴぉっっ!!」


床にこぼれたコーヒーときな粉を拭いていたタルト所長が頭を机の角にぶつけたようです。


「テクノロジーハラスメント略してテクハラ。パソコンやスマホ等のハイテク技術に詳しい人が、そうでない人にわざと専門用語を使って難しく教えたり、『こんなこともできないの?』的なプレッシャーを与えたりする行為です」

「いやいや、専門用語使ってないっす」


「『スリープモード』」

「いやいやいや」

「いやいやいや」


タルト所長も思わずツッコみます。


「それに、プレッシャーも与えてないです」


スフレさん食い下がります。


「『簡単簡単』」

「いやいやいや」

「いやいやいや」


受付の女子社員は何も言わずにこにこしています。


「気を付けて下さいね。では、次行きましょう」


こういうと、清廉氏はエレベーターの方に向かいます。

スフレさんも不承不承、彼の後に続きます。


エレベーターは清廉氏が下りた時のまま1階で停まっていたので、2人はそれに乗り込みます。

2人がエレベーターに乗り込む際に接近したその時・・・・


「コンプライアーーーーーーーンス!!!!!」

「?!?!?!」

「むへぁぁ!!ポチッ」


驚いたタルト所長がうっかり低周波治療器のスイッチをオンにしてしまいました。


「○!※□◇#△!」


スフレさんが悶絶しています。


「スメルハラスメント。略してスメハラ!」

「え?いえ。香水はつけていないですし、『洋服のふゆ山 遭難店』で買ったばかりなので柔軟剤も使ってないですし・・てか、そもそもスーツなので柔軟剤は使わないっていうか・・・」


「獣臭がします」

「けもの臭?!」



・・・と、その時、会社の入口の方から60過ぎくらいの男性が小走りに走ってきました。

エレベーターに乗りたいようです。

スフレさんはエレベーターの中で『開』のボタンを押し、男性の到着を待ちます。


「すみませーーん。乗りまーす」


男性は急いでエレベーターの方に向かって走ってきます。


「大丈夫ですよー。ごゆっくりどうぞー」


スフレさんが男性にそう声をかけた時・・・


「コンプライアーーーーーーーンス!!!!!」

「?!?!?!」

「ゆべしっっ!!」


タルト所長、『あ』だと著作権的にまずいと思ったのか、『ゆ』に変えました。

とっさの発言でしたが、ナイス判断です。特にゆべし(柚子ないしクルミを用いた加工食品あるいは和菓子の一種)を食べていたわけではありません。


「エイジハラスメント略してエイハラ、今回はその中のシルバーハラスメント略してシルハラにあたります。言わずと知れた、シルバー世代への差別や嫌がらせです」

「どこがよ?!今のどこがよ?!」


「『もう歳なんだから無理しないでくださいよ~(笑)ゆっくりで大丈夫ですよ~ププ』みたいな発言したでしょ。そういった、高齢者を揶揄したり見下したりするような言動もアウトです」

「・・・・・・」


さすがのスフレさんも戦意喪失しています。

駆け込み乗エレベーターの男性は何も言わずにエレベーター内に入って来ました。

スフレさんは『閉』のボタンを押し・・・・男性に『何階ですか?』と聞こうとして、ふと考えます。

これは果たして何らかのハラスメントになるのだろうかと・・・・


「何階ですか?」


清廉氏が男性に問いかけます。


「5階をお願いします」


男性が答えます。

普通でした。

清廉氏は、


「青山さん、5階と6階で」


と言いながら、


『は?なんで何も聞かないの?ふつう聞くだろ?自分がボタンのところに立ってるんだから。社会人のマナーだろ?気が利かない奴だな』な顔でスフレさんをチラッと見ました。


「むぐぐぐぐぅぅぅ」



頑張れスフレさん!

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